自賠責保険では、胸腹部臓器の後遺障害について、
1呼吸器、2循環器、3腹部臓器、4泌尿器、5生殖器の5つに分類し、等級を定めています。
呼吸器の仕組み
ヒトは、呼吸をしながら、栄養のあるものを食べて、生命を維持しています。
命を長らえるには、酸素と栄養素を体内に取り込むことが必要不可欠となります。
酸素を体内に取り込むのは呼吸器系、栄養素を取り込むのは消化器系の働きです。
ところが、ここに2つの問題があります。
①取り込まれた栄養素は、吸収されると、酸化して二酸化炭素、つまり炭酸ガスを発生させます。
体内に炭酸ガスが充満すると、さまざまな障害を引き起こすことになり、ヒトが生きるには、酸素を取り込み、不要となった炭酸ガスを排出し続けなければなりません。
②さらに、酸素は、栄養素と違って、体内に備蓄することができません。
酸素の供給が停止すると、大脳で8分、小脳で13分、延髄・脊髄では45~60分を経過すれば、組織は死滅し、生命を失います。したがって、呼吸器系は、24時間、酸素を取り込み、炭酸ガスを排出し続けており、生命を維持する上で、非常に重要な役割を担っているのです。
肺は、心臓を挟んで左右に1つずつあります。
心臓の位置が、やや左寄りのため、左肺は右肺に比較すれば、小さくなっています。
肺は、右が上・中・下葉の3つ、左は上・下葉の2つに分かれています。
両肺は、縦隔で仕切られ、横隔膜の上に乗って、支えられています。
肺は、空気の吸入と排出を行い、肺胞で、酸素を血液中に取り込み、血液中の二酸化炭素=炭酸ガスを排出するガス交換を行っています。
気道の大部分と肺胞の全部は、肋骨、脊椎、肋間筋、横隔膜に囲まれてできた、胸郭の籠の中に収納されており、胸郭は、収縮・拡張を繰り返し、肺の中に空気を取り入れ、押し出すポンプの役目を果たしています。胸郭内は、常に大気圧より低い陰圧に保たれており、肺の働きをサポートしています。
気道とは、空気中の酸素を肺胞に導き入れ、肺胞内の二酸化炭素を外界へ排出する導管のことです。
気道は、口腔⇒鼻腔・副鼻腔⇒咽頭⇒喉頭⇒気管⇒気管支⇒細気管支という経路となっています。
胸膜は、肺を直接包み込んでいます。
左右の肺に挟まれた胸腔の正中部は縦隔と呼ばれ、心臓、胸腺、気管、気管支、食道、大動脈、大静脈、胸管、神経などの器官が存在しています。