(1)病態
ちょっと箸休めですが、本件は、交通事故による傷病名ではありません。
流行性耳下腺炎とは、おたふく風邪のことで、多くは、4~5歳で発症しています。
ムンプスウィルスが原因で、感染した人の咳やくしゃみから、ウィルスを吸い込むことで感染します。
潜伏期間が2~3週間と長く、幼稚園などで流行りだすと、終息するまで時間がかかります。
ただし、一度感染をすると、免疫を有することになり、再感染はありません。
(2)症状
37~39度の発熱で、耳の下の耳下腺が腫れてきます。
耳下腺は、唾液を作る唾液腺で、口を開ける、食事をすることで、唾液腺を刺激すると痛みが増強するので、食欲が低下します。しかし、熱は3日ほどで下がり、腫れや痛みも1週間前後で改善します。
おたふく風邪で心配されるのは、合併症です。
激しい頭痛や嘔吐があるときは、無菌性髄膜炎を合併していることが予想されます。
重要な合併症の1つに、難聴があり、1000人に1人の割合で合併するといわれています。
NHKの連続テレビ小説 「半分、青い」 のヒロイン、すずめちゃんも、おたふく風邪で、左耳の聴力を失ったとされています。
その他では、脳炎や膵炎を合併することがあります。
思春期以降の男性では、約20~30%で、精巣炎を合併するといわれています。
年齢が上がれば重症化しやすくなり、男性の精巣炎では、無精子症の後遺症を残します。
私の周囲では、子どもに恵まれなかったご夫婦の多くが、夫の、おたふく風邪による無精子や元気な精子が極端に少ないことを原因としています。
10歳になっても罹患しないときには、予防接種を受けておかなければなりません。
(3)治療
ムンプスウィルスを根絶することは不可能であり、罹患したときは、自然治癒を待つことになります。
痛みなどに対しては、鎮痛消炎剤やアイシングの対症療法が行われています。
発熱に対しては、水分補給を行い、腫れや痛みがひくまでは口当たりの良いものや消化の良いものを与えます。流行性耳下腺炎は、学校保健安全法により、第2種の感染症に指定されています。
耳下腺の腫れが完全にひくまでは、幼稚園などには登園停止となります。
登園の際は、主治医の治癒証明書が必要になります。
WHOのデータベース、2016年によれば、アメリカでは、年間の患者数は1308人、イギリスでは974人、カナダは2157人ですが、日本では、なんと15万9301人となっています。
日本は、おたふくかぜ大国なのです。
日本では、おたふくかぜワクチンは任意接種であり、5000~8000円程度の費用を自己負担しなければならず、そのため、接種率は30%程度と低いことが原因といわれています。
やはり、ワクチンの2回接種は受けておくべきです。
当方は、家族全員がおたふく風邪に罹患しており、幸い、合併症もなく、今日に至っています。