(20)頚肩腕症候群 肩凝り・ムチウチ

1)病態

昭和30年代、タイピストや電話交換手の職業で、若い女性に、肩から上腕・肘・前腕・手指の痛みや痺れ、肩凝り、目の疲れ、背部のだるさを訴えるケースが多発し、社会問題となりました。
上肢を同じ位置に保持し、反復使用する作業により、神経・筋肉に疲労を生じた結果、発症する機能的・器質的障害と判断した労災保険は、これを職業病として認定したのです。
そのときに、傷病名を頚肩腕症候群と名付けたのです。

被害者の診断書に、(外傷性)頚肩腕症候群と記載されたものを、ときおり見かけますが、交通事故外傷は、長時間の同一姿勢や反復作業を原因として発症したものではありませんので、厳密な意味では、交通事故で頚肩腕症候群を発症することは、あり得ません。

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2)症状

しかし、頚部捻挫で、頚部、肩、上肢~手指に痺れなどの神経症状を訴える被害者に対して、自覚症状の経過から、頚肩腕症候群と診断する医師もいるのです。
昭和30年代から脱却できていないお爺ちゃん医師なら、転院すべきですが、考えてみれば、症状を具体的に示している傷病名で、分かりやすいのです。
それほど、気にすることでもありません。

もう1つ、最近では、肩凝りが、頚肩腕症候群と呼ばれています。
医師ですから、肩凝りなどではなく、頚肩腕症候群と権威を高める診断としているのです。
ついでですから、肩凝りも学習しておきます。

肩凝りでは、頚部、項部、頚部のつけ根から、肩、背中にかけて張り、凝り、痛みを発症し、ひどいときには、頭痛や吐き気、眼のかすみ、めまいを伴うこともあります。

肩凝りに関与する筋肉
肩凝りに関与する筋肉

肩凝りは、筋肉の過労で生まれる炎症ですが、一般的には僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋の硬化が指摘されていますが、慢性化すると、頚部から肩にかけてのほとんどの筋肉が硬化しています。

首や背中が緊張するような姿勢での作業、猫背や前かがみ、運動不足、精神的なストレス、なで肩、連続して長時間同じ姿勢をとること、ショルダーバック、夏場では、冷やし過ぎなどが原因となります。

肩凝りに対しては、同じ姿勢を長く続けない、蒸しタオルなどで肩を温めて筋肉の血行を良くする、適度な運動を続ける、入浴で身体を温め、リラックスするなどの予防が必要です。

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ストレス
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治療では、筋肉の血流改善や筋肉のコリをやわらげ筋力強化をする運動療法、蒸しタオルで肩を温める、入浴などの温熱療法が併用され、薬物療法として、筋弛緩剤、パップ剤、局所注射などで鎮痛消炎効果を高めています。

3)後遺障害のポイント

①診断書に、頚肩腕症候群と記載されていても、主治医の認識は頚部捻挫です。
不安なら、「えっ、肩凝りですか?」 驚いた様子で質問すれば、分かります。
もし、「その通り、肩凝りですね!」 そんな回答がなされたら、直ちに転院してください。

②リハビリ設備が充実、患者数の多い整形外科であれば、安心して通院を続けてください。
a 1カ月に、10回以上のリハビリ通院を継続すること、
真面目な通院は、症状の存在を裏付けることになります。

b できるだけ早期、2カ月以内にMRI検査を受けること、
頚部捻挫では、末梢神経障害が後遺障害の対象です。
XP、CTは、骨折をチェックする検査であり、末梢神経は、MRIでないと確認できません。

c 誰に勧められても、整骨院、接骨院には、絶対に通院しないこと、
交通事故の治療は、医師免許を有し、診断権が認められている医師に委ねられています。
整骨院、接骨院は医師ではなく、当然、診断権が認められていません。
つまり、傷病名を診断することも、診断書を発行することも禁じられているのです。
治療ではなく、施術としての認識で、施術は医療類似行為で、治療実績として評価されません。
整骨院、接骨院で施術を続けた被害者には、ほとんどで後遺障害が否定されています。

上記の3つの条件を守り、受傷から6カ月で症状固定を決断、後遺障害診断を受けるのです。
そして、後遺障害の申請は、これも絶対に、被害者請求としてください。
であれば、ほとんどで14級9号の後遺障害が認定されます。

③弁護士費用特約に加入しているときは、事故後の早々に弁護士委任とします。
弁護士は、法定代理人ですから、損保は、あなたに直接、連絡することができなくなります。
あなたは、損保から嫌味を言われることなく、治療に専念することができます。

④専業主婦に14級9号が認定されると、保険屋さんの提示額は、せいぜい80万円前後ですが、弁護士が地裁基準で請求する損害賠償額は300万円を突破します。
弁護士費用特約の適用では、弁護士費用の負担は0円、翌年の保険料も上がりません。

未加入でも、平均的な弁護士費用は、20万円+10%ですから50万円程度です。
多くの弁護士は、着手金無料で対応していますから、解決時の精算となり、委任したときの費用負担は発生しません。
後遺障害が認定されたなら、その後の解決は弁護士に委任することが、勝利の方程式です。