(18)肘関節脱臼(ちゅうかんせつだっきゅう)

(1)病態

外傷性の脱臼では肩関節に次いで発症します。
交通事故では、二輪車を運転中、手をつくように転倒した際に発症しています。

肘関節脱臼

(2)症状

大部分は、肘の後ろに抜ける後方脱臼で、尺骨が上腕骨の後方に脱臼することで、強い痛み、腫れ、関節の変形を発症し、肘の曲げ伸ばしができなくなります。

橈骨頭の前方脱臼は、子どもが、肘を曲げた状態で肘をぶつけたときなどに発症することが多く、神経が圧迫され、指が伸ばせなくなることがあります。
上腕骨の先端が飛び出し、ほとんどで、肘頭骨折を合併しています。
脱臼に骨折を合併するときは、動揺関節や可動域制限などの後遺障害を残します。

(3)検査・治療

XP、CT、MRIなどにより、脱臼の他に、骨折や靭帯損傷を合併していないか、確認されます。
肘関節の脱臼だけのとき、治療は、全身麻酔下に徒手整復、肘関節を90°に曲げた状態で3週間のギプス固定がなされます。

ギプス固定

(4)後遺障害のポイント

1)自転車・バイクからの転倒では、尺骨が上腕骨の後方に飛び出す後方脱臼となりますが、骨折がなく、後方脱臼にとどまるものは、後遺障害を残すことなく治癒します。

2)肘関節の脱臼に、橈骨頭骨折、尺骨鉤状突起骨折、上腕骨内上顆骨折、上腕骨小頭骨折、上腕動脈損傷、尺骨神経麻痺などを合併するものは、固定術の適用となります。
このレベルでは、肘に動揺関節、拘縮などの後遺障害を残します。

3)肘関節の脱臼では、橈骨頭骨折、尺骨鉤状突起骨折、上腕骨外側上顆部の剥離骨折を合併するものが多いのですが、中でも、①肘関節脱臼、②橈骨頭骨折、③尺骨鉤状突起骨折が揃う複合損傷は、予後不良な組み合わせ(terrible triad)といわれています。
これらの傷病名は、後段で解説しています。