(1)病態
肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっている頼りなげなもので、関節部には、骨の連結がなく、大きな可動域を有しているのですが、そのことで脱臼しやすい構造となっています。
10・20代の若年者の外傷性肩関節脱臼では、反復性を予想しておかなければなりません。
脱臼は、ほとんどが徒手的に整復されますが、若年者では、これを繰り返す、つまり反復性に移行する確率が高いことが注目されています。
(2)症状
肩関節の脱臼に同じで、肩に激痛が走るほか、脱臼で損傷を受けた部位に応じて肩関節が固定されるため肩を動かすことができなくなります。
反復性肩関節脱臼では、関節窩という上腕骨の受け皿につく靭帯が剥がれるバンカート損傷が生じ、
健側の肩は靭帯が緊張して、肩が受け皿から脱臼しないように働きますが、バンカート損傷が生じると靭帯は緊張しなくなってしまうのです。
(3)治療
肩関節は、肩甲骨面に吸盤の役割をしている2つの関節唇という軟骨に、靭帯と関節の袋である関節包が付着し、これが上腕骨頭を覆うことによって安定化しています。
脱臼時に関節唇が肩甲骨面から剝離し、これが治癒しないで、再び脱臼するような力が加わると脱臼を繰り返すことになるのです。極端な例では、背伸びの運動でも肩関節が外れるのです。
保存的には、脱臼予防装具の装用、脱臼しない肩の位置などが、リハビリで指導されます。
肩周囲の筋肉を強化すること、体幹の強化を行われ、全身の機能を高めるのですが、絶対的な治療とはいえません。根治を目指すなら、鏡視下バンカート修復術が実施されます。
実績のある専門医を探さなければなりません。
(4)後遺障害のポイント
鏡視下バンカート修復術が先か、症状固定を先行すべきか?
反復性肩関節脱臼が認められるとき、Giroj調査事務所は、12級6号を認定しています。
したがって、NPOジコイチは症状固定を先行すべきと考えています。
近年、整形外科の肩関節外来では、関節鏡術がめざましく発展しており、反復性肩関節脱臼に対しては、モニターを見ながら関節内を十分に観察、剥がれた関節唇を肩甲骨面の元の位置に縫い付けることで、安定した成績を積み上げています。
鏡視下手術は、3カ所について5~7mmの切開であり、傷跡もほとんど残りません。
術後の入院も、2、3泊で、術後感染のリスクも、ほとんどありません。
であれば、症状固定を選択、後遺障害等級を確定、弁護士による損害賠償交渉が完了してから、健康保険適用で治癒を目指すことになります。
逆のパターンでは、後遺障害は全否定されます。