(5)軸椎関節突起部骨折(じくついかんせつとっきぶこっせつ)

骨折分類

(1)病態

頚椎損傷の中で頻発する骨折型であり、C2、軸椎両側の椎弓根部が骨折するものです。
軸椎は前方へ亜脱臼するため、脊髄損傷を合併することは、ほとんどありません。
交通事故では、シートベルト着用が法制化される前は、自動車事故でハンドルやダッシュボードで顎や前額部を強打し、頚椎が過伸展を強制されたときに発症していました。
現在では、自動車同士の正面衝突、自動車対自転車・バイク・歩行者の事故では、跳ね飛ばされ、頭部から転落したときなどに発生しています。

軸椎関節突起間骨折は、絞首刑が執行された受刑者の頚椎に認められることから、ハングマン骨折と呼ばれてもいます。首にかけられたロープにより、頭頚部が過伸展、伸長されることで、軸椎関節突起間部に骨折が生じるのです。

(2)症状

項頚部の激痛、頚部の可動域制限、

(3)治療

②③④では、骨折にC2/3の椎間板損傷、前・後縦靭帯、棘間靭帯の損傷などを伴うため、不安定性があること、そして骨癒合が不良であることから、手術による内固定が選択されています。
最新の治療では、前方固定よりも、後方固定が主流であると報告されています。

(4)後遺障害のポイント

1)現在、脊椎インスツルメントを使用した内固定術が主流となっており、使用されるインプラントは、チタンもしくはチタン合金で、体内で悪影響を及ぼす可能性もほとんどありません。
つまり、飛行機に搭乗する際の金属探知もスルーでき、MRI検査も受けることができます。
これらを理由として、余程のことが起こらない限り、インプラントの抜釘は行われていません。

Giroj調査事務所の規定集には、脊椎の変形を残すものとは、
①脊椎圧迫骨折などを残しており、そのことがXP・CT・MRIにより確認できるもの、
②脊椎固定術が行われたもの、
③3椎以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの、
上記の3つが規定されており、脊椎インスツルメントが②に該当するのかについては触れていません。
しかし、経験則では、脊椎インスツルメントによる内固定は、11級7号が認定されています。

※脊椎インスツルメン卜手術
Pedicle screw system、Harringtonhook&rod.、Luque881、金田デバイスなどがあります。

2)C1・3もしくはC1・2・3の後方固定術が行われたときは、頚椎の可動域は大幅に制限されることになり、8級2号が認定されます。

3)すべての被害者が脊椎インスツルメントで内固定されているのではなく、多くは保存療法が継続され、中には、不安定性を残しているものもあります。受傷機転、治療経過、残存する問題点を確認した上で、最適な後遺障害等級の獲得を目指していきます。