Q13 出勤途中の寄り道と通勤災害

弊社従業員の田中さんは夫婦共稼ぎをしています。
昨日、田中さんは妻を会社に送り届けた後の通勤途上で、交通事故受傷しました。
田中さんの自宅を起点にすると、彼の妻の勤務先は弊社を通り過ぎて約1km先となります。
つまり回り道をして交通事故受傷しているのですが、こんなときでも、通勤災害の適用は可能ですか?

出勤途中の寄り道と通勤災害

A 例によって、労働基準監督署は、「合理的な経路なのか、」 を検討することになります。
本件では、迂回の距離が問題になるようで、3つの例を検討します。

①自宅から同一方向で妻の勤務先が約450m離れているとき、
マイカー通勤の共稼ぎ夫婦で、妻の勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路からさほど離れていないときは、2人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは通常行われることであり、合理的な経路として取り扱うのが妥当であると判断しています。

②自宅から同一方向で妻の勤務先が3km離れているときは、
妻の勤務先が同一方向にはあるが、迂回距離が3kmと離れており、著しい遠回りと認められるところから、これを合理的な警護として取り扱うのは困難と判断しています。

③自宅から同一方向で妻の勤務先が4km離れているときは、
これは②の事例に従って却下されたのですが、被災労働者は労働保険審査会に対し、「当時、妻は妊娠8カ月の身重であり、満員のバスに乗れる状況になかった。」 として異議を申し立てました。
結果、妻は妊娠8カ月の身重の状態であり、バスに乗るにも十分に注意しなければならなかった時期であったことを勘案すれば、被災当日、最短の通勤経路から多少離れて妻を勤務先まで送ったことはやむを得ない必要な行為であったとして、通勤災害を認定したのです。

先の質問に戻りますが、同一方向で、しかも距離が1kmですから、認定されると考えます。

労災保険では、最初の認定を担当するのは労働基準監督署長です。
実際の認定実務は労災課長が握っています。
ここで否決されますと、都道府県の労働基準局に対して、「労働保険審査請求」 これを60日以内に申し立てなければなりません。この段階で認定実務を取り仕切るのは労働者災害補償保険審査官です。
さらに、ここでも否決されたのであれば、労働保険審査会に対して、「労働保険再審査請求」 同じように60日以内に申し立てなければなりません。

私は、H16-12、新潟の被害者に同席して、労働保険審査会で意見陳述を行いました。
本件は、H12-3の交通事故受傷です。
被害者は、事故後は自宅近くの開業医で治療を受けておりましたが回復がはかばかしくなく、市内の専門病院で精査受診し、結果的にはH12-11に脊柱管拡大形成術を受けました。
自賠責保険はこの事実を認め、併合5級の後遺障害等級を認定しましたが、労災保険は、「H12-8で症状固定をしている。」 開業医の意見を採用し、それ以降の治療は本件交通事故との因果関係がないとして適用を退けました。
労基署および労働基準局は治療先からカルテを取り付け、それを翻訳して裁定したに過ぎません。
私は、「神経学的所見も取らずに漫然治療を続けた開業医の所見と、脊髄外来のある専門病院の医師所見のどちらに信憑性が認められるのかについて問題提起を行いました。

さらに、全国46都道府県の基準局に配置されている労災保険審査官の下す判断は、金太郎飴のように同一でなければならないとして、大津労働基準監督署が認定した類似例、同一傷病名で労災保険が適用されたものを参考資料として提出しています。
そして、この判断が再び繰り返されるのであれば、国家賠償請求訴訟を行うことも付け加えました。
結果は、幸いなことに、不支給の取り消しとなりました。
労災保険に対する審査請求や再審査請求はいずれも60日以内に労災保険の書式で補正書を提出しなければならず、大変に面倒なものです。

出勤途中の寄り道と通勤災害

労働基準監督署の決定に不審があるときは、NPOジコイチに相談してください。