(3)環軸椎脱臼・亜脱臼(かんじくついだっきゅう・あだっきゅう)

環椎・軸椎

(1)病態

頚椎は正面から見ると7つの椎体の連なりであり、C1、環椎とC2、軸椎は独特な形状をしています。
軸椎には歯突起があり、軸を中心に環軸が回転することで、頚部を左右に回転させることができます。
軸椎以下の頚椎は、椎間板という軟骨の座布団で椎体間が連結されており、これにより、頚椎がしなるように動くことができるのです。

環軸関節の位置は、正面では、口のあたりに位置しています。
環椎の上部に頭蓋骨が乗っており、この関節の支えにより、頚部は左右に動くのです。

交通事故では、後頭部方向から大きな外力が加わり、過屈曲が強制されることで、軸椎の歯突起が骨折し、環椎が前方に転位し、環軸椎亜脱臼・脱臼が発症しています。
転位が高度で環椎と軸椎を結合する関節が完全に外れてしまったものを環軸椎脱臼、外れかかった状態で4mm以上の転位があるものを環軸椎亜脱臼といいます。

(2)症状

後頭部痛、脱臼・亜脱臼部のしびれ、首を動かすことができない、斜頸

※斜頸
首や顔が横に向いたままもとにもどらない

環椎の大きな転位では、脊髄が圧迫され、骨片で損傷し、環軸椎不安定性に伴い、脊髄麻痺症状が合併することがありますが、全体の比率では、1%未満です。
症状としては、手足の筋力が低下することで、階段の上り下りが困難、跛行、歩いても、直ぐに座り込む、コップやスプーンをよく落とすようになり、さらに、重症化すると、呼吸障害、排尿・排便の機能が低下し、失禁や、閉尿の症状が出現します。
後頭神経の圧迫症状としては、後頚部痛、椎骨動脈の圧迫に伴う強い眩暈を発症し、起き上がって座ることができなくなります。

(3)治療

環軸椎亜脱臼に対しては、保存療法として、ソフトカラー、フィラデルフィアカラーによる固定がなされていますが、脊髄症状を示す重症例では、積極的に、スクリュー固定が行われています。

(4)後遺障害のポイント

1)第1頚椎、C1は環椎、Atlas、C2は軸椎、Axisと呼ばれています。
環椎と軸椎は脊柱の中、先頭を切る位置を占めています。
後頭骨/環椎、環椎/軸椎の2カ所の骨間だけは椎間板が存在しません。

椎体の構造

椎体と椎体をつなぐ繊維輪による連結と運動の制約がないので、自由で大きな関節運動ができます。
頚椎の回旋運動可動域の2分の1を後頭/環椎、環椎/軸椎の上位頸椎が演じています。
可動域が大きいということは、逆に障害を受けやすい不安定な部位ともいえるのです。

※環椎・軸椎
頚椎全体による可動範囲の相当の割合を担っています。
そのため、環椎または軸椎が脊椎圧迫骨折などにより変形して固定となる、または環椎と軸椎の固定術が行われたために、環椎または軸椎の可動性がほとんど失われると、頚椎全体の可動範囲も大きく制限され、上記に該当する変形・固定となると、脊柱の運動障害8級2号にも該当するケースがほとんどとなります。なお、環椎または軸椎が変形・固定していることについては、最大矯正位のXPでもっともよく確認することができます。

2)脊柱の変形障害
①環椎または軸椎の変形・固定により、次のいずれかに該当するものは、8級2号となります。
A 60°以上の回旋位となっているもの
B 50°以上の屈曲位または60°以上の伸展位となっているもの
C 側屈位となっており、XPなどにより、矯正位の頭蓋底部両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30°以上の斜位となっていることが確認できるもの

この内、AおよびBについては、軸椎以下の脊柱を可動させず、当該被害者にとっての自然な肢位で、
回旋位または屈曲・伸展位の角度を測定します。

3)脊柱の運動障害
頚部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの、頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたものは、8級2号となります。

4)頚髄損傷をきたしたときは、神経系統の機能障害で後遺障害の審査を受けることになります。
環軸椎の脱臼骨折で固定術が実施された背景には、脊髄損傷を最小限にする目的があります。
術後の被害者に、上・下肢の麻痺、強烈な痺れ、上・下肢の疼痛、排尿障害などの重篤な脊髄症状が残存していれば、神経系統の機能障害で等級の獲得を目指します。
障害の程度により、9級10号、7級4号、5級2号、3級3号が選択されています。
膀胱機能障害は、併合の対象となります。

後遺障害の立証では、後遺障害診断書以外に、「脊髄症状判定用」 の用紙を提出し、肩・肘機能、手指機能、下肢機能、上肢・下肢・体幹の知覚機能、膀胱機能、日常生活状況について、検査と結果の記載をお願いしなければなりません。
排尿障害は、ウロダイナミクス検査で立証することになります。

チーム110のスタッフは、事前に脊髄症状のチェックを行い、日常生活状況については、被害者の職業上の具体的な支障を記載した申述書を主治医に提示しています。
ここまで明らかにしないと、目指す等級の獲得はできません。

等級 脊柱の運動障害に伴う後遺障害
6 5:脊柱に著しい運動障害を残すもの
頚部および胸腰部が強直したもの
①頚椎と胸腰椎の両方に圧迫骨折などがあり、それがXPなどにより確認できるもの
②頚椎と胸腰椎の両方に脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8 2:脊柱に運動障害を残すもの
頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
①頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折などを残し、それがXPなどにより確認できるもの
②頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
④頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの

5)整形外科では、4mm程度の亜脱臼は、見落とされることが多く、立証では、脊椎・脊髄の専門医にお願いしなければなりません。

脊柱に著しい変形を残すもの、および、脊柱に中程度の変形を残すものは、脊柱の後弯または側弯の程度により等級が認定されており、変形だけが注目されているのではありません。

イラストを加え、分かりやすく解説したつもりですが、6級5号と8級2号については、おそらく理解は得られていないと予想しています。でも、こんなときのNPOジコイチですから、相談してください。
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6)頚髄損傷を除いて、保存療法となったものは、受傷から7、8カ月の経過で症状固定とします。
スクリュー固定がなされたものは、術後4、5カ月で症状固定を選択します。