5) 車対人の事故 ゴルフ場における歩行者とゴルフカートとの衝突

ゴルフ場における歩行者とゴルフカートとの衝突

大阪地裁判決H18-7-7  平成16年(ワ)12510号  0:100
ゴルフ場におけるゴルフカートと歩行者の衝突事故について、歩行者には後方から進行してくるカートへの注意義務はなく、歩行者用道路を歩行中の歩行者が優先されるべきであるとして、ゴルフカートに100%の過失を認めています。

滋賀県信楽町のビッグワンゴルフ倶楽部で発生した事故ですが、被害者がスタート地点に向かって歩行者用道路を歩行中に、ゴルフカート用の道路と交差する地点で、カートの衝突を受けたものです。
このカートは、カート道に埋め込まれた電磁誘導線に沿って走行する自動運転であり、リモコン、ボタンで操作、前進のみの運行で後退はできないタイプです。

被害者は、ゴルフ場に対して、
①事故現場がカートの走行する道路と歩行者用道路が交差する場所であったこと
②交差点でカートが自動的に一時停止する装置を設置すべきであったこと
③歩行者に対しては、カート専用道が交差していることを警告する設備を設置すべきであったこと
④初めての利用者に対しては、キャディが危険の説明や警告を行うべきであったのに、置き去りにしてスタート地点に先行したこと、
等々により、施設の管理責任に関して瑕疵が認められるとして、ゴルフ場を訴え、同時に、加害者は、後部座席の同乗者を振り返り、大声で談笑しながらカートを運転しており、衝突によって初めて被害者に気づき停止ボタンを押したもので、前方不注視による漫然運転の過失が認められるとして加害者を訴えています。

裁判所は、事故現場は見通しも良く、白線が引かれているため、歩行者用道路の歩行者と衝突する危険が生じても、前方を注視していれば、事前に危険を察知してブレーキペダルを踏んで停止する時間的余裕は十分にあったと認められると指摘、さらに、この事故は、加害者が前方を全く注視せずカートを走行させ、直前まで被害者との衝突の危険が生じたことに気づかなかったことが最大の原因であり、カート走行中に、進路の前方を確認するという最も基本的な義務を怠るようなときを想定して措置を施すべき義務は認められないと判示、事故現場に自動停止装置を設置、本件でカート道を示す白線を設置する以上に、歩行者用道路を歩く歩行者に対してカート道が交差している旨を警告する設備を設置していなかったとしても、ゴルフ場の施設が通常有すべき安全性を欠いていたとは認められず、キャディが同伴して危険の説明や警告を行うべきであったとも認められず、ゴルフ場が民法717条、占有・所有者責任を負うことはないとして、ゴルフ場の責任;を認めていません。

被害者の過失については、後方から進行してくる車両の動静を注視する義務は歩行者にはないと指摘、事故現場はカート道が歩行者用道路を横切る形になっていることや歩行者を保護すべき要請は一般の道路と異ならないことに照らせば、歩行者用道路を歩行する歩行者がカートに優先すると解すべきであること、後部座席の友人と談笑しカートの進路前方を見ていないなど加害者の過失が著しいことを考慮すれば、被害者に過失があったとは認められないと判断しています。

NPOジコイチのコメント

被害者は、左足関節内顆骨折で固定術と腸骨からの骨移植術を受け、14級9号の神経症状が認定され、結果、512万4763円+遅延利息の支払いを命じています。
入院中の特別室の使用料、入院中の家族のタクシー代は、「欲をかくな?」 で却下されています。
なんども繰り返しますが、裁判の判決は、いつでも、極めて常識的です。
本件事故は、ゴルファー保険で対応されます。
この裁判では、損保が登場しておらず、加害者の個人払いとなっています。