(51)足根骨 外傷性内反足(がいしょうせいないはんそく)

外傷性内反足

(1)病態

足の裏が内側を向き、外側部だけが地についている状態を内反足といいます。
先天性のものが圧倒的ですが、交通事故外傷でも発症しています。
外傷性内反足に遭遇したときの、被害者10歳、女子の傷病名です。
短腓骨筋腱完全断裂、長腓骨筋腱部分断裂、距骨外反、前足・中足部内反、右腓骨遠位端骨折、右腓骨遠位端線損傷、

足関節の捻挫に伴って発症するものに、短腓骨筋腱縦断裂があります。
足の捻挫のあと、いつまで経っても外踝(くるぶし)の後部に疼痛があるときは、短腓骨筋腱断裂が疑われるのです。
上図は、オレンジ色が短腓骨筋、青色が長腓骨筋で、どちらも、足首を外へ返す働きをしています。
○印は、外踝(くるぶし)の後部ですが、そこでは、長・短腓骨筋腱が並んで走行しています。
足首を内側に捻挫したとき、短腓骨筋腱は、長腓骨筋腱と外踝の骨である、腓骨の間に挟まり、ストレスがかかり、縦に断裂することがあります。
また、短腓骨筋腱が外踝の後ろで亜脱臼して、縦に断裂することもあります。

(2)症状

外踝の後ろで、短腓骨筋腱が断裂したときは、外踝の後部が腫れ、疼痛を発症します。

内反足は、外反扁平足とは逆の、「く」の字の変形をきたします。
今回は、交通事故による外傷性内反足に遭遇しました。
10歳女子の右足は15°内反しており、左右の下腿部の比較で、右下腿が1.5cm筋萎縮しています。
足の外側縁の接地であることから、第5中足骨々頭と基部にタコができていました。

足の内返しとともに尖足(せんそく)を伴うことが多いのですが、その徴候は認められていません。

尖足

※尖足(せんそく)
足の変形の一種であり、足の甲側が伸び、足先が下垂したまま元に戻らなくなった状態です。
踵(かかと)を地面につけることができないので、足先で歩くことになり、体幹の支持機能に悪影響をおよぼします。

尖足では、走れない、痛みがあり、長時間歩行後や冬場では、痛みが増強する、跛行、

(3)治療

懸念されるのは、足関節が内反位にあるため、外果の捻挫が多発して、近い将来、変形性足関節症に発展する可能性が高いことです。
現在、治療先は、睡眠時以外は、短下肢装具の装用を指示して矯正しようとしています。

短下肢装具
短下肢装具

以前の経験では、左足関節部の粉砕骨折により外傷性内反足をきたしたものです。
靴は、靴紐でしっかりと固定できるもの、捻挫防止のためには、足関節を保持するミドルカットないしハイカットの靴と、靴底には、硬性のアーチサポートの装用が指示されました。

硬性アーチサポート
硬性アーチサポート

左足関節の機能障害で10級11号、外傷性内反足が12級相当、併合9級が認定されました。
今回は、睡眠時以外の16時間について短下肢装具の装用が指示されています。
これで矯正できるとの見通しはありません。
外傷性内反足で、10級相当を目標にサポートを続けます。

(4)後遺障害のポイント

1)外傷性内反足による後遺障害は、等級認定表に定めがありません。
足部の後遺障害は、足趾の欠損もしくは用廃、足関節の機能障害が規定されているだけです。
本件では、足関節に運動制限は認められていません。
したがって、政令別表の規定により、他の後遺障害に準じて等級の認定を求めることになります。

2)となれば、外傷性内反足により、日常の生活でどのような支障が認められるのか?
これらを丹念に立証していかなければなりません。
ポイントは、短下肢装具による矯正です。
16時間も装用しなければならず、全力疾走は不可、僅かな距離の小走りがやっとの状態です。
しかし、頑張って歩行訓練を続けないと、筋力は目に見えて低下していきます。

私は、外傷性内反足で歩行に支障があり、固定装具の装着を常時、必要としない程度のものであれば、10級相当の認定が妥当であると考えています。
新たな立証に燃えています。

(5)医学論文の紹介

整形外科と災害外科47の、「外傷性足部尖足変形の治療成績」 から引用します。

①概要

仕事中に、鉄柱が右大腿に倒れて受傷、傷病名は、右大腿骨開放粉砕骨折、右膝窩動脈損傷、右膝窩動脈は、血管吻合、創外固定、植皮を施行される。
その後、血管造影検査で、膝窩動脈に80%の狭窄を認め、PTAを施行される。
受傷後3カ月で、髄内釘による大腿骨骨接合術施行され、術後LLB装具を使用するも、右外傷後麻痺性尖足、大腿短縮を認め、受傷後9カ月目に紹介転院となる。

※PTA 
血管の狭窄に対して、ピッグテールカテーテルを留置する治療法、
※LLB装具
長下肢装具long leg brace

転院時、右大腿の短縮と右麻痺性尖足変形を認める。
MMTにて、右前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋の筋力は、0であった。
X線所見では、右足関節脛踵角110°右足部Hibbs角116°右足部Meary角27°右足部MTB角79° であり、内反凹尖足変形を認めた。

②治療

この症例に対し、右足関節、距骨関節、踵骨l関節の3関節固定術を施行した。
踵立方関節を切除し、距骨下関節は懊状に切除した。
骨萎縮を認め、距骨と踵骨,距骨と立方骨をステープル2本にて固定した。
足底よりK-wire2本を刺入、更に1本を距舟間の固定のため刺入した。
術後6週間ギプスによる外固定を施行し、その後、脚長差を補正したSLB装具にて荷重開始した。

術後7ヵ月にて尖足の矯正は良好であるが、患者は右大腿短縮による生活上の支障を訴え、右下腿脚延長目的にて入院となる。現状、右大腿骨にて4.7cmの下肢短縮を認める。
右大腿骨は変形癒合しており、髄内釘抜去により骨折する可能性が高く、また受傷時、膝窩動脈損傷があり、大腿骨での骨延長は危険であると判断し、右下腿にイリザロフ骨延長器を設置した。
術後1週より1mm/日にて骨延長を開始すると同時に尖足変形防止のため、前足部背屈を開始した。現在約6cmの骨延長を得ており、尖足変形もみられておらず骨癒合待機中である。

③結び

距骨下関節の高度変形が存在し、そのために足部痛や尖足変形を生じているときは、足関節固定術の適応となる。また尖足変形を矯正することにより下肢短縮が著明となることがあり、2~3cmの短縮であれば足底挿板にて矯正可能であるが、5cm近い短縮であれば跛行も著しく、両股関節以下、両下肢への悪影響が懸念され、脚延長術を施行すべきであると考える。

外傷性足部尖足変形は、足部及び足関節部への直接外力によるものが圧倒的であるが、コンパートメント症候群によるもの、下腿骨折加療中の固縮、火傷後、大腿骨骨折後の腓骨神経麻痺によるものが報告されています。

④NPOジコイチのコメント

本件は、労災事故ですが、被害者は、右大腿骨開放粉砕骨折、右膝窩動脈損傷の重症です。
右膝窩動脈は端々縫合でつながり、膝上切断は免れましたが、膝窩動脈に80%の狭窄が認められ、PTAカテーテルが留置されています。

右大腿骨は開放性粉砕骨折であり、髄内釘による大腿骨骨接合術が行われたのですが、変形癒合しています。骨短縮と右外傷後麻痺性尖足の治療目的に、受傷後9カ月目に転院しています。

この症例に対し、右足関節、距骨関節、踵骨l関節の3関節固定術が行われました。
術後6週間ギプスによる外固定を施行し、その後、脚長差を補正したSLB装具にて荷重を開始、右外傷後麻痺性尖足は矯正されていますが、右大腿骨では、4.7cmの短縮が認められています。

この段階で症状固定とすれば、右大腿骨の変形を無視しても、右足関節の用廃で8弓7号、1下肢の3cm以上の短縮で10級8号、併合7級となります。

被害者は、下腿骨にイリザロフを設置して骨延長術を受けており、仮骨形成では6cmの骨延長が実現できたので、短縮による10級8号はなくなりました。

この症例で驚かされたのは、足関節に傷病名がないことです。
右大腿骨開放粉砕骨折後の骨短縮と変形骨癒合、そして右膝窩動脈損傷後の血流障害によって、負傷をしていない右足関節と右足部に右外傷後麻痺性尖足を発症したことです。

重症例の後遺障害では、受傷部位にこだわることなく、俯瞰的に全体を見ていかなくてはなりません。