(25)モンテジア骨折

モンテジア骨折

(1)病態

尺骨の骨幹部骨折と橈骨頭脱臼が同時に発生したものをモンテジア骨折といいます。
事故直後は、尺骨の骨折による痛みが強く、肘関節での橈骨頭脱臼が見逃されることがあります。
バイク・自転車対自動車の事故では、跳ね飛ばされ、手をついて転倒したたことで、労災事故では、高所からの転落で発生しています。
成人よりも、小学校低学年の子どもに、よく見られる骨折です。

(2)症状

強い痛みと骨折部の腫れが出現します。尺骨の骨幹部骨折だけでは、骨折部に変形は生じません。

(3)治療

治療は、子どもでは、XP検査で、骨折を確認し、徒手整復と4~6週間のギプス固定を行います。
徒手整復で尺骨骨折のズレを直してやれば、橈骨頭の脱臼も通常は整復されます。
成人では、骨折が不安定なこともあり、プレート固定による骨接合術が行われています。

橈骨頭の前方脱臼では、前方を走行する後骨間神経を絞扼・圧迫することにより、指を伸ばせなくなり、下垂指という変形をきたすことがあります。
橈骨頭が整復されると、通常は、神経麻痺も時間とともに自然回復します。

下垂指

下垂指

(4)後遺障害のポイント

1)モンテジア骨折が、受傷直後に確定診断され、適切な治療が行われれば、治療成績は良好で、ほとんど後遺障害を残すことなく治癒しています。

2)ところが、最大の問題点は、橈骨頭の脱臼を見逃してしまうことです。
モンテジア骨折では、尺骨の骨折だけが注目され、橈骨頭の脱臼が見逃されることが多いのです。
無料相談会でも、尺骨の骨癒合は完成しているのに、橈骨頭の脱臼が放置されていることで、
①肘関節の可動域制限、②運動痛、③肘の変形が認められた複数例を経験しています。

3)陳旧性の橈骨頭脱臼では、尺骨の過矯正骨切りオペを実施して、橈骨頭の整復が行われます。
橈骨頭の変形が著しいときは、橈骨頭切除術が実施されています。

4)となると、どの時点で症状固定とするかを考えることになります。
NPOジコイチは、現時点で症状固定、後遺障害を申請し、損害賠償が一段落したところで、入院、再手術を提案しています。

(5)NPOジコイチの経験則

昨年の大阪無料相談会において、57歳女性、兼業主婦のモンテジア骨折で非該当を経験しています。
もちろん、傷病名は、右尺骨の骨幹部骨折で、モンテジア骨折とは記載されていません。
自賠責保険の認定通知書には、「右尺骨々折は、良好に骨癒合が得られており、変形もなく、右肘関節に高度な可動域制限を残すことは考えられない。」 そのように説明されています。

しかし、事故直後のXPでは、右肘の橈骨頭は明らかに脱臼しています。
症状固定段階のXPでは、素人目にも分かる亜脱臼が確認できています。
本件の事前認定では、XPを提出しているのに、脱臼と亜脱臼は完璧に無視されているのです。
3DCTで亜脱臼を明確にして、自賠・共済紛争処理機構に対して紛争処理の申立を行い、モンテジア骨折であることを念押しした結果、右肘の機能障害で12級6号が認定されました。

大阪では、スポーツ整形外科で名の知れた治療先であったので、ここでも見逃すことがあるのかと大変、驚きました。