(4)眼窩底骨折(がんかていこっせつ)


眼窩下壁が骨折して、眼窩脂肪が飛び出している、

(1)病態

ブローアウト=吹き抜け骨折とも呼ばれる、特殊な顔面骨の骨折です。
眼球が入っている骨の窪みを眼窩といいますが、この眼窩の入り口部分は頑丈にできていますが、その奥の眼窩壁の鼻側から下壁部分は、薄い骨でできているのです。
目に強い衝撃が加わると、眼の周囲の骨は持ちこたえてくれても、弱い眼窩壁が骨折するのです。

(2)症状

骨折部から、眼窩内の脂肪組織や眼を動かす筋肉などがはみ出すことにより、
①事故直後は、眼球が陥没し、
②眼の動きが悪くなり、モノが二重に見える複視の症状が現れ、、
③眼窩下壁の知覚神経損傷を伴うときは、頬部から上口唇の感覚が麻痺します。

(3)治療

CTで、骨折の状況を確認し、眼球陥没や眼球運動障害の程度から、手術が判断されています。
骨折部で眼を動かす筋肉が挟み込まれているときは、緊急手術で対応されます。
眼窩壁の骨折があっても、複視や眼球陥没などの症状が無ければ手術は行われません。
複視の多くは、骨折部の腫れや出血が吸収されると改善する傾向です。
訴えが複視のみで、CTで問題がないときは、改善状況を見てから、手術の可否判断がなされます。
眼の落ち窪み、眼球陥没では、待ったなしで手術が選択されます。

全身麻酔下で、骨折した骨を元に戻して固定しますが、薄い骨が粉砕されて整復できないこともあり、そのときは、自分の骨や軟骨、シリコン、セラミック、チタンなどの人工材を骨折部に移植します。


骨折を整復、上顎洞内から支える、

骨の欠損部を補填剤で修復

(4)後遺障害のポイント

1)眼窩底は厚みが薄く、紙に例えられており、篩骨は、外傷によって容易に骨折するのですが、一方では、これにより、眼球の破裂を回避しているのです。
しかし、眼窩底の重度な粉砕骨折では、修復がなされても、複視の後遺障害を残しています。

2)複視は、正面視での複視と左右上下の複視の2種類があります。
検査には、ヘスコオルジメーターを使用し、複像表のパターンで立証します。
正面視の複視は、両眼で見ると高度の頭痛や眩暈が生じるので、日常生活や業務に著しい支障を来すものとして10級2号の認定がなされます。

複視

左右上下の複視は正面視の複視ほどの大きな支障は考えられないのですが、軽度の頭痛や眼精疲労は認められます。この場合は13級2号の認定がなされます。

等級 複視の内容 自賠責 喪失率
10 2:正面視で複視の症状を残すもの 461 27
13 2:正面視以外で複視の症状を残すもの 139 9

3)外側直筋や上斜筋などの眼筋縫合術による正面視での複視消失率は、60~95%と報告されていますが、これは、先進の神経眼科における実績です。
あくまでも、手術を受けないかぎり、治る、治らないは、判断できません。
さらに、この手術は、受傷から6カ月の内服による保存的治療と経過観察後に、実施されています。
したがって、現実的な解決としては、症状固定⇒10級2号の獲得を優先しています。
手術は、損害賠償が確定してから、健保適用で受けることになります。

なお、13級2号に該当する複視では、手術の選択はありません。
これ以上は、治せないからです。
周辺部の複視に対しては、眼だけでなく、顔を向けてモノを見ることで対応していきます。