(1)病態
頭側からの垂直圧迫力の作用で、第1頚椎=環椎が外に向かって弾けるように骨折するものを環椎破裂骨折=ジェファーソン骨折といいます。環椎の前弓および後弓の抵抗の弱い4カ所が骨折するのですが、外側塊が外方に転位、脊柱管は拡大するので脊髄損傷は、ほとんど見られません。
プールに、頭から飛び込んだとき、交通事故では、自動車同士の正面衝突、バイクの崖下への転落、歩行中に自動車の追突を受けて跳ね飛ばされたなどで発生しています。
(2)症状
後頭部痛、頚部痛、頚椎の可動域制限、
私が対応した被害者は、事故直後、疼痛のため、立つことも座ることもできない、首を動かすとコクッとクリック音があり、激痛が走るので、両手で頭を支えていないと不安になると訴えていました。
(3)治療
頚椎側面像、開口位正面像、正側面断層など4方向のXP、CT撮影で確定診断されています。
治療は、保存的治療で、ハローベストによる外固定が行われています。
ハローベストによる外固定
3カ月を経過しても、環軸椎に不安定性を残すときは、第2頚椎、軸椎の外側塊との後方固定術が行われています。
(4)後遺障害のポイント
1)椎体骨の変形と頚部の運動障害が、後遺障害のポイントになります。
等級 | 脊柱の変形障害に伴う後遺障害 |
6 | 5:脊柱に著しい変形を残すもの |
XP・CT・MRIで圧迫骨折などを確認できて、次のいずれかに該当するもの | |
①圧迫骨折等により2つ以上の椎体前方椎体高が著しく減少し、後弯が生じているもの | |
②3つの椎体の圧迫骨折で、前方椎体高が減少したもの | |
③圧迫骨折等により1つ以上の椎体の前方椎体高が減少し、後弯が生ずるとともに、コブ法による側弯度が50°以上となっているもの | |
④2つの椎体の圧迫骨折等で前方椎体高が減少したもの | |
8 | 2:脊柱に中程度の変形を残すもの |
①圧迫骨折等により1つ以上の椎体の前方椎体高が減少し、後弯が生じているもの | |
②コブ法による側弯度が50°以上であるもの | |
③頚部の環椎または軸椎の変形・固定により、次のいずれかに該当するもの | |
a 60°以上の回旋位となっているもの | |
b 50°以上の屈曲位または60°以上の伸展位となっているもの | |
c 側屈位となっており、XP等により、矯正位の頭蓋底部両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30°以上の斜位となっていることが確認できるもの | |
11 | 7:脊柱に変形を残すもの |
①脊椎圧迫骨折などを残しており、そのことがXPなどにより確認できるもの | |
②脊椎固定術が行われたもの | |
③3椎以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの |
2)骨折後の骨癒合について、3DCTで変形癒合を立証できたときは、脊柱の変形障害として11級7号が認定されます。
3)環椎破裂骨折に対して、環軸椎後方固定術が実施されたときは、頚部の左右の回旋運動はほとんど失われることになります。頚部の可動域制限で8級2号が認定されます。
等級 | 主要運動 | 参考運動 | |||
前屈 | 後屈 | 左・右回旋 | 合計 | 左・右側屈 | |
正常値 | 60 | 50 | 各60 | 230 | 50 |
6級5号 | 10 | 5 | 各10 | 25 | 5 |
8級2号 | 30 | 25 | 各30 | 115 | 25 |
等級 | 脊柱の運動障害に伴う後遺障害 |
6 | 5:脊柱に著しい運動障害を残すもの |
頚部および胸腰部が強直したもの | |
①頚椎と胸腰椎の両方に圧迫骨折などがあり、それがXPなどにより確認できるもの | |
②頚椎と胸腰椎の両方に脊椎固定術が行われたもの | |
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの | |
8 | 2:脊柱に運動障害を残すもの |
頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの | |
①頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折などを残し、それがXPなどにより確認できるもの | |
②頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの | |
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの | |
④頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの |
4)症状固定のタイミングは、ハローベストによる外固定であれば、受傷から7、8カ月を経過した頃、環軸椎後方固定術が実施されたときは、術後4カ月を経過した頃に選択します。