(8)音響性外傷(おんきょうせいげいしょう)

音響性外傷

(1)病態

これは、僅かな経験則ですが、交通事故でも発症しています。
高速道路上で発生した20台以上のトラックや乗用車が巻き込まれた多重追突事故で、タンクローリー車が横転、爆発したときの、乗用車の運転者で経験しています。
このときは、耳鳴りが主症状で、12級相当が認定されています。

(2)症状

ロックコンサートなどの大音響や、爆発、銃声などを聞いた後で、聴こえが悪くなることがあります。
短期間の強大音に晒されたことで、聴力が落ちるもので、音響外傷といわれています。
音響性外傷では、音源に近い方の耳だけに、難聴、耳鳴りが起こります。

軽いときは、1、2日で元に戻ることもありますが、そのまま難聴や耳鳴りを残すことがあります。

(3)治療

難聴は、早期に治療を開始するほど効果が得られ、時間が経過するほど、治りにくくなります。
なるべく早期に耳鼻咽喉科を受診することです。
急性音響性外傷では、早期のステロイド治療が有効です。

ロック歌手の氷室京介さん、53歳は、両耳難聴により引退宣言をしていますが、25年の長きにわたり、大音量の中で歌ってきた積み重ねで、騒音性難聴を発症したと、私は、想像しています。

(4)後遺障害のポイント

当然ながら、後遺障害として評価されるのは、交通事故に限られます。
多重衝突事故で、爆音などに晒され、耳が聞こえにくいと感じたときは、直ちに、耳鼻咽喉科を受診することです。多くは、早期のステロイド療法により、改善が得られています。

損保に確認すると、因果関係を疑い、治療費の負担を拒否する傾向です。
拒否されたことを理由に、受診を遅らせると、難聴などは進行し、改善が得られなくなります。
さらに、受診をしていなければ、因果関係が否定され、後遺障害も非該当とされます。

損保が治療費の負担を拒否しても、症状があれば、健康保険で耳鼻咽喉科を受診することです。
であれば、治療効果も得られ、万が一、後遺障害を残したとしても、因果関係で非該当はありません。

どうしてか、損保が治療費を負担してくれないので通院できなかった?
このような後ろ向きの被害者が、交通事故無料相談会でも目立ちます。
症状があれば、受診、通院すべきであって、損保の回答で萎むなど、本末転倒です。