

(1)病態
大きな外返し捻挫に伴う外力と、踵骨前方突起に付着している二分靱帯の張力が作用して前方突起部が裂離骨折するのです。同じ作用が舟状骨や立方骨に働いたときは、これらの骨が骨折します。
歩行中、自転車、バイクVS自動車の衝突で、足の外返し捻挫したときに発症しています。
踵骨前方突起骨折は、立方骨圧迫骨折に次いで、足関節捻挫として見逃されることが多いのです。
他に、距骨外側突起骨折、立方骨圧迫骨折も、足関節捻挫と看過されることの多い骨折です。
側面XPでは、距骨と重なるところから、見落とされる可能性が高いのです。
踵骨前方突起骨折は、前方突起縁の二分靭帯付着部の裂離骨折ですが、近位の二分靭帯損傷と誤診されることも多いのです。
外側靭帯や二分靭帯の断裂と診断されても、3週間以上疼痛と腫脹が続くようなら、専門医を受診、XP、CTで圧痛部位を中心として、踵骨前方突起、立方骨関節面、距骨外側突起先端を詳細に検証しなければなりません。
(2)症状
足の甲、外側が大きく腫れ、直後は、激痛で歩行することもできません。
受傷直後、足関節捻挫と診断され、その後の経過で腫れもひき、痛みも軽くはなったが、体重を掛ける、足を捻ると、疼痛を発症するときは、この骨折が疑われます。
踵骨前方突起は内返しで剥離骨折、外返しで距骨と衝突して圧迫骨折を起こす、側面X線写真で距骨と重なり見落とされ、難治性の捻挫として長期に加療されることが見られます。
(3)治療
初期であれば、3週間程度のギブス固定により、後遺障害を残すことなく完治するものです。
陳旧例では、外側縦アーチを保持する、幅広の硬性アーチサポートを装用します。
硬性アーチサポートとは、靴の中敷きのことです。
それでも、疼痛が改善しないときは、偽関節では骨接合術や骨片切除などの手術適応となります。
(4)後遺障害のポイント
1)踵骨前方突起骨折は、大きな捻挫として見過ごされ、放置され陳旧化することがほとんどなのです。
見逃されたまま陳旧化すると、疼痛や、それを原因とする機能障害を残しています。
2)専門医であれば、陳旧例に対して、ステロイド剤や局所麻酔剤などの注射による保存療法を選択し、それでも疼痛が改善しないときは、裂離した骨片の摘出術が行われています。
3)受傷から6カ月を超えていれば、症状固定とし、疼痛と機能障害で後遺障害の獲得を目指します。
専門医の治療は、本件の損害賠償が決着してから、健保適用で行います。
右足関節と診断され6カ月も治療を続けたのであれば、「専門医の診察で、踵骨前方突起骨折が判明したので、転院して手術を受けます。」 と言っても、損保は、それを認めて治療費や休業損害を支払うお人好しではありません。例外なく、治療費を含め、一切の支払いを停止します。
したがって、被害者の選択は、症状固定、後遺障害の申請しか残されていないのです。
4)最近の経験則では、放置された踵骨前方突起骨折で、12級7号を獲得しています。
36歳男性会社員で、前年度の年収は、578万7200円です。
連携弁護士は、後遺障害慰謝料で290万円、
逸失利益は、578万7200円×0.14×14.0939=1141万9000円
傷害部分との合計で、1555万9000円の損害賠償額を実現しました。
そんなことが、専門家として許せますか?
5)12級7号は例外的で、一般的には、痛みの神経症状で14級9号、12級13号の選択です。