(15)上腕骨遠位端骨折(じょうわんこつえんいたんこっせつ)

上腕骨遠位端骨折

上腕骨の遠位端部は、前腕の尺骨と橈骨とで肘関節を形成しています。
上腕骨遠位端骨折では、骨折の部位で、顆上骨折と外顆骨折に分類されます。

上腕骨遠位端骨折は、骨癒合の遷延化、偽関節、肘関節の拘縮をきたすことが多く、手術であっても、固定性獲得が困難な難治性骨折として知られています。
治療の原則は、①正しい整復位の実現、②強固な固定性、③早期リハビリの開始といわれています。

(1)上腕骨顆上骨折 (じょうわんこつかじょうこっせつ)

上腕骨顆上骨折

(1)病態

上腕骨顆上骨折は、上腕骨の遠位端であっても、関節包の外で生じるもので、上腕骨外顆骨折のように、肘関節内の骨折ではありません。また、上腕骨顆上骨折は、子どもに多い骨折でもあります。

交通事故では、自転車やバイクで転倒したときの打撃、高所からの転落で多発しています。
ネットに掲載されている医学論文では、スノーボード中の転倒によるものも報告されています。

(2)症状

肘関節の痛みや腫れ、可動域および運動の制限が主たる症状で、単純XPで診断できますが、亀裂骨折では発見できないこともあり、やはり、CTが決め手となります。

(3)治療

従来は、転位がなく、あっても僅かなものは、ギプスや装具による保存的治療でしたが、時代は変わり、固定術で関節面を正確に戻し、プレートやスクリューで固定し、術後、早期から関節を動かすことで、骨癒合不良や肘関節の拘縮を防ぐ積極的な治療が選択されています。
高齢者であっても、骨粗鬆症などで骨が脆く、プレートなどでしっかり骨折を固定しておかないと、簡単にズレてしまうことが予想されるので、固定術が行われています。

ところが、被害者が小学校の低学年では、現在でも、保存的療法が主流です。
ギプス固定法は、徒手整復の段階で、血管や神経を痛めつけることがあり、血流のうっ滞を防止する必要から、治療先では、垂直牽引を行っています。

垂直牽引

上腕骨顆上骨折で、深刻な合併症は、フォルクマン拘縮、正中神経麻痺・尺骨神経麻痺です。
この前の上腕骨骨幹部骨折で解説した橈骨神経麻痺は、顆上骨折では、1例も経験していません。

固定術が実施され、術後2週間から、痛みを堪えつつ、自分の筋力で肘関節を曲げ伸ばしするリハビリが開始されたものは、肘関節に大きな可動域制限を残しません。

(4)後遺障害のポイント

顆上骨折と外顆骨折をまとめて解説します。

(2)上腕骨外顆骨折 (じょうわんこつがいかこっせつ)

(1)病態

上腕骨外顆骨折は、上腕骨の遠位端の関節包内側で発生する関節内骨折ですから、顆上骨折よりは重症例となります。交通事故では、自転車に乗り始めた頃の小学校低学年に多いのが特徴です。

(2)症状

肘関節の痛みや腫れ、可動域および運動の制限が主な症状で、単純XP撮影で診断ができますが、正しい整復を確保するには、CTが欠かせません。

(2)治療

現在では、ほとんどで固定術が行われ、キルシュナー鋼線やスクリューなどで、強固に内固定されていいるのですが、やはり、小学校低学年では、保存療法が主流です。

外顆骨には、手指を伸ばす、手のひらを上に向ける回外筋が付着しており、受傷直後のX線写真では転位が見られないときでも、ギプス固定中に骨片の転位が進行することがあります。
転位が放置されたままでは、固定を続けても骨癒合は得られません。
成長につれて外反肘となり、運動制限と神経麻痺の原因になります。

※外反肘(がいはんちゅう)
腕を伸ばすと、肘が異常に外側に曲がる変形障害のこと、

2018年でも、子どもの外反肘の相談が2例ありました。

(4)上腕骨遠位端骨折の後遺障害のポイント

1)無料相談会では、持参されたXP、CT画像をジックリと検証して、今後の方針を立てています。
骨折が肘関節におよんでいないものは、一安心で、その後の骨癒合状況と肘関節の可動域をフォローしつつ、症状固定時期を決定し、12級6号の獲得を目指しますが、内固定術を受けたものは、治療成績が良好で、後遺障害を残さないことが多くなっています。

2)上腕骨顆上骨折は、小学校1、2年生の子どもに多発しています。
顆上骨折であれば、関節内骨折ではなく成長軟骨板にかかる骨折、つまり骨端離開でもありません。
フォルクマン拘縮さえ排除できれば、後遺障害を残すことなく治癒するのが一般的です。
多くは、子どもの飛び出しが原因であり、20:80、10:90、過失割合を巡って争いが生じています。

3)顆上骨折、外顆骨折でオペが実施されたときは、骨癒合状況をチェック、いつ症状固定とするかが、後遺障害のポイントになります。
しかし、被害者が、子どもさんでは、ほとんどが、後遺障害を残すことなく、改善が得られています。

4)子ども以外で、徒手整復、ギプス固定の保存的治療が行われたものでは、受傷から6カ月を経過した段階では、肘関節に12級6号レベルの可動域制限を残すことが一般的です。
このときの注意点ですが、多くの被害者で、屈曲の制限は僅かですが、曲げることよりも、伸展で真っ直ぐ伸ばすことができないことが見られるのです。

可動域測定の様子

上記のイラストでは、肘は真っ直ぐに伸びきっており、0°と思われますが、経験則では、真っ直ぐに伸ばすことができなくて、浅い、くの字に変形しているのです。
このときの計測は、必ずマイナス表示でお願いしなければなりません。覚えておいてください。

等級 主要運動
屈曲 伸展 合計
正常値 145 5 150
8級6号 15 5 20
10級10号 75 5 80
12級6号 110 5 115

肘関節に参考運動はありません。