1)病態・症状
ナルコレプシーとは、日中、突如として眠り込む、寝落ちする睡眠発作です。
日常生活において、突如、耐え難い睡魔に襲われ、椅子に座っていても、突如、眠り込んでしまう、ときには、金縛りのような状態で、幻覚などの症状が出現することもあります。
自動車を運転中に、この睡眠発作が起こると重大事故の原因となり、大変危険です。
頭部外傷を原因として発症するナルコレプシーを外傷性ナルコレプシーと言います。
高次脳機能障害の症状の1つとして、易疲労性(いひろうせい)があります。
肉体的な疲労ではなく、脳が疲れやすくなって、注意力や集中力が低下すると考えられているのですが、その代表的なものが、外傷性ナルコレプシーです。
無料相談会では、今まで話していた被害者が、なんの前触れもなく眠り込んでしまうことがあります。
ナルコレプシーの原因は、オレキシンという神経伝達物質、神経ペプチドが不足していることです。
オレキシンは、視床下部から分泌され、覚醒、起きている状態を維持する働きがあります。
頭部外傷により、視床下部のオレキシンを作る神経細胞が損傷、破壊されると、外傷性ナルコレプシーを発症すると考えられているのです。
2)治療
治療は、中枢神経刺激薬といわれる目を醒ます薬が処方される薬物療法となります。
治療に使用されている薬は、リタリン、ベタナミン、モディオダールの3種類で、共通してドーパミン神経伝達系を増強して、脳を賦活化する作用を持っています。
3)後遺障害のポイント
1)治療先は、医大系病院の精神神経科、神経内科となりますが、ナルコレプシーでは、専門医が少ないので、事前に、ネット検索で調べてから受診してください。
2)以下の3つの検査で確定診断されますが、治療先で1泊2日を過ごすことになります。
①PSG、終夜睡眠ポリグラフ検査
夜間の睡眠中に何らかの異常がないかどうかを確認する検査です。
②MSLT、睡眠潜時反復検査
日中の眠気の強さを測定するもので、2時間ごとに1日4回、30分づつ、脳波上、つまり医学的に眠気の強さや入眠を測定する検査です。
PSG検査において、睡眠時無呼吸症候群ではなく、痙攣もない、眠りの深さは十分で、入眠も早いとなれば、病気は否定され、その上、夜間の不眠が原因でないこと、睡眠の持続力不足もなく、心理的要因でもないなど異常が認められず、MSLT検査で、日中の睡眠発作が立証されていれば、外傷性ナルコレプシーが確定診断されます。
③補助検査として、髄液オレキシン計測があります。
脳脊髄液を採取し、オレキシン量を測定し、オレキシンの免疫活性値が、健常者で得られる値の3分の1以下、または110pg/ml以下で、上記の①②を満たせば、外傷性ナルコレプシーと診断されます。
3)投薬による治療は、発作を止め、回数を減らしているに過ぎず、根本的な治療ではありません。
したがって、投薬をずっと続ける必要があり、このことが後遺障害につながります。
高次脳機能障害で、症状が外傷性ナルコレプシーに限定されることはありませんが、仮に単体の症状として後遺障害を判断するのであれば、12級13号が認定されます。