(7)続発性緑内障(ぞくはつせいりょくないしょう)

視力低下・視野狭窄・欠損

眼の構造

(1)病態

緑内障は、眼圧が高くなることで、視神経の入口部、つなぎ目の視神経乳頭陥凹が潰される、圧力で視神経が萎縮することで、視野欠損を生じ、重症例では、失明する可能性のある目の病気です。

視神経の病気ですから、本来は、事故との因果関係は認められません。
ところが、交通事故の外傷をきっかけとして緑内障を発症することがあり、これは、続発性緑内障といい、事故との因果関係を否定することができません。

※眼圧
眼圧とは、眼球の張りのことです。
眼球が丸い形なのは、眼球中の房水によって眼球の張りが保たれているからです。
房水の量が増えすぎてパンパンに張ってしまうと、眼圧が高い状態といいます。
眼圧の正常値は10~21mmHgで、21mmHgを超えると高眼圧と診断されます。
高眼圧になると、圧迫を受けた視神経の一部が潰れ、萎縮し、死んでしまいます。
死んでしまった視神経が元に戻ることはありません。
それまで視神経がキャッチしていた情報が脳に伝達できなくなり、視野の欠損や狭窄を発症します。

(2)症状

続発緑内障は、開放隅角型と閉塞隅角型の2つに分けることができます。
開放隅角型の続発緑内障としては、交通事故による白内障やぶどう膜炎に伴うものがあります。
白内障やぶどう膜炎では、炎症を起こし、眼圧が上がります。
外傷性緑内障は、眼球を強く打ったあと、しばらく経過してから、虹彩のつけ根が眼球壁から外れ、線維柱帯の機能が悪くなって眼圧が上がるものです。

閉塞隅角型の続発緑内障としては、水晶体が眼球の内部で外れる水晶体の亜脱臼、ぶどう膜炎の炎症により隅角が閉塞したときがあります。
いずれも、外傷により、虹彩が押し上げられ、隅角が閉塞することにより、眼圧が上昇します。

眼圧が上昇することで、目は強く充血します。

(3)治療

神経眼科を受診、視力・視野検査、眼圧検査、眼底検査などを受け、充血や炎症を確認します。
眼圧を下げるための薬物療法、レーザー治療、手術が選択されています。
ぶどう膜炎では、ステロイド治療による消炎、網膜へのレーザー治療やオペ、水晶体が原因では、白内障オペなどが必要となります。
高眼圧が継続するときは、降圧のために緑内障の手術が実施されています。

(4)後遺障害のポイント

1)外傷性虹彩炎、虹彩離断、水晶体の亜脱臼や脱臼、外傷性白内障、硝子体出血、外傷性網膜剥離では、続発性緑内障を発症する可能性があり、神経質に対応しなければなりません。

2)本件の傷病名は、視神経の損傷を原因としています。
視力検査では、
眼の直接の外傷による視力障害は、前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。
前眼部と中間透光体の異常は、細隙灯顕微鏡検査で調べます。
眼底部の異常は、眼底カメラで検査します。
視力検査は先ず、オートレフで裸眼の正確な状態を検査します。
その後、万国式試視力検査で裸眼視力と矯正視力を計測します。
前眼部・中間透光体・眼底部に器質的損傷が認められるとき、つまり、眼の直接の外傷は、先の検査結果を添付すれば後遺障害診断は完了します。

3)視覚誘発電位検査、VEP(visual evoked potentials)
これは眼球の外傷ではなく、視神経損傷が疑われるときの検査で、網膜から後頭葉に至る視覚伝達路の異常をチェックします。光刺激によって後頭葉の脳波を誘発し記録します。

VEP
VEP

失明や視力障害の立証は、1眼球破裂、2視神経管骨折、3角膜穿孔外傷の傷病名でも詳細を解説しています。参考にしてください。

4)視野欠損、狭窄
視野欠損、狭窄は、ゴールドマン視野計検査で立証します。

ゴールドマン視野計検査
ゴールドマン視野計検査

等級 視野障害の内容 自賠責 喪失率
9 3:両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの 616 35
13 3:1眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの 139 9

3)多くの眼科医は、交通事故外傷の対応に不慣れです。
損保との対応も、多くでは、初めての経験です。
眼球破裂であれば、交通事故との因果関係が議論されることはありませんが、遅発性の続発性緑内障となると、以下の2つのいずれかを立証していただく必用があります。

①外傷で、虹彩のつけ根が眼球壁から外れ、線維柱帯の機能が悪くなって眼圧が上昇していること、
②外傷で、虹彩が押し上げられ、隅角が閉塞することにより、眼圧が上昇していること、
こんなとき、交通事故との因果関係の立証を声高にお願いしては、眼科医から嫌われます。
続発性緑内障は、眼圧の上昇を原因として発症しており、眼圧の上昇が、上記の2つのいずれに該当するのかを、画像の提供を含めて、丁寧な立証をお願いすることになります。
この点、気配りを十分にしてください。