(1)病態
ショーファー、Chauffeurとは、お抱え運転手のことですが、大昔、まだセルモーターがなかった時代では、クランクバーを手で回して自動車のエンジンをかけていました。
このクランクバーが逆回転して、運転手の橈骨背側を強打、橈骨の茎状突起骨折が多発したことから、この骨折は、ショーファー骨折との呼ばれるようになりました。
茎状突起とは、解剖学で、骨の細くとがった突起物のことをいいます。
自転車で横断中、自動車との衝突で、手のひらをついて転倒したときにも、この骨折が起こります。
受傷機転が、手関節の背屈・橈屈強制で起こり、茎状突起が舟状骨と衝突します。
それにより、舟状骨骨折を伴うこともあります。
(2)症状
手首の疼痛と腫れで、手首を動かすことはできません。
(3)治療
橈骨茎状突起部は、手関節を構成している骨であり、元通りの位置に整復されなければなりません。
徒手整復を行い、ギプスで固定しても、固定中に再転位することが多く、現在では、ほとんどで固定術が行われています。
しかし、粉砕骨折となると、固定術であっても安定性が得られないことが多く、予後不良です。
将来、変形性手関節症に発展することも予想されます。
(4)後遺障害のポイント
1)骨折後の骨癒合も重要ですが、手関節として整合性が保たれていることもポイントです。
この点を、詳細に検証しなければなりません。骨折部の骨癒合状況は、3DCTで立証します。
手関節のアライメント(配列)は、健側の手関節の背側・掌側のXP写真を比較しつつ検証します。
手関節の整復が不十分で、変形骨癒合しているときは、可動域制限で10級10号も獲得しています。
常識的には、手関節の機能障害で12級6号が認定されています。
症状固定時期は、受傷から6カ月、漫然治療では、12級を取りこぼします。
2)変形性手関節症は、受傷後の二次的障害です。
症状固定時には問題となっていなくても、時間の経過で進行していくことが予想されます。
示談書には、将来新たな後遺障害が発生したときに備えた条項を記載しておくことが必要です。
示談書と後遺障害診断書の写し、等級認定通知書、XP、CT、MRIなども厳重に保管しておくことが必要ですが、本件では、弁護士に委任しての示談解決が理想的です。