(30)PCL 後十字靱帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)

後十字靱帯損傷

(1)病態

ACL前十字靱帯とPCL後十字靱帯は、共に、膝関節の中にある靭帯で、大腿骨と脛骨をつなぎ、膝関節における前後の動揺性を防止している重要な靱帯です。

交通事故では膝をダッシュボードで打ちつけて発症することが多く、dashboard injuryと呼んでいますが、PCLだけの単独損傷はほとんどありません。
多くは、膝蓋骨骨折、脛骨顆部骨折、MCL損傷を合併するので、実に厄介な外傷となるのです。

運転席や助手席で膝を曲げた状態のまま、ダッシュボードに外力・衝撃などによって、膝を打ちつけ、𦙾骨が90°曲がったまま後方に押しやられ、PCL後十字靱帯損傷となるのです。
同時に、膝蓋骨骨折、脛骨顆部骨折などに合併して生じることが多いのです。

dashboard injury

(2)症状

後十字靭帯損傷は、前十字靭帯損傷と比べ、機能障害の自覚や痛みが少ないのが特徴です。
前十字靭帯損傷に比して、痛みや機能障害の自覚が小さいものの、痛みや腫れは出現します。
訴えは、膝蓋骨骨折などの痛みが中心となります。

(3)診断と治療

この治療を得意としているのは、整形外科、スポーツ外来で、専門医が配置されています。
ACL損傷に同じく、PCL損傷もテストによって診断をおこないます。
靭帯が切断されているときは、膝がぐらつくので、そのぐらつきの有無や特性により診断が行われています。

①後方引き出しテスト(posterior sag)

後方引き出しテスト

膝を90°屈曲すると、下腿の重みで脛骨が後方に落ち込みます。
仰向けで股関節を45°と膝を90°曲げます。
後十字靭帯断裂では、脛骨上端を後方に押すとぐらつきます。
上記のテストで大まかな診断が可能ですが、損傷のレベルを知るためには、単純X線写真、CTスキャン、関節造影、MRIなどの検査を行います。MRIがとても有効です。

②ストレスXP撮影

ストレスXP撮影

脛骨を後方に押し出し、ストレスをかけた状態でXP撮影を行います。
断裂があるときは、脛骨が後方に押し出されて写ります。
後十字靭帯損傷とは、靭帯が部分断裂したレベルであり、単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法の適用です。
膝を90°屈曲すると、下腿の重みで𦙾骨が後方に落ち込むのですが、これが10mm以上となると、後十字靱帯は断裂しており、再建術の適用となります。

太ももの内側から遊離半腱様筋腱、半腱様筋腱を採取し、それらを編み込んで、アンカーボルトで留めるという高度な技術の必要な再建術が行われています。
腱移植術では、膝の専門医のいる医大系の総合病院を選択しなければなりません。

(4)後遺障害のポイント

1)現在に至るも、医学界では、PCL後十字靱帯損傷の治療は、保存療法が中心です。
部分断裂であれば、硬性装具とハムストリングの強化で、一定の改善が得られます。
ドンジョイの装具で、自転車を漕ぐリハビリが効果的とされています。

完全断裂であっても、上記の保存的療法が推奨されているのですが、であれば、一生涯、脚が細くならないように、筋トレや太ももの強化リハビリを継続しなければならず、現実的な選択肢ではありません。
やはり、完全断裂の根治は、再建術に頼ることになります。

2)大多数の整形外科医は、後十字靱帯のオペは非常に難しく、感染症で人工関節の危険も予想されるところから、日本では、再建術を実施しない病院が殆どであると説明します。
しかし、腱移植術のできる医師は極めて少ないのですが、現に、存在しています。
感染症は、可能性として0ではありませんが、経験したことはありません。

3)無料相談会でも、保存療法に終始し、効果の得られていない被害者が、たくさん参加されています。
4カ月以上を経過していれば、6カ月を待って症状固定としています。

①PCL後十字靱帯断裂も、4カ月を経過すると陳旧性、古傷化しています。
今から、再建術を行っても、陳旧性であれば、専門医の執刀でも、元通りの保証はありません。
後遺障害等級が薄まる程度の改善が得られれば、御の字です。

②4カ月、6カ月が経過した段階で、相手損保に再建術を申し入れても、快く、治療費が負担されることはなく、大方は、弁護士対応で、休業損害の支払いも含めて距腓してきます。

③さらに、再建術では、3、4カ月の入院と3カ月以上のリハビリ通院が必要となります。
ここから4、5カ月も休業すれば、勤務先では、解雇か、アザーサイド、忘れ去られてしまいます。
サラリーマンであれば、その後の会社人生を、完璧に、失ってしまうのです。
そして、このことは、本件の損害賠償の対象にはならないのです。
ほぼ全員の被害者が、泣く泣く、症状固定を選択しているのです。

4)膝に動揺性が認められるときは、膝を4点で固定するドンジョイを選択してください。

ドンジョイ

後十字靱帯の損傷、断裂は、MRIで立証します。
動揺性は、ストレスXP撮影で、健側に比して○mmの動揺性が認められると、明確な記載を受けます。
後遺障害の立証には、必ずストレスXP撮影が必要となります。
ストレス撮影で動揺が立証されない限り、12級以上の認定はなされないと、承知しておくことです。