(2)鎖骨骨折(さこつこっせつ)

鎖骨骨折は、ムチウチに次いで多発している傷病名です。

(1)病態

自転車・バイク対自動車の交通事故で、被害者が転倒、手・肘・肩などを打撲したときに、その衝撃が鎖骨に伝わって、鎖骨骨折を発症しています。
追突、出合い頭衝突、正面衝突では、シートベルトの圧迫で鎖骨が骨折することもあります。

鎖骨の構造
鎖骨の構造、鎖骨が肩鎖関節につながる手前あたりを「遠位端」と呼びます。

鎖骨の横断面は、中央部から外側に向かって三角形の骨が、薄っぺらく扁平して行きます。
三角形から扁平に骨が移行する部分が鎖骨のウィークポイントであり、鎖骨骨折の80%が、その部位で発生しています。この部位は、より肩関節に近いところから、遠位端骨折と呼ばれています。
その次の好発部位は、肩鎖関節部です。
肩鎖靱帯が断裂することにより、肩鎖関節は脱臼し、鎖骨は上方に飛び上がります。

(2)症状

骨折した被害者でないと分からない、激烈な疼痛がしばらく続きます。

(3)治療

治療は、ほとんどが固定術によらず、胸を張り、肩をできる限り後上方に引くようにして、クラビクルバンドを装着、固定します。

クラビクルバンド
クラビクルバンド

一般的には、成人で4~6週間の固定で、骨折部の骨癒合が得られます。

(4)後遺障害のポイント

1)鎖骨は体幹骨であり、保存的治療では、体幹骨の変形で、12級5号の認定が予想されます。
裸体で変形が確認できることが、認定の要件です。

鎖骨の変形で、骨折部に運動痛を伴っているか、ここが重要なポイントになります。
体幹骨の変形による12級5号は、骨折部の疼痛も周辺症状として含まれることになり、疼痛の神経症状で12級13号が認定され、併合11級となることはないのです。

なんの痛みもなければ、変形で12級5号が認定されても、逸失利益のカウントはありません。
しかし、運動痛が認められていれば、10~15年程度の逸失利益が期待できます。
変形に伴う痛みは、鎖骨骨折部のCT、3D撮影で骨癒合状況を明らかにして、立証しています。
骨癒合が完璧なときは、痛みを訴えても、取り上げられません。この辺りが、奥の深いところです。

2)鎖骨の遠位端骨折部の変形により、肩関節の可動域に影響を与えることも予想されます。
こうなると、鎖骨の変形以外に、肩関節の機能障害が後遺障害の対象となります。
となれば、骨折部位の変形をCT、3Dで立証しなければなりません。
左右差で、4分の3以下であれば、12級6号が認定され、先の変形による12級5号と併合され、併合11級が認定されるのです。

等級 主要運動 参考運動
屈曲 外転 内転 合計 伸展 外旋 内旋
正常値 180 180 0 360 50 60 80
8級6号 20 20 0 40
10級10号 90 90 0 180 25 30 40
12級6号 135 135 0 270 40 45 60

主要運動が複数ある肩関節の機能障害については、屈曲と、外転+内転のいずれか一方の主要運動の可動域が、健側の2分の1以下に制限されているときは、肩関節の機能に著しい障害を残すものとして10級10号、同じく、4分の3以下に制限されているときは、肩関節の機能に障害を残すものとして12級6号が認定されています。
屈曲と、外転+内転が、切り離して認定されていることに注目してください。

3)一般的な鎖骨骨折であれば、肩関節の機能障害では12級6号が限界です。
粉砕骨折でなければ10級10号にはなりません。
ダラダラ治療を続け、7、8、9、10カ月で症状固定なら、4分の3+5°で非該当になります。
変形で12級5号、機能障害で12級6号、併合で11級を目指すのであれば、事故日から180日を経過した時点で、脇目も振らずに症状固定として後遺障害を申請しなければなりません。
症状固定は6カ月、ここが、本件後遺障害の最大のポイントです。