屈曲と伸展運動
等級 | 主要運動 | 参考運動 | |||||
屈曲 | 外転 | 内転 | 合計 | 伸展 | 外旋 | 内旋 | |
正常値 | 180 | 180 | 0 | 360 | 50 | 60 | 80 |
8級6号 | 20 | 20 | 0 | 40 | |||
10級10号 | 90 | 90 | 0 | 90・90 | 25 | 30 | 40 |
12級6号 | 135 | 135 | 0 | 135・135 | 40 | 45 | 60 |


外転と内転運動
上記は、日本整形外科学会の公表している参考可動域角度を基礎として、比較・検証しやすくする目的で、NPOジコイチが作成したオリジナルです。
実際には、被害者の肩関節の健側と患側を計測し、医師が手を添える他動値の比較で、等級が認定されています。
参考運動 外旋・内旋
1)肩関節の強直 8級6号
関節の強直とは、関節の完全強直またはこれに近い状態であり、これに近い状態とは、関節の可動域が、原則として健側の可動域の10%以下に制限を受けているものをいいます。
肩関節の屈曲の正常値は180°その10%は18°ですが、計測は5°単位で切り上げるので、20°以下となります。医師が作成した後遺障害診断書に屈曲87°と記載されているのを見かけますが、日本整形外科学会の規定により、角度の計測は5°単位で切り上げるので、87°は90°となります。
いつでも、計測値の末尾は、0か5になるのです。
8級6号では、いずれの主要運動も全く可動しないか、これに近い状態に限って認定されています。
肩関節では、屈曲・外転・内転でそれを立証しなくてはなりません。
主要運動が複数ある関節とは、肩関節と股関節の2つです。
2)肩関節の機能障害 10級10号と12級6号
8級6号とは違って、主要運動を屈曲と、外転+内転の2つのグループに分けます。
そして、いずれかのグループで、健側に比較して2分の1以下であるときは10級11号が、
4分の3以下であるときは12級7号が認定されています。
2つのグループで、いずれかが、制限されていることが条件と覚えておくことです。
3)参考運動を評価されるとき?
肩関節では、主要運動の可動域が2分の1または4分の3を僅かに上回るときは、肩関節の参考運動が2分の1または4分の3以下に制限されていれば、10級10号、12級6号が認定されています。そして、僅かとは、10級10号では10°12級6号では5°とされています。
4)12級13号、14級9号
肩関節の可動域が、健側に比較して4分の3を上回っているときは、関節の機能障害としては非該当ですが、運動時に痛みの自覚症状があるときは、脱臼・骨折部の骨癒合状況を3DCTで立証することにより、変形の程度に応じて、痛みの神経症状として12級13号、14級9号が認定されています。
5)症状固定時期を間違えないこと?
後遺症と後遺障害は似て非なるもので、後遺症を残していても、等級が非該当はよくあることです。
関節の機能障害は、日にち薬であって、時間の経過で少しずつ改善していくのです。
受傷から6カ月を経過すれば、症状固定として後遺障害の申請ができることを認識しておくことです。
ダラダラと漫然治療を続ければ、後遺症を残しても、等級は非該当の悲哀を味わうことになります。
関節の機能障害をハードル競争で説明すると、
全く動かない、もしくは、これに近い状態で8級6号が認定されます。
2分の1以下では10級10号、そして最後は4分の3以下で12級6号が認定されています。
ハードルは8、10、12級の3つしか用意されていないのです。
37歳男性の損害賠償額を例にすれば、5000、3000、1000万円のハードルとなり、8級を飛び越えて10級となれば、レクサス2台分を失う計算となります。
フローレンス・ジョイナーは、このハードルを一足飛びでクリアーして金メダルを獲得しましたが、被害者が、このハードルを跳び越えることは、損保に金メダルをプレゼントすることを意味しているのです。
6)肩関節の機能障害が予想される傷病名
1上腕神経叢麻痺、2鎖骨遠位端骨折、3肩鎖関節脱臼、4胸鎖関節脱臼、5肩腱板断裂、6腱板疎部損傷、7肩甲骨々折、8SLAP損傷、9肩関節脱臼、10反復性肩関節脱臼、11肩関節周囲炎、
12変形性肩関節症、13上腕骨近位端骨折、
これらの13の傷病名については、コンテンツ⇒傷病名と後遺障害⇒上肢・手指で、後遺障害の立証を含む詳細を解説しています。
7)肩関節の計測と注意点
①肩関節の屈曲⇒日本整形外科学会の公表する参考角度は180°です。

正常計測

右の間違った動作では、体幹が伸展しています。
これ以外でも対側への体幹側屈、腰椎前弯に注意しなければなりません。
検台には、膝をそろえて奥深く座り、背筋を真っ直ぐにして計測を受けることになります。
②肩関節の外転⇒日本整形外科学会の公表する参考角度は180°です。

正常計測

間違った動作では、体幹が側屈しています。
背筋を真っ直ぐに伸ばして腰掛けて計測を受けなければなりません。
③肩関節の内転⇒日本整形外科学会の公表する参考角度は0°です。
正常計測
背筋を真っ直ぐに伸ばして腰掛けた状態で、上肢をダラリと下げて計測を受けます。
大腿部、ヒップに接触しますから、可動域はいつでも0°間違った動作も考えられません。