(9)胸・腰椎圧迫骨折(きょう・ようついあっぱくこっせつ)

胸・腰椎圧迫骨折

(1)病態

自動車の横転や転落、バイク、自転車の転倒で、ドスンと尻もちをついたときに発症しています。
つまり、脊椎を構成する椎体に縦方向の重力がかかると、上下に押し潰されて圧迫骨折するのです。
好発部位は、第11胸椎、T11~第2腰椎、L2です。
XPの側面像では、脊椎の椎体前方、腹側が、楔状変形しているのが確認できます。

(2)症状

骨折部に激痛が走ります。
腰部を動かすと痛みが増強するので、起き上がること、立ち上がることができません。

(3)治療

治療は、骨折部が安定していれば、入院下でギプスやコルセットで固定し仮骨形成を待ちます。
骨折部位が不安定なときは、手術が選択されています。
上肢や下肢に麻痺が残ったときは、装具の装用や、リハビリ治療で改善を目指します。

骨粗鬆症が進行している高齢者では、軽微な追突事故であっても、その衝撃で、胸椎や胸椎と腰椎の移行部で圧迫骨折を発症することがあります。
こうなると、損害賠償では、素因減額が議論されることになります。
余談ですが、背中が丸まっている高齢女性がおられますが、これは、老人性円背と言い、胸椎に自然に発症した多発性圧迫骨折を原因としています。

※骨粗鬆症
新陳代謝のバランスが崩れ、吸収=壊される骨が、新しく作られる骨よりも多くなってしまう疾患のことで、骨密度が減少し骨が脆くなります。

高齢者に起こる圧迫骨折では、治療は短期間のベッド上の安静で骨癒合を待ちますが、コルセッ卜やギプスを巻いて、体動時の痛みを和らげます。
椎体の骨折の程度が大きく、骨片が椎体の後方の脊髄や神経根を圧迫し、下肢の感覚を失う、力が入らないときは、手術で圧迫された神経を解放します。
骨粗鬆症のレベルが高く、数カ月を経過しても骨癒合が得られず、疼痛が緩和しないときは、人工骨や骨セメントを骨折部へ注入する治療が行われています。

経皮的椎体形成術 (BKP)



※左の図から「①」・「②」・「③」
①骨折部分にバルーンの挿入⇒②バルーンを膨らませ骨折部を持ち上げる⇒③骨セメントを充填

2011-1より、経皮的椎体形成術に健康保険の適用が認められています。

(4)後遺障害のポイント

1)圧迫骨折による椎体の楔状変形が後遺障害の対象になります。
さて、骨を構成する組織は、毎日、吸収=壊されては、新しく作られています。
圧迫骨折でも、若年者であれば、時間の経過で仮骨が形成され、形状がやや戻ることがあります。
若年者で、保存療法のときは、受傷から6カ月で症状固定とし、11級7号を目指します。

2)高齢者でBKP術を受けたときでも、受傷から6カ月で症状固定を決断、11級7号を目指します。

3)新鮮骨折か、陳旧性か?

第11胸椎圧迫骨折

T1強調画像
T1強調画像
T2強調画像
T2強調画像

新鮮な圧迫骨折のMRIでは、椎体は出血により他の椎体と違う濃度で描出されます。
元からあった陳旧性骨折か、新鮮骨折かの判断は、受傷直後のMRIで判断ができるのです。

上記は、62歳女性の第11胸椎圧迫骨折のMRI画像、新鮮骨折ですが、左のT1強調画像では、黒く描出されており、右のT2強調画像では、一部が白く描出されています。
このことを専門的には、T1強調において低輝度、T2強調において高輝度がみられるといいます。
圧迫骨折では、受傷直後のMRIにより、新鮮骨折であることを立証しておかなければなりません。