胸部臓器 呼吸器・循環器の後遺障害

後遺障害等級別表Ⅰ 介護を要する胸腹部臓器の後遺障害
等級 内容
1 2:胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
重度の胸腹部臓器の障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、常に他人の介護を要するもので、日常生活の範囲が病床に限定されているもの
2 2:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
高度の胸腹部の障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもので、日常生活の範囲が主として病床にあるが、食事、用便、自宅内の歩行など短時間の離床が可能であるか、または差し支えのない状態のもの

呼吸器の障害では、動脈血酸素分圧が50Torr以下のもの、50Torr~60Torrであっても、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外のもの、スパイロメトリー検査の結果が、%1秒量≦35又は%肺活量≦40で呼吸困難の程度が高度なものが、1、2または3級の認定要件ですが、実際の等級は、介護のレベルを総合的にとらえて、1つの等級が認定されています。
循環器の障害についても同じことがいえます。

後遺障害等級別表Ⅱ 胸腹部臓器の後遺障害
等級 内容
3 4:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の障害のために、終身にわたりおよそ労務につくことができないもので、自宅周囲の歩行が可能かまたは差し支えないが、終身にわたりおよそ労務に服することができない状態のもの
5 3:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
身体的能力の低下などのため、独力では一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないもの
7 5:胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
中程度の胸腹部臓器の障害のために、労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもので、独力では一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないもの
5:除細動器を植え込んだもの
9 11:胸腹部臓器機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
社会通念上、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
11:おおむね 6METs を超える強度の身体活動が制限されたもの
平地を健常人と同じ速度で歩くのは差し支えないが、平地を急いで歩く、健常人と同じ速度で階段を上がるという身体活動が制限されるもの
11:ペースメーカを植え込んだもの
11:房室弁または大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行うもの
11 10:胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当程度の支障があるもの
一般的労働能力は残存しているが、胸腹部臓器の機能の障害が明確であって労働に支障を来たすもの
10:おおむね 8METs を超える強度の身体活動が制限されるもの
平地を急いで歩く、健常人と同じ速度で階段を上がるという身体活動に支障がないものの、それ以上激しいか、急激な身体活動が制限されるもの
10:房室弁または大動脈弁を置換し、抗凝血薬療法を受けていないもの
10:大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの

世間では、除細動器、ペースメーカを埋め込んだといわれていますが、医学では、ペースメーカを植え込んだといいます。
胸部臓器の障害とは、心臓、心嚢、肺臓、胸膜(肋膜)、横隔膜などに他覚的に証明しうる変化が認められ、かつ、その機能にも障害が証明されるものをいいます。
胸部臓器の障害については、心嚢癒着、心外膜障害、心内膜障害、心弁膜障害、肋膜・横隔膜癒着および胼胝ならびに肺損傷後遺による肉変形成などの程度に応じて等級が認定されています。
これらの障害の検査は、聴打診、心電図、X線透視および撮影、負荷試験を含む心肺機能検査、血液ガス分析などと規定されています。

胼胝(ベンチ)
胼胝(べんち)、鶏眼(けいがん)とは、手足など、特定の部位に圧が反復性に加わることにより生じる角質の肥厚のことで、胼胝は圧迫の加わる場所が盛り上がっているもので、俗に、「たこ」と呼ばれ、鶏眼は角質肥厚部が魚の目のように見えることから、「魚の目」と呼ばれています。

(2)呼吸器の後遺障害の立証

1)動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果

動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級
動脈血酸素分圧 動脈血炭酸ガス分圧
限界値範囲内(37Torr~43Torr) 限界値範囲外(左記以外のもの)
50Torr以下 1、2または3級
50Torr~60Torr 5級 1、2または3級
60Torr~70Torr 9級 7級
70Torr以上 11級

動脈血に含まれる酸素の圧力を動脈血酸素分圧、動脈血に含まれる炭酸ガスの圧力を動脈血炭酸ガス分圧と言い、呼吸機能の低下により、上記のレベルを示し、常時介護の必要なものは1級、随時介護が必要なものは2級、それ以外のものは3級が認定されます。

2)スパイロメトリーの結果及び呼吸困難の程度

スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による後遺障害等級
スパイロメトリーの結果 呼吸困難の程度
高度 中等度 軽度
%1秒量≦35又は%肺活量≦40 1、2または3級 7級 11級
35<%1秒量≦55又は40<%肺活量≦60
55<%1秒量≦70又は60<%肺活量≦80

※スパイロメトリー検査
スパイロメーターを用いて呼吸気量を計測する検査のこで、呼吸の呼気量と吸気量を測定し、呼吸の能力を判定しています。
%肺活量
実測肺活量÷予測肺活量×100=%肺活量
上記の計算式で算出されるもので、肺の弾力性の減弱などにより、換気量の減少を示す指標であり、
正常値は80%以上です。
※1秒率
肺活量を測定するときに、最初の1秒間に全体の何%を呼出するかの値です。
肺の弾力性や気道の閉塞の程度を示し、弾力性がよく、閉塞がないと値は大きくなります。

スパイロメトリー検査 おおよその目安
%肺活量 1秒率 レベル・障害の状態
80以上 70以上 正常
79以下 70以上 拘束性 肺の弾力性低下、胸部拡張障害、呼吸運動の障害
80以上 69以下 閉塞性 気道閉塞、肺気腫
79以下 69以下 上記の2つが混合したもの

3)運動負荷試験の結果

運動負荷試験には、トレッドミル、エアロバイクによる漸増運動負荷試験、6分・10分間歩行試験、シャトルウォーキングテストなどの時間内歩行試験、50m歩行試験などがあります。

自賠責保険は、運動負荷試験の結果について、以下の5つの事項について主治医に文書照会を実施した上で、呼吸器科を専門とする顧問医から意見を求めて、呼吸障害の等級について、高度⇒中程度⇒軽度の3つに分類し、等級を認定しています。

トレッドミル
トレッドミル
エアロバイク
エアロバイク

   
※呼吸障害
高度
⇒呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中程度⇒呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分のペースでなら、1km程度の歩行が可能であるもの
軽度⇒呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの

文書照会の内容?
①実施した運動負荷試験の内容
②運動負荷試験の結果
③呼吸機能障害があると考える根拠
④運動負荷試験が適正に行われたことを示す根拠
⑤その他参考となる事項

①と②の結果を比較して②の数値が高いときは、②の結果で障害等級を認定しています。
①②の数値では後遺障害の基準に該当しないときでも、③の基準を満たせば、認定されています。

4)等級認定例

肺挫傷の経験則は豊富ですが、非該当、14級9号、11級10号、7級5号と千差万別です。
ここでは、7級5号の重症例を紹介しておきます。
被害者は、横断歩道手前で自転車に乗って信号待ちをしていました。
そこに、信号の変わり目で、自動車同士が出合い頭衝突し、1台の自動車が交差点で大きくスピンし、自転車に乗った被害者は、交差点後方の田畑にはね飛ばされたのです。

傷病名は、脳挫傷、急性硬膜下血腫、多発性肋骨々折、フレイルチェスト、肺挫傷でした。
幸い、高次脳機能障害のレベルは、9級10号でしたが、広範囲な肺挫傷に伴う呼吸器障害を残し、スパイロメトリー検査では、%肺活量が52.2でした。
また、運動負荷試験では、呼吸困難の程度は、一回の歩行距離は、歩行器では170m、杖では40mで息切れし、呼吸困難の状態になる高度なレベルとの主治医所見などを回収しました。
結果、被害者の呼吸器には、高度の呼吸困難が残存し、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」 として第7級5号が認定、先の9級10号と併合され、併合6級が認定されました。

呼吸器の障害では、1)2)3)の検査を受ける必要があります。
ところが、これらは治療上で必要な検査ではありません。

多くの呼吸器内科の医師は、後遺障害診断の経験が少なく、その検査の必要性も承知していません。
被害者が、主治医を説得する? 骨の折れる作業ですが、大半は、見事に失敗します。
後遺障害診断では、専門的な知識で、礼を失することなく医師を誘導する必要があるのです。
NPOジコイチでは、スタッフのチーム110が、被害者と治療先に同行して、医師面談を繰り返し、後遺障害立証のサポートを行っています。
後遺障害診断で、ご不安の被害者は、NPOジコイチにご相談ください。

5)呼吸器障害が想定される傷病名

1肺挫傷、2皮下気腫、3縦隔気腫、4気管断裂、4気管支断裂、5肺脂肪塞栓、6外傷性胸部圧迫症
これらは、ホームページ、「傷病名と後遺障害のポイント 胸腹部臓器」 で解説しています。