外傷により、手根骨を締結している靱帯が損傷し、手根骨の配列異常が生じたもので、
①舟状・月状骨間解離、②月状・三角骨間解離の2つがあります。
(1)舟状・月状骨間解離 (しゅうじょう・げつじょうこつかんかいり)
(1)病態
舟状・月状骨間靭帯が、舟状骨の靭帯付着部で断裂して発症します。
舟状骨と月状骨間の解離=SL解離が生じ、XP手関節正面像では3mm以上の開大が認められます。
(2)症状
手関節の痛みと可動域制限
(3)治療
受傷後の早期では、靱帯の修復術が行われ、同時に、手根骨の配列を整復、Kワイヤーで6週間、その後装具を6週間装着します。
慢性期でも、症状の強いものは、STT関節の固定、手根骨の部分切除、部分関節固定などの手術が行われています。
(4)後遺障害のポイント
月状・三角骨間解離のところで、まとめて解説しています。
(2)月状・三角骨間解離 (げつじょう・さんかくこつかんかいり)
(1)病態
手根骨である月状骨と三角骨との間に障害が出たもので、月状骨や舟状骨に対し三角骨は中側へ向く変形がみられます。
(2)症状
手関節の疼痛、可動域制限などがあり、月状骨と三角骨のある尺側部分に圧痛点が見られます。
(3)治療
XPの舟状・月状骨角は20°以下で手根掌屈変形が認められます。
XP、手関節正面像では、月状骨三角骨間での両骨間に間隙が存在します。
確定診断には、掌・背屈や橈・尺屈などのストレス撮影で、器質的損傷が明らかとなります。
SL解離と同じく、急性期では靭帯を修復する手術、慢性期では部分的な関節固定術などが行われています。
(4)後遺障害のポイント
①事故後の早期に確定診断がなされ、靱帯の修復術や手根骨の配列が整復されたものは、完治しており、後遺障害を残しません。
②放置され、陳旧性となったものは、固定術を受けたとしても、手関節の機能障害で12級6号、神経症状で14級9号が認定されることがあります。術後、4週間で症状固定としたときは、12級6号、術後2カ月のリハビリ後では、14級9号もしくは非該当です。
症状固定時期の選択がポイントになります。
③手根骨では共通する事項ですが、通常のXPでは見逃されることが多く、ジクジクした痛みが続くときは、遅くとも2カ月以内に、専門医を受診しなければなりません。
④器質的な損傷は、MRI、各種ストレスXP撮影や関節造影検査などで立証しています。