(70)足根骨 二分靱帯損傷(にぶんじんたいそんしょう)

二分靱帯損傷

(1)病態

足関節捻挫は、腓骨と脛骨そして距骨が接する青○印部分で発生しています。
ところが、足関節捻挫でも、直近の別の部位を捻挫することがあるのです。

中でも、イラストのオレンジ色で示したY字型の二分靱帯が損傷することが多いのです。
二分靭帯は、かかとを構成する踵骨(しょうこつ)、立方骨と舟状骨を固く締結する役目です。
爪先立ちのような姿勢で、内返し捻挫となったとき、二分靱帯は損傷や断裂することがあります。
バレーボールでジャンプ、着地で内返し捻挫となると、ほぼ確実に二分靱帯は損傷を受けるのです。

(2)症状

踵骨前方と舟状骨との間に圧痛や腫れ、皮下出血、荷重歩行時の疼痛などが発現します。
足関節の内反や底屈動作を行うと疼痛が誘発・増強されます。

(3)治療

たかが捻挫と思っていても、二分靭帯が付着部分の骨、踵骨、立方骨、舟状骨で立方骨ごと剥がれることもあり、専門医であれば、○○骨剥離骨折もしくは裂離骨折と診断します。
診断は、XP検査が中心ですが、小さな剥離骨折では、CTが効果的です。
二分靱帯損傷で、損傷部が腫れ上がっているときは、足関節の捻挫と見分けがつきません。
しかし、専門医が丁寧に触診すれば、足関節と二分靱帯は部位が違うので鑑別ができるのです。

治療としては、最初はギプス固定、次に包帯固定に切り替えて2~3週間もすれば、腫脹や痛みは緩和され、後遺障害を残すことなく治癒します。

剥離骨折の治療は約4~6週のギプス固定となりますが、骨片が大きければ固定術が選択されます。
しかし、ここでのテーマは、足関節捻挫と診断され、パップ剤のみで放置されていることです。
MRIで二分靱帯の損傷や断裂が確認されたときは、歩行時の疼痛が後遺障害の対象になります。

(4)後遺障害のポイント

1)受傷から2カ月以内の相談であれば、医大系の整形外科、スポーツ外来の専門医を紹介して、治癒することを目標とします。

2)しかし、受傷から6カ月が経過しているときは、症状固定とし、痛みの神経症状で14級9号もしくは12級13号の獲得を目指します。
足の捻挫で6カ月以上の治療を認め、治療費を負担してくれる損保はありません。
本来であれば、治癒させることが、当然の目標ですが、6カ月を経過していれば、症状固定しか選択できないのです。

3)専門医であれば、陳旧性、古傷化に対して、ステロイド剤や局所麻酔剤などの注射による保存療法を選択し、それでも疼痛が改善しないときは、裂離した骨片の摘出術が施行されます。
専門医の治療は、本件の損害賠償が決着してから、健保適用で行います。