1)病態
先にも説明していますが、頚椎捻挫では、末梢神経障害が後遺障害の対象です。
左右いずれかの頚部・肩・上肢の重だるさ感、軽い手指のしびれ感の症状が後遺障害となるのです。
そして、これらの症状は、整形外科のリハビリ通院で対応されています。
ところが、頚椎捻挫では、不眠が続くことによる頭痛が代表的ですが、重症例では、倦怠感、疲労感、熱感、脱力感、眩暈、耳鳴り、難聴、眼精疲労、流涙、視力調節障害、頭重感、動悸、息切れ、四肢冷感、食欲不振、胃重感、悪心、腹痛、下痢、便秘などの不定愁訴に、一気に襲われることがあります。
深酒もしていないのに、朝起きたら、強烈な二日酔いになっていた? そんな症状です。
頚椎捻挫に随伴するこれらの不定愁訴は、1つにまとめられ、バレ・リュー症候群と呼ばれています。
緑色の交感神経節が損傷することにより、バレ・リュー症候群を発症します。
2)治療
バレ・リュー症候群の諸症状は、麻酔科医のペインクリニックに通院、交感神経ブロック療法を続ければ、多くは、2カ月程度で改善が得られています。
改善が得られるのですから、バレ・リュー症候群は、後遺障害の対象ではありません。
頭部外傷Ⅱ型以上を原因とする頭痛は、後遺障害の対象ですが、頚椎捻挫に伴うバレ・リュー症候群の頭痛であれば、対象からは除外されています。
整形外科で、頭痛、めまい、耳鳴りを訴えても、専門外ですから、スルーされます。
それでも訴えを続けると、賠償神経症=プシコと見られ、主治医から毛嫌いされます。
こんなとき、整形外科がペインクリニックを紹介してくれれば、問題なく解決するのですが、40年を経過した今も、整形外科とペインクリニックのスムースな連携はできていないのです。
そうなると、整形外科に通院できなくなり、藁をも掴む思いで整骨院に転院する被害者も出てきます。
治療とは、医師免許を有し、診断権が与えられた医師のみに許されている医療行為であって、整骨院や鍼灸院となると、治療ではなく、医療類似行為である施術を受けたことになります。
6カ月の治療を受け、残った症状について後遺障害を申請するという本線からは外れることになり、症状の改善も得られず、後遺障害も否定される交通事故難民になってしまうのです。
交通事故難民になる前に、ペインクリニックを受診し、バレ・リューから立ち直るのです。
整形外科との並行通院となりますが、ペインクリニックは2週間に1回の受診です。