(13)眼瞼=まぶたの外傷

醜状障害

眼の構造

(1)病態

まぶたの皮膚は、まつ毛側に近づくにつれて薄くなり、眉毛側は分厚く固い皮膚となっています。
薄い皮膚の直下には、皮膚と密に癒着している眼輪筋、まぶたを閉じるための筋肉があります。
眼輪筋の下には脂肪層があり、脂肪層の下には、目の縁に瞼板という軟骨があります。
まぶたを開けるのに使われる筋肉には、眼瞼挙筋ミュラー筋5の2つがあります。
これらは共に瞼板に付着しています。

交通事故によるまぶたの外傷では、
①まぶたの打撲による腫脹、②まぶたの皮下出血
③まぶたの切創=裂傷、④外傷性眼瞼下垂、⑤涙小管断裂が予想されます。

①まぶたの腫脹
上下のまぶたの打撲による軟部組織の腫脹で、交通事故では、自転車やバイクの運転者に多発しています。眼球内に炎症がおよんでいなければ、安静とアイシングにより、1週間前後で治癒するので、後遺障害を残すことはありません。

②まぶたの皮下出血
上下のまぶたの打撲で、まぶたの皮下血管が損傷を受け、内出血します。
目の周りが黒ずみ、皮膚が紫色に腫れ、目が開けられなくなることもあります。
視力や眼球運動に異常がなければ、安静、アイシングで1、2週間で皮下出血は吸収され、予後も良好で、後遺障害を残しません。

③まぶたの切創=裂傷
刃物による切創ではなく、ボクシングでも、不意のバッティングや拳の打撃により、また、交通事故の打撲でも、まぶたが切創することがあります。
まぶたの創は、ひどい出血を伴いますが、厚く重ねたガーゼで15分ほど圧迫すると、ほとんど止血することができます。止血後に、眼科あるいは形成外科で縫合することになります。
普通は、2週間程度で治療は完了します。
複雑で大きな裂傷では、まぶたに瘢痕を残し、顔面醜状として後遺障害の対象になります。
瘢痕であれば10円銅貨以上、線状痕であれば3cm以上で、12級14号が認められます。

まぶたの構造

まぶたの切創であっても、角膜や強膜が切断しているときは、失明の可能性が高くなります。
受傷直後に、眼科を受診しなければなりません。
その際、体を揺すったり、顔を動かしたり、目を圧迫すると、眼球の内容物が流れ出してしまうことがあり、要注意です。予後は創の場所、大きさ、深さによって異なります。
創を受けていない方の目にも炎症をおこす交感性眼炎に注意しなければなりません。

一般に、打撲による眼の外傷では、受傷直後の視力に気をつけなければなりません。
視力が低下して、見えにくいときは、ただちに眼科医を受診、鼻出血を伴うときも同様で、前房出血、網膜震盪症、外傷性虹彩炎、虹彩離断、水晶体脱臼、眼球破裂、眼窩底吹き抜け骨折、視神経管骨折などが想定されるからです。

※交感性眼炎
外傷で、ぶどう膜を損傷すると、受傷した方とは反対の眼にも炎症が起こることがあり、交換性眼炎と呼ばれています。
交感性眼炎は、外傷、または手術後に他眼に起きる稀な肉芽腫性ぶどう膜炎です。
発生のメカニズムは、色素細胞が、外傷をきっかけとして免疫系にさらされることにより、色素に富んだぶどう膜に対する自己免疫反応が起こると考えられています。
飛蚊症と視力低下が、典型的な症状です。

蛍光眼底造影検査や髄液検査が実施され、血液検査では、白血球の増多、赤沈の亢進、CRP陽性化などの炎症性の反応がみられます。
ステロイド薬の大量点滴あるいはパルス療法が行われます。
免疫抑制薬が使われることもあります。
受傷した眼の視機能の回復がまったく期待できないときには、交感性眼炎の発症を予防する必要から、受傷した眼球を摘出することも行われています。