(1)病態
腓骨の単独骨折は、近位端骨折、骨幹部と遠位端骨折の3種類があります。
赤○印、上から近位端、骨幹部、遠位端
腓骨は、脛骨と対になって下腿を形成している骨で、長管骨に属し、脛骨の外側に位置しています。
右膝外側を手で触れると、ボコッと飛び出している部分がありますが、それが腓骨の近位端部です。
膨らんでいる近位端は、腓骨頭と呼ばれています。
腓骨頭の先端にはとがった腓骨頭尖があり、脛骨に接する部分に腓骨頭関節面を有しています。
交通事故では、バイク、自転車と自動車の出合い頭衝突などで、膝の外側部に直撃を受けたときに、腓骨近位端骨折もしくは腓骨頭骨折を発症しています。
腓骨頭部には、坐骨神経から分岐した腓骨神経が走行しており、腓骨神経麻痺を合併することがあり、そうなると、大変厄介です。腓骨神経麻痺の詳細は、後段で解説しています。
中央部の骨折は、骨幹部骨折と呼ばれています。


腓骨々幹部骨折のXP画像、転位が大きく、AOプレートで内固定されています。
しばしば、脛骨々折を合併することが多く、骨短縮、仮関節、コンパートメント症候群の後遺障害を残すことがあります。この詳細も、後段で解説しています。
遠位端部の骨折は、外くるぶし部分で発生する頻度が高く、足関節外果骨折と呼ばれています。
この詳細も、小学生の成長期と大人で分けて、後段で説明しています。
(2)症状
いずれの部位の腓骨骨折であっても、痛みと腫れ、皮下出血が拡がります。
(3)治療
腓骨の単独骨折では、転位が少なく、ギプス固定されたものは、およそ7週間で骨癒合が得られます。
固定術が実施されたときは、骨折のレベルによりますが、概ね、12週で骨癒合は完成します。
(4)後遺障害のポイント


1)これまで、脛骨は体重を支える骨であり、重視してきましたが、腓骨は、なくてもいい骨と理解しており、多くの整形外科医は、無視する傾向でした。
しかし、腓骨には、歩行時の衝撃の吸収と、足首を自在に動かす、巧緻運動の役目があります。
これらの役割が、腓骨の骨折で、どのように阻害されているか?
従来よりも、拡大した観点で、後遺障害を探る必要があると考えています。
2)骨折部の骨癒合の状況は、3DCTで立証します。
足首の可動域は、背屈と底屈にとどまらず、内転、外転、内返し、外返し、回内、回外にまで範囲を拡げて、機能障害を検証する必要があります。
サッカーの絶妙なシュートやパス、あるいはドリブルなどは、下腿骨が2本あることにより、足首が自在に動くことではじめて可能になるのですが、これが障害されたとなれば、立派な後遺障害です。
3)腓骨の単独骨折ではありませんが、脛・腓骨骨幹部骨折では、脛骨の骨癒合を優先させる必要から、腓骨の治療を放置することがあります。
放置されたまま、偽関節となったときは、12級8号が認定されます。
等級 | 下肢の偽関節 | 自賠責 | 喪失率 |
12 | 8:腓骨に偽関節を残すもの | 224 | 14 |