脊柱の運動障害

等級 脊柱の運動障害に伴う後遺障害
6 5:脊柱に著しい運動障害を残すもの
頚部および胸腰部が強直したもの
①頚椎と胸腰椎の両方に圧迫骨折などがあり、それがXPなどにより確認できるもの
②頚椎と胸腰椎の両方に脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8 2:脊柱に運動障害を残すもの
頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
①頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折などを残し、それがXPなどにより確認できるもの
②頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
④頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの

脊柱に圧迫骨折や破裂骨折が認められること、もしくは、脊椎の固定術が実施されていることが、後遺障害等級が認定される前提条件となります。

XP・CT・MRIで、脊椎圧迫骨折や脊椎の脱臼、または脊椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に、疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状としての扱いとなり、常識的には後遺障害等級の認定はありません。

1)頚椎の運動機能の評価および測定

等級 主要運動 参考運動
前屈 後屈 左・右回旋 合計 左・右側屈
正常値 60 50 各60 230 50
6級5号 10 5 各10 25 5
8級2号 30 25 各30 115 25

頸椎の屈曲と伸展

頸椎の回旋

参考運動 左右の側屈

頸椎の側屈

※関節可動域の比較の方法
脊柱では、健側と患側の比較ができないので、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学界により決定された、関節可動域表示と比較することにより評価されています。

※主要運動と参考運動の関係について?
では、参考運動はなんの評価の対象にもならないのか? そうではありません。
例えば頚椎の主要運動の合計値が100°の場合、2分の1+10°ですから、8級2号になりません。
しかし、参考運動の左右の側屈がいずれも25°以下で2分の1以下の制限を受けていれば、8級2号が認定されています。

A 頚椎の屈曲(前屈)⇒日本整形外科学会の公表する参考角度は60°です。
計測開始時の肢位

計測開始時の肢位


正常計測

間違った動作

右の間違った動作では、体幹の前傾があり、両腕が前に出て、肩甲骨の外転が認められます。
これでは、可動域は、自然に大きくなるのです。
大腿部の両側に手を置いて、体幹を支えるように、背筋を真っ直ぐにしなければなりません。
計測器は、軸がずれるので、対象者に接触させないで計測することになっています。

B 頚椎の伸展(後屈)⇒日本整形外科学会の公表する正常値は50°です。


正常計測

間違った動作

右の間違った動作では、体幹が伸展、つまり、伸びきっての計測となっています。
体幹が伸びきった分、後屈の角度は大きくなります。
膝をそろえて、その上に手を置き、背筋を真っ直ぐにして計測を受けなければなりません。
計測器は、軸がずれるので、対象者に接触させないで計測しなければなりません。

C 頚椎の左右の回旋⇒日本整形外科学会の公表する正常値は60°です。


正常計測

間違った動作

右の間違った動作では、体幹の回旋を伴っており、右回旋の角度が大きくなっています。
本件は、頚部のみの回旋運動の計測ですから、体幹を動かしてはなりません。
計測器は、軸がずれるので、対象者に接触させないで計測しなければなりません。

2)胸腰椎の運動機能の評価および測定

等級 主要運動 参考運動
前屈 後屈 合計 左右回旋 左右側屈
正常値 45 30 75 各40 各50
6級5号 5 5 10 5 5
8級2号 25 15 40 20 25

参考運動 左右の回旋と側屈

※関節可動域の比較の方法
脊柱では、健側と患側の比較ができないので、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学界により決定された、関節可動域表示と比較することにより評価されています。

※主要運動と参考運動の関係について?
胸腰部については、主要運動の合計が45°では、2分の1+5°ですから、8級2号になりません。
しかし、参考運動の左右の回旋が20°以下もしくは側屈が25°以下で、いずれかが2分の1以下の制限を受けていれば、8級2号が認定されます。
僅かに上回るとは、頚椎で10°胸腰椎は5°と記憶してください。
参考運動が複数ある関節では、1つの参考運動が制限されていれば、それで認定されます。

A 前屈⇒日本整形外科学会が公表する正常値は45°です。


正常計測

間違った動作

注意すべきは、前屈み、屈曲で、股関節を動かしてはならないことです。
そのために、椅子には、深く腰掛け、両膝をキチンとそろえて座ります。
次に、両手を交差させ、反対側の肩をそれぞれでつかみます。
この肢位で、L5、第5腰椎を起点として、前屈みをするのです。
検者は、被害者に接触しないで、角度計をあてて計測します。
右の間違った動作は、股関節を過度に屈曲させた悪い例です。②後屈 日本整形外科学会が公表する正常値は30°です。

B 後屈⇒日本整形外科学会が公表する正常値は30°です。


正常肢位

間違った動作

やはり、膝をそろえて、椅子に深く腰掛け、徐々に背中を後方に反らします。
計測者は、被害者に接触しないで、角度計をあてて計測します。
右は、胸部を過度に伸展させた悪い例、支えがないと、後方に倒れます。

C 左右の回旋⇒日本整形外科学会が公表する正常値は40°です。


正常肢位

間違った動作

やはり、膝をそろえて、椅子に深く腰掛け、両手は、膝の上でそろえておきます。
計測者は、被害者に接触しないで、角度計をあてて計測します。
右は、肩甲骨部を突出させ、体幹屈曲を伴っており、悪い例、間違った動作です。
本件では、間違いの多い胸腰部の可動域測定について、正しい計測法を学習しました。