(27)肉離れ、筋違いと捻挫

肉離れ、筋違いと捻挫

(1)病態

肉離れ、筋違いの正しい傷病名は、筋挫傷です。
筋挫傷とは、筋肉や腱が打撃や無理に引き伸ばされることで生じる外傷です。
筋肉組織をやや伸ばした軽度なもの、組織が完全断裂する重度なものまで、拡がりがあります。

※腱
筋肉を骨に付着させる組織のことです。

交通事故では、転倒時の打撲などで、筋肉を損傷し、筋肉の腫れや内出血が起こります。

(2)症状

打撲部の痛み、腫れ、圧痛があり、太ももの前の筋、大腿四頭筋であれば、膝の屈曲が制限され、大腿の後部の筋、ハムストリングスであれば、膝の伸展が制限、ふくらはぎの筋、腓腹筋であれば、足関節の背屈が制限されます。
受傷機転、損傷した筋肉の圧痛部位から、確定診断が行われています。

(3)治療

損傷のレベル、範囲、血腫の存在を確認するには、エコー検査やMRIが有用です。
初期段階は、安静が一番で、痛いと感じる動作は避けるべきです。
痛みが和らぐ安定期に入ったら、血流を良くして回復を促します。血流改善には、リハビリで、温める、ストレッチ、マッサージなどが行われています。
筋肉に炎症があり、炎症が筋膜に生じているときは、4~7日、炎症が筋肉の中心に生じているときは、3~5日程度で完治します。

さて、捻挫とは、靭帯の外傷を意味しています。
靭帯は骨と骨をつないでいる組織で、関節内に存在しています。
靭帯には、関節が正常範囲を越えて曲がる、伸ばされることのないように安定させる役割があります。

例えば、足首の外側の関節には、3本の靭帯があります。
この靭帯は、足部が前に突出する、内側に曲がり過ぎることのないようにシッカリとつなぎ止めていますが、外側からの着地で、無理に体重が掛かると、靭帯だけでは支え切れなくなって、伸びる、断裂することになり、これを足関節捻挫と呼んでいます。
このような靱帯の外傷は、肘や膝など体内の他の関節でも発生しています。

足首の構造

発生直後から痛みのために歩行が困難となります。
損傷を受けた筋の部位に圧痛があり、ハムストリングスでは、膝の屈曲運動で抵抗を加えると痛みが増強し、ハムストリングスを伸ばすような動作でも、痛みが強くなります。
発症機転、損傷筋の圧痛部位から損傷筋の診断をします。
損傷程度や範囲、血腫の存在の判断には超音波検査やMRIが有用です。
受傷直後は、アイシングと、伸縮包帯で圧迫し、損傷を最小限に押さえ込みます。
3~5日を経過、痛みが軽くなれば、患部を暖め、ストレッチング運動により、筋の拘縮を予防し、関節の屈伸動作のリハビリ療法が行われます。
再発を繰り返すことがあり、慎重に対応する必要があります。

(4)後遺障害のポイント

1)肉離れ、筋違いで後遺障害を残すことは、通常は考えられません。

2)肉離れ、筋違いで放置されときに、後遺障害を残すことがあるのです。
筋肉に対する打撲の程度が大きいと、深く広範囲に内出血が発生します。
内出血が発生した筋肉内では、組織の修復活動、つまり細胞の増殖が行なわれるのですが、この修復活動が過剰に進むと、筋肉が固くなり、筋肉同士が癒着することがあります。
その結果、筋肉が伸びにくくなること、収縮機能が落ちることで、関節の動きに制限が生じるのです。

筋肉の出血は、筋肉を覆っている筋膜と筋肉の間、あるいは筋肉の中で発生しています。
出血後の血腫は、筋肉を圧迫し、運動痛や、出血量が多ければ腫れてきます。
筋肉内出血では、筋肉自体はもちろんのこと、筋肉の周囲の神経や血管を圧迫することが予想され、筋肉自体の圧迫では、筋肉に引きつりが生じ、筋肉の長さが変わることにより、関節自体に外傷がなくても関節の可動域に制限が生じます。

神経圧迫では、その神経に麻痺が生じ、血管圧迫では、手足の先の血行障害を起こします。
これらが、長時間継続することで、後遺障害を残すのです。
臀部、大腿部、肩の筋肉は、大きな筋肉であり、出血の量も問題となります。
出血性ショックに陥れば、血圧低下、貧血が発生します。

4)しかし、この後遺障害は、それなりの専門家が、研ぎ澄まされたセンスで対応しないと、医師の非協力もあって、なかなか追い込めないのです。
筋挫傷による炎症や鬱血が長期におよぶと、筋肉細胞が増殖し、硬化します。
これを医学では、硬結と呼ぶのですが、立派な他覚所見です。
上記の画像所見などの記載がないと、自覚症状だけでは、気のせい、大袈裟で非該当です。
我田引水で恐縮ですが、それなりの専門家とは、NPOジコイチとチーム110のスタッフのことです。