(32)ギヨン菅症候群

ギヨン菅症候群

(1)病態

尺骨神経が、ギヨン管というトンネルの中で絞扼・圧迫され、神経麻痺を発症している状態です。
尺骨神経は、頚椎から上腕の内側を走行し、肘の内側を下降し、手首周辺で、有鈎骨の鈎と豆状骨で構成されるギオン管の中を通過します。

交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。
自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。
また、有鈎骨は、環指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨ですが、この有鈎骨の骨折では、ギオン管症候群を発症します。

手のひら側のCT画像
手のひら側のCT画像ですが、突起=鉤が骨折しているのが確認できます。

(2)症状

尺骨神経がギヨン菅で圧迫されたときは、手首から先の小指のしびれと感覚障害を生じます。
放置しておくと、手の骨間筋が筋萎縮し、鷲手変形が生じます。
神経伝達速度検査によって病変部位の特定が可能です。
これらが不可能なものは腱移植術をおこない、装具の装用で機能を補完することになります。
専門医の執刀でなければ、なりません。

(3)治療

手関節XP、CT、MRI、尺骨神経の伝達速度検査が行われます。
尺骨神経管部の圧痛やチネルサイン、環指尺側と小指の掌側のしびれと感覚障害、手内在筋萎縮と筋力低下、環指と小指の鉤爪変形があり、尺骨神経伝達速度検査にて異常を認めることで、ギヨン菅症候群の確定診断がなされます。

最初は、保存的に、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、ビタミン12の服用、スプリントの装着で安静加療が指示され、リハビリでは、低周波電気刺激療法やマッサージ、レーザー光線の照射が行われますが、効果が得られないものは神経剥離術、神経移行術がおこなわれます。

スプリント
スプリント

(4)後遺障害のポイント

後段の尺骨神経麻痺で、まとめて解説しています。