(46)キーンベック病=月状骨軟化症(げつじょうこつなんかしょう)

月状骨軟化症
末期の月状骨は、潰れて扁平化します

(1)病態

キーンベック病は、月状骨無腐性壊死※・月状骨軟化症とも呼ばれており、外傷後だけでなく、振動ドリルなどで手を酷使する人、大工、農林漁業などで、手をよく使う人にも発症しています。

※無腐性壊死
無腐性壊死は、特定部位の骨組織が感染症以外の原因で骨細胞を栄養する血流の供給が断たれ発生したもので、疫学的には、臓器移植、膠原病、神経内科的疾患などでステロイドの大量投与、多量のアルコール飲酒、長期間の喫煙、および脂質代謝異常などが危険因子と報告されています。

月状骨は、周囲が軟骨に囲まれており、血行に乏しく、壊死しやすい環境におかれています。
交通事故では、前腕骨、橈骨、尺骨の脱臼・骨折により、2つの骨のバランスが崩れ、手関節内で月状骨にかかる圧力が強くなることで、二次的障害として発症しています。
また、月状骨の不顕性骨折※を見落としたことで、キーンベック病を発症することも予想されます。
専門医でなければ、「腱鞘炎でしょう?」 と放置されることも多いのです。

※不顕性骨折
XP画像で、骨折線が見えない骨折を不顕性骨折といいます。

(2)症状

症状は、手首の疼痛、痛みを原因とした手関節の可動域制限、握力の低下です。

(3)治療

月状骨が潰れる外傷で、初期では、血行不良により、XPやMRIで月状骨の輝度変化が出現します。
末期には、無腐性壊死となり、潰れて扁平化します
軽症では、サポーターの装用や、手を休ませることで、改善が得られますが、重症例では、橈骨、尺骨のバランスを整える骨切り術が行われています。

(4)後遺障害のポイント

1)専門医が適切に対処したときは、後遺障害を残すことなく、改善が得られています。

2)症状を訴えても、「腱鞘炎でしょう?」 検査もしないで放置された?
XP検査は実施したが、MRIの撮影を怠り、月状骨の不顕性骨折を見落とした?
これが、治療現場で最も多く見られる常識なのです。
ですから、ほとんどで、後遺障害は残るのです。

3)経験則では、手関節の可動域制限で12級6号が認定されています。
手関節の可動域が2分の1以下に制限されたときは、10級10号の認定を受けてから、骨切り術を検討することになります。