

(1)病態
成長期の子ども、(女子では15歳、男子では17歳頃まで)に特有な骨折です。
足関節の脛骨および腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心に成長していきます。
骨端線損傷は、骨の骨端線部分およびその周囲に起こる骨折のことです。
ここでは、腓骨の遠位端線損傷を中心に解説します。
成長期では、どんどん骨組織が発達します。
下腿骨の脛骨と腓骨が、どんどん伸びていくのです。
この時期に、足の捻挫などにより骨端線、成長軟骨部分を損傷することがあります。
足関節を構成する脛骨および腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心として、成長と共に成人の骨へと変化していくのですが、骨端部分が成人に近い状態にまで完成されても、脛骨と腓骨の成長が終了するまでは、骨幹と骨端の間に骨端線が残っています。
骨端線部分は完成された骨よりも当然に、強度が弱く、外力による影響を受けやすい部分であることから、強い外力の働いた捻挫や衝撃で骨端線損傷を起こしやすいのです。
損傷の程度が軽いものでは、XP検査でも分かりにくく、捻挫と診断されるようなものから、骨端線からきれいに骨折している重傷例まで、いくつかの種類に分かれます。
(2)症状
くるぶし部分の腫れ、痛み、薄紫色の皮下出血、
(3)治療
1方向ではなく、角度を変えてのXP撮影、靱帯損傷を見るにはエコー検査などで診断されています。
治療は、ほとんどが、3、4週間のギプス固定療法となります。
(4)後遺障害のポイント
1)交通事故外傷では、癒合で完治と断定することはできません。
成長の著しい幼児~10代は、爆発的に骨組織が伸長するので、容易に癒合します。
しかし、その後、骨折しなかった方の足と比べ、転位や骨成長の左右差、軟骨の不具合による関節裂隙の左右差などが残存することがあります。
これが、骨短縮、可動域制限、疼痛などにつながれば後遺障害の対象となります。
2)骨端線損傷で重要なことは、骨端線の閉鎖と、変形治癒の可能性の診断です。
骨端線の閉鎖では、脛骨や腓骨のどちらか一方、もしくは両方の成長がストップすることで、例えば、脛骨の骨端線だけが閉鎖し、腓骨の骨端線が成長を続けると、成長に伴って足関節が内反変形を起こすことになります。また、脛骨と腓骨の両方の骨端線が閉鎖したときは、足関節の変形は防げても、下腿の成長が止まるため、左右の脚長差、短縮障害を残します。
また、骨折片の転位や骨折線が関節軟骨におよぶと変形治癒を残します。
3)経験則では、骨端線が刺激を受け過成長した結果、健側に比して2cmも伸びた例があります。
3年間、経過観察を行い、症状固定として、健側の短縮で、被害者請求を行いました。
結果が出るまでに6カ月を要しましたが、13級8号が認定されました。
3)先に外傷性内反足を解説した被害者、10歳の女子は、右腓骨遠位端部の開放性骨折と右腓骨遠位端線損傷が診断されており、外傷性内反足の立証も行いますが、右腓骨遠位端線損傷に伴う短縮障害も立証することになります。
4)骨端線損傷のパターン
①脛骨の骨端線を横断するように骨端線が離開したもの、
②高所より落下、足底方向から強い衝撃を受けたとき、成長板の圧迫骨折となったもの、
③脛骨に上方から外力が作用したとき、足関節の強い捻挫で脛骨々端核が垂直や斜め骨折、
④脛骨々端の斜骨折、腓骨の斜骨折
⑤脛骨々端の内側を斜骨折、腓骨の骨端線で屈曲骨折したもの、
5)専門医は、子どもには捻挫はないと言います。
子供では、強い靱帯が切れることはなく、軟らかい軟骨や骨端線での離開骨折となるからです。
XPでは確認することの困難な、靱帯の付着部の軟骨をつけての骨折で、その軟骨片は、成長期を過ぎると、骨化し、小さな米粒大の遊離骨片としてXPで確認できるようになります。
通常は、問題になるものではありませんが、激しいスポーツでは、痛みの原因になることがあり、摘出することが必要になるかもしれません。
交通事故では、将来のある子どもが、腓骨遠位骨端線損傷などで不利益を被ることが予想されます。
捻挫として放置されないように、適切な治療を受けること、万全の補償を得ておく必要があります。