(46)足関節不安定症(そくかんせつふあんていしょう)

足関節不安定症

(1)病態

いわゆる捻挫癖で、なんども捻挫を繰り返し、痛みが持続する障害を足関節不安定症といいます。
内返し捻挫で損傷した、外踝下にある外側靭帯、前距腓靭帯と踵腓靭帯が、十分修復されていないことを原因として、足関節不安定症が出現するのですが、さらに放置しておくと、足関節の軟骨も損傷し、変形性足関節症に増悪、日常歩行に、深刻なダメージを与えます。

(2)症状

足関節の鈍痛、歩行や階段の昇降で、足首がぐらつく、頻繁に足首を捻挫する、

(3)治療

足首を強固に締結する主要な靱帯は、前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯、脛腓靱帯の4つです。

グレード 靱帯の損傷 症状
1 前距腓靱帯の伸び
踵腓靱帯の伸び
靭帯が引き延ばされたか、僅かに損傷した状態で、腫れや痛みが、それほど強くないもの、
2 前距腓靱帯の部分断裂
踵腓靱帯の伸び
靭帯に中程度の損傷があり、痛みのために体重をかけて歩くことは困難な状態、
3 前距腓靱帯の完全断裂
踵腓靱帯の完全断裂
後距腓靱帯の部分断裂
靭帯が完全に断裂、足関節に緩みを生じる。
強い腫れと痛みで1~2日後には、かかとの周辺が内出血で変色する。

治療は、保存的に、装具による足首の筋力強化リハビリが中心です。
改善しないとき、アスリートでは、靭帯の縫縮術や靭帯再建術が行われています。
また幼少期の捻挫では、靭帯の断裂ではなく、靱帯の付着部が剥離骨折するのが一般的です。
これが、稀には、骨の欠片として残り、スポーツ年齢になって痛みや捻挫ぐせを起こすこともあります。
治療は、上に同じです。

(4)後遺障害のポイント

1)足関節不安定症は、内返し捻挫、足根骨の脱臼・骨折に伴う、外傷性の二次性疾患です。
本来の捻挫とは、靭帯、半月板、関節包、腱などの軟部組織の部分的な損傷をいいます。
現在でも、XPで骨折や脱臼が認められなければ、単なる捻挫の扱いで、治療が軽視されています。

確かに、数週間の安静、固定で治癒するものが多数ではあるのですが、不十分な固定、その後の不適切なリハビリにより、部分的な損傷が完全な断裂に発展することや、本当は、完全に断裂していて、手術以外の治療では、改善が得られない見落としも、少なからず発生しています。
いずれも、初期に適切な治療が実施されなかったことを理由として、不安定性を残し、捻挫を繰り返すことになり、軟骨をも損傷し、やがては、疼痛と歩行障害の変形性足関節症に行き着くのです。

2)足首がジクジク痛む、歩行時、階段の上がり下がりで足首がぐらつくなどの症状があるときは、受傷から2カ月以内に、専門医を受診しなければなりません。

「時計屋はちゃんと修理してお金を取るが、医師は修理できなくてもお金を取る?」
マーフィの法則ですが、交通事故では、大きな衝撃が働き、不可逆的な損傷をきたすこともあります。
となれば、修理できないのは不可抗力であって、時計屋さんと同一視はできないことになります。
医師の治療に文句をたれる暇があったら、良い医師を積極的に探せばいいだけのことです。