(1)骨盤骨折・安定型

骨盤の構造

骨盤は左右の恥骨、坐骨、腸骨と仙骨で構成され、後方は仙腸関節、前方は恥骨結合で融合して骨盤輪を形成しており、体幹の姿勢を支え、身体の要となっています。
骨盤骨折でも、内臓器損傷がなく、転位が小さい単独骨折では、手術によらず、保存的に安静臥位で経過観察しています。そのような、比較的軽症例である安定型から、解説を始めていきます。

(1)腸骨翼骨折(ちょうこつよくこっせつ)

腸骨翼骨折

1)病態

腸骨翼①は、腰の両横にあって、ベルトがかかる部位です。
腸骨翼は、前方、後方、側方からの衝撃で骨折しており、出血を伴わないものは、軽症例です。

2)症状

骨折部の強い痛み、歩行すると痛みが増強します

3)治療

ドーヴァネイ骨折とも呼ばれていますが、入院下で、安静が指示されますが、1週間もすれば、歩行器使用によるリハビリが開始され、1~2カ月で後遺障害を残すこともなく、軽快しています。

4)後遺障害のポイント

後段の(3)で、まとめて解説しています。

(2)恥骨・坐骨々折(ちこつ・ざこつこっせつ)

1)病態

恥・坐骨②③は、前方と下方からの外力で骨折しており、骨盤骨折では、高頻度で発生しています。
交通事故では、自転車やバイクを運転中、出合い頭衝突で前方向から衝撃を受け、ドスンとお尻から落下して骨折しています。この事故発生状況では、腰椎の圧迫骨折を合併することもあります。

2)症状

横になっても座っても、鼠径部に強い痛みが生じます。
坐骨骨折では、半腱・半膜様筋・大腿二頭筋により、骨折部は下方へ転位し、股関節の伸展運動ができなくなります。

3)治療

片側の恥骨や坐骨の単独骨折は、ほとんどは、安定型骨折であり、入院は必要ですが、手術に至ることはありません。安静下で、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDが投与されます。
多くは、1週間の経過で歩行器を使用して短い距離を歩くリハビリが開始され、1~2カ月の経過で、後遺障害を残すことなく、症状は軽快しています。

4)後遺障害のポイント

後段の(3)で、まとめて解説しています。

(3)尾骨骨折(びこつこっせつ)

尾骨骨折

1)病態

仙骨の下についている骨で、しっぽの名残であり、尾てい骨ともいわれています。
交通事故では、自転車、バイクでお尻から転倒したときに骨折することが多いのですが、尾骨は、退化した3~5つの尾椎が一塊となって存在しており、つなぎ目があることと、事故前から屈曲変形していることもあり、XPでは骨折と判断することが困難なことがあります。
確定診断には、CT、MRI撮影が必要です。

2)症状

尾てい骨部分に激烈な痛みがあり、歩くことや座ることで痛みが増強する。
長時間、座っていると尾てい骨の痛みが強くなってくる。
尾てい骨に痛みがあり、下肢にしびれがあり、歩きにくさを生じている。

3)治療

治療は、通常は保存的に安静加療が行われています。

4)後遺障害のポイント

①腸骨翼骨折に限っては、単独骨折であっても骨盤腔内に3000mlを超える大出血をきたすことがあり、その際は、出血性ショックに対応して全身管理を行う重症例となります。
仙腸関節

仙骨と腸骨が接合する仙腸関節は、強固な靭帯で補強されており、この部分に靭帯損傷や離解が生じると、周囲に存在する静脈叢の損傷を合併して大量出血につながるのです。

②腸骨翼骨折で、出血を伴わないもの、恥骨・坐骨骨折の単独骨折は、保存的治療で軽快します。
3週程度の安静で歩行ができるようになり、後遺障害を残すことなく完治しています。

③男性の尾骨骨折は、後遺障害を残すことなく完治します。
ただし、尾骨に痛みの神経症状を残すときは、3DCTで変形が立証できれば、その程度に応じて、14級9号、12級13号が認定されています。

ところが、女性で、尾骨骨折により、尾骨が屈曲変形をきたしたときは、正常産道を確保できません。
分娩は、帝王切開に限定されることになり、婦人科医の診断書で、このことを立証すれば、11級10号が認定されています。このときは、6カ月を経過した時点で、症状固定として後遺障害を申請します。
当然、出産が可能な年数について、逸失利益が認められます。

④骨折部に痛みの神経症状を残しているときは、骨折部の3DCT撮影で、骨癒合状況を検証し、変形癒合が確認できるときは、その度合いに応じて、14級9号、12級13号が認定されています。

⑤自賠責保険は、骨盤骨を体幹骨として分類し、骨盤骨折に伴う後遺障害は、体幹骨の系列で審査しています。この判断に間違いはありませんが、NPOジコイチでは、骨盤骨折の下肢に対する影響力を考慮して、下肢の後遺障害として取り上げ、解説しています。