(5)前脊髄動脈症候群

1)病態

脊髄の前側部分の酸素や栄養を供給する前脊髄動脈の血流が低下し、麻痺などの症状が起こる傷病のことで、血管が詰まって虚血を起こしている状況であり、脊髄梗塞とも呼ばれています。
主な原因として、動脈硬化、大動脈解離や大動脈の手術の合併症が挙げられており、外傷性も否定されていませんが、私は、1例も経験したことがありません。

2)症状

運動や感覚の麻痺といった症状が急速に進行し、手足の運動麻痺、温痛覚の障害、膀胱直腸障害を訴えます。症状は両側に出現することもありますが、通常は左右差があり、梗塞を起こした脊髄の部位によって、症状の広がりは変わります。上位頚髄で障害が起こると、呼吸をコントロールする横隔神経の働きが弱まり、呼吸障害も引き起こします。

3)治療

前脊髄動脈症候群と確定診断されたときは、梗塞を起こしている血管部分を、顕微鏡で確認しながら、慎重に除去する手術が実施されています。
対症療法としては、副腎皮質ステロイド剤の投与、高浸透圧溶液の投与などがされ、脊髄の浮腫を取るために、抗浮腫剤も投与されることがあります。
排尿に関する問題の対策としては、尿道カテーテルを使用します。

4)後遺障害のポイント

外傷性のときは、後遺障害は、残した脊髄症状により、等級が判断されることになります。