(3)脳震盪(のうしんとう)

1)病態

震盪とは、激しく揺れ動かすという意味で、脳震盪は回転加速度による衝撃により揺さぶられると生じると考えられており、画像で損傷部位が特定できないびまん性の脳損傷と定義されており、脳損傷では、軽度の病態とされています。

脳震盪

交通事故では、歩行者や自転車と自動車の衝突の衝撃で、被害者が気絶したが、ほどなく、むっくり起き上がり、周りが安堵しているイメージです。

軽度な脳損傷であっても、脳震盪を繰り返すと、将来、パンチドランカーのようなダメージが出てくることが明らかとなっており、受傷直後は、深刻に対応すべき傷病名です。

フルフェイスのヘルメットでバイクを運転中、交差点で自動車と出合い頭衝突し、投げ出された被害者に、事故後のCTに画像所見は得られないものの、重篤な見当識障害、記憶障害などの高次脳機能障害が出現し、MRIのT2スターでびまん性軸索損傷、脳表面の広範囲の点状出血が確認され、後遺障害として2級1号が認定されたことも複数回経験しています。
脳は、直接的な打撃でも損傷しますが、回転加速度による衝撃により揺さぶられることで損傷します。
幼児を執拗に揺さぶって、急性硬膜下血腫で死亡させた幼児虐待例も新聞を騒がせています。
脳は、揺さぶりの衝撃に弱いことを覚えておいてください。
びまん性軸索損傷は、コンテンツ⇒高次脳機能障害で具体的に解説しています。

2)症状

脳震盪では、頭部に加えられた衝撃により脳細胞が一時的に機能を停止したのか、あるいはその一部が損傷されるかして、一過性の意識障害を発症します。
症状としては、受傷時の記憶喪失=健忘が起こるため、受傷当時のことを思い出せません。
日付や場所、周囲の人のことが分からない見当識障害や意識消失が見られます。
大半は、健忘だけが残り、その他の脳の機能異常は認められません。

3)診断と治療

6週間程度で脳神経伝達物質の代謝は正常化するので、経過観察だけで正常に回復します。
頭痛や嘔吐があれば、安静、点滴、対症療法として鎮痛薬や吐き気止め薬などが処方されます。

失われていた記憶の一部はもどりますが、怪我をしたときのことは思い出せないのが普通です。
ただし、大部分で、その後に記憶障害が後遺症として残ることはありません。

受傷時に意識障害があったときは、脳震盪が疑われます。
頭をぶつけた子どもに対して、医師や看護師は、「すぐ大泣きましたか?」 と質問しています。
これは、意識障害の有無を確認しているのです。
すぐ泣いて、念のために撮影したCTで出血がなければ、脳震盪自体は心配ありません。

交通事故で、脳震盪と診断されたが、休まずにラグビーの試合に出場、タックルを受けて気絶した?
これは、大変危険で、最初の脳震盪の症状が残っている状態で、再度衝撃を受けたときは、セカンドインパクト症候群を発症し、死に至ることや重篤な後遺障害を残すことが報告されています。

※セカンドインパクト症候群、SIC
頭部に外傷や打撲などの衝撃を受け、脳震盪を発症した後、時間が経過しないうちに再び頭部に衝撃を受けることで発生する症状のことで、脳に損傷が生ずるリスクが高まり、より重篤な症状を呈することが報告されています。脳震盪のレベルは、①失神を伴わない軽度、②失神がしばらく続く中等度、③失神が比較的長く続く高度に分け、検証されています。
①軽度では、一過性の意識消失で、バランス感覚の消失や見当識障害などを伴い、②③中等度以上では、頭痛が持続し、四肢のしびれ感や吐き気のほか、健忘や記憶障害を伴うことがあります。

アメリカでは、中学の女子サッカー選手に多く脳震盪が見られることで、成人に比べて衝撃の大きいヘディングを10歳以下の選手に禁止することをアメリカサッカー協会が公表しています。
またラグビー選手が脳震盪となったとき、3週間は試合に復帰せずに様子を見ることをアメリカ神経学会から勧告されています。日本においても、全日本柔道連盟が、脳震盪を起こした柔道選手に対し、2~4週間の練習休止を求めています。脳震盪を起こして頭痛や吐き気などが持続するときは、検査結果で異常が認められなくても、1週間は、安静にして経過観察をすべきです。

4)後遺障害のポイント

脳震盪では、2週間以上の安静、スポーツの禁止を守っていれば、後遺障害を残すことはありません。