1)病態
温痛覚の知覚神経は脊髄に入り、そのまま同じレベルの脊髄を反対側まで到達し、そして脳まで上行し、ヒトは温痛覚を感じるのですが、深部感覚の知覚神経は脊髄に入ってすぐ上行し、脳まで到達し、深部感覚を感じています。そして、運動神経は脳で命令が発せられた後、走行が延髄で反対側に移動し、そこから脊髄を下行して四肢に到達し、運動を引き起こします。
頭がウニになりそうな解説ですが、こんなことは覚える必要はありません。
難しい理屈は、専門医にお任せすることにして、脊髄の右もしくは左半分が損傷したと考えてください。
脊髄の半側と言っても、脊髄全体の半分ではなく、あるレベルにおける脊髄の半分だけの障害です。
例えば、上位胸椎レベルの脊髄の右側だけが障害されると、右側の下肢の深部知覚と左側の下肢の温痛覚が上行できなくなり、左脳からの右下肢を動かすための命令は、下行できなくなります。
このとき、右の下肢の温痛覚は通常通り上行できますので、正常に感じます。
脊髄の右半分 | 脊髄の左半分 |
---|---|
左側の温度覚、痛覚 | 右側の温度覚、痛覚 |
右側の深部覚、触圧覚 | 左側の深部覚、触圧覚 |
右側の運動 | 左側の運動 |
2)症状
脊髄の片側だけが障害され、片側の下肢の運動麻痺と反対側の下肢の温度覚・痛覚、触覚の低下が組み合わされて起こるものをブラウン・セカール症候群といいます。
いずれの場合も、損なわれた脊髄の部位に強い痛みを伴います。
医師国家試験の学習では、ブラウン・セガール症候群のことを、ブラのあつくて痛いのには反対だ?
こんな語呂合わせで覚えるように指導しています。
ブラウン・セカールは、温痛覚のみ反対側で、同側では、触・圧・運動覚などの障害を受けるからです。
3)後遺障害のポイント
1)腰椎、L2以上の脊髄の半側のみの損傷で、1下肢の中程度の単麻痺が生じたために、杖または硬性装具なしには階段を昇ることができないとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるものは、7級4号が認定されます。
2)腰椎、L2以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより、1下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度も遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるものは、9級10号が認定されます。
障害を受けたレベルごとに、等級を精査していくことになります。