(43)足関節果部脱臼骨折、コットン骨折

足関節果部脱臼骨折

(1)病態

42で果部骨折を解説しましたが、コットン骨折は、内果と外果の両果骨折に、脛骨の後部、後果骨折を合併したものを三果骨折、コットン骨折といいます。
コットン骨折では、距骨が前方もしくは後方に脱臼するので、足関節脱臼骨折の重症例です。

交通事故では、軽貨物車を運転中、2トンとラックとの衝突で、自車がスピンし、電柱に激突した、バイクを運転中に、軽トラックの追突を受け、堤防から転落した、そして、意外に多かったのは、トラックからの荷物の積みおらし作業で、荷物を足下に落とした例です。

(2)症状

激烈な痛み、腫れ、骨折部の内反もしくは外反変形、皮下出血などで立ち上がることができません。

(3)診断と治療

診断は、足関節の腫れ、圧痛、変形、皮下出血をチェック、骨折は、XPで確定します。
後果の骨折は、XPでは発見されないこともり、CT、特に3DCTやMRI撮影が有用です。

従来は、麻酔科で徒手整復後、ギプスをタイトに巻いて8~10週間の固定が実施されていましたが、現在は、スクリュー(海綿骨ねじ)で内・外果骨折部と脛腓間を固定、後果部もスクリューで内固定し、術後は6~8週のギプス固定、4週よりはPTB歩行ギプスになります。
整復不能例では、スクリュー、鋼線による引き寄せ締結法、プレート固定が行われています。

三果骨折、コットン骨折後の足関節の可動域の予後は不良です。
後果部の骨折が3分の1以上のものは、この治療を行っても、予後は不良とされています。
難治性疼痛症候群、CRPSカウザルギーを惹起しやすい部位でもあります。

(4)後遺障害のポイント

1)20年前であれば、コットン骨折は、10級11号で決まりでした。
近年は、医療技術が進化し、後果の3分の1以下の骨折では、専門医が3果骨折を認め、適切な内固定術を行ったときは、12級7号も困難になるほど改善が得られています。

2)NPOジコイチの経験則では、
①内・外果骨折は内固定されたのに、後果部の骨折を見逃していたもの、
②3果骨折と診断しているのに、後果骨折の内固定を実施しなかったもの、この2つが目立ちます。

3果骨折で、術後60日を経過しても疼痛が引かないとして無料相談会に参加されたのですが、その後、専門医を紹介して、同行受診したところ、内・外果は接合術が行われたのですが、後果部の骨折は、3分の1以下の小さいものでしたが、内固定がなされておらず、時間の経過で、距骨は後方に脱臼していました。75日目に後果の内固定と距骨の整復を行ったのですが、疼痛の改善はなく、結局、右足関節の固定術がなされました。下肢の1関節の用廃で8級7号が認定されました。

もう1例は、3果骨折に対して適切な内固定がなされていたのですが、脛骨と踵骨を締め付ける三角靱帯の断裂が放置されていたことで、4カ月後、歩行中に足関節を捻挫し、外果骨折と距骨の側方脱臼となり、元通りの整復が困難と診断され、足関節の固定術が行われたものです。

もっとも、空手の有段者で、術後、1年7カ月のリハビリ治療を続け、2分の1+10°で、泣くに泣けない12級7号で示談解決した被害者もおられます

3)術後は、足関節部に荷重が掛からないようにPTB装具を装用して骨癒合を待ちます。

足関節部の免荷を目的としたPTB装具
足関節部の免荷を目的としたPTB装具

ギプス固定期間は、通院実日数としてカウントされますが、PTB装具もギプス固定に該当します。
治療先の診断書には、下から2行目にギプス固定期間を記載する欄があります。
退院後、PTB装具で過ごしている期間は、ギプス固定期間となり、通院実日数にカウントされます。
損保からは、診断書のコピーを求め、正しく記載されているかをチェックしなければなりません。

4)コットン骨折では、
①完璧な整復、②強固な固定、③早期からの理学療法の開始
これらの3つが、絶対に必要で、おざなりにされると、
①腓骨短縮、②内果変形治癒、③距骨脱臼遺残、④靭帯機能不全、などの後遺障害を残します。
それぞれは、3DCT、MRI検査で立証して後遺障害等級につなげていきます。