(19)肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)

肘頭骨折

(1)病態

肘頭は、尺骨の遠位端部に位置し、肘鉄を食らわすときに使う肘の頂点部のことです。
肘頭は、上腕と前腕をつなぐ蝶つがいの役目で、肘関節の曲げ伸ばしを滑らかにしています。
交通事故では、転倒したときに、肘を打撲する、手をついたことで骨折しています。
また肘頭は、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、骨折により破断し、転位が生じます。

肘頭骨折

(2)症状

肘に、痛みや腫れが生じ、肘の可動域制限と異常可動性が見られ、XPで骨折が認められます。

(3)治療

転位の少ないものは、肘関節を90°曲げた状態で4週間程度のギプス固定が行われます。
転位の大きなものでは、髄内釘・螺子による固定、フックプレートによる固定、Kワイヤーを8の字状に締結する引き寄せ締結法、ツークグルツングが行われています。

ツークグルツング

AOプレートとスクリューによる固定

転位が大きく、尺骨が粉砕骨折しているものは、AOプレートとスクリューにより固定されています。

2つの固定方法により、上腕三頭筋腱の強い張力から骨折した肘頭が引き裂かれるのを防ぎます。
2つの手術法は、骨折した肘頭を大変強く固定できるので、術後は、早々に肘の曲げ伸ばしを行うことができ、肘関節の拘縮や可動域制限の障害を軽減する長所を持っています。

(4)後遺障害のポイント

尺骨鉤状突起骨折のところで、まとめて解説しています。