食事のあと、食道を通過して胃に到達した食べ物は、どのように処理されているのか?
胃は、筋肉が袋状となった器官で、大きく分類すると、消化と殺菌の2つの役割を果たしています。
胃は、食道から運ばれてきた食べ物を消化します。
胃には伸縮性があり、満腹時には1.5リットルの大きさに膨らみます。
1つ目の消化ですが、食道を通過した食べ物は、蠕動運動により、破砕され、胃液と混ざり合って、粥状になるまで消化されたあと、12指腸へと送り出されていきます。
胃では、消化は行なわれていますが、水や糖分、アルコールなど、ごく一部のものは吸収されるものの、栄養の吸収は、ほとんど行われていません。
2つ目の殺菌ですが、胃液の性質は、ほとんどの蛋白質を変性させてしまう強力な酸性です。
胃液の成分は、塩酸、ペプシノーゲン、粘液の3つで構成されています。
胃液は、食べ物と共に進入してきたウイルスや細菌の増殖を抑え、殺菌する効果を果たしています。
胃の入口を、噴門、出口を幽門と呼んでいます。
噴門は、胃液や胃の内容物が食道に逆流しないように、栓の役目を果たしています。
幽門は、いつもは閉じており、食べ物が消化されて12指腸へ送られるときに限り、開いています。
胃の表面の胃壁は、粘膜で覆われています。
この粘膜には、3000~4000万個の小さな穴、胃腺が開いており、そこから1.5~2リットルの胃液が絶え間なく分泌、供給されています。
※ゲップ
余談ですが、ビールや飲料水の炭酸、食事のときに飲み込んだ空気は、胃の底部に溜まります。
溜まった空気が一定量に達すると、胃の収縮によって噴門が開き、口から放出されるのです。
大人はともかく、赤ちゃんのゲップについて、講釈を続けます。
赤ちゃんは、母乳やミルクを飲みながら、同時に、息もしています。
喉頭蓋が大人よりも高い位置にあり、息をしながら、ミルクを飲み続けることができるのです。
これはメリットですが、デメリットは、胃の中に、大量の空気が入り込むことです。
そして、赤ちゃんは、自力でゲップを出すことができません。
ミルクをしっかり胃の中に入れて消化吸収させ、飲んだミルクを吐くことなく、また気管が詰まり、息苦しくならないように、空気がお腹を圧迫しないようにするためには、食後のゲップ出しは、親にとって重要な役目となるのです。
生後4カ月を過ぎて、首が据わる頃には、赤ちゃんの口から喉は、大人と同じ構造に近づくので、息をしながらミルクを飲めなくなり、空気も飲み込み過ぎないように調整できるようになります。
子どもの親であれば、誰もが、悩み、経験することです。
※胃の後遺障害
等級 | 内容 |
7 | 5:胃の全部または一部の切除により、 消化吸収障害、ダンピング症候群、逆流性食道炎を残すもの |
9 | 11:胃の全部または一部の切除により、消化吸収障害、ダンピング症候群を残すもの |
11:胃の全部または一部の切除により、消化吸収障害、逆流性食道炎を残すもの | |
11 | 10:胃の全部または一部の切除により、消化吸収障害を残すもの |
10:胃の全部または一部の切除により、ダンピング症候群を残すもの | |
10:胃の全部または一部の切除により、逆流性食道炎を残すもの | |
13 | 11:胃の全部または噴門部、幽門部を含む一部が切除されたもの |
※消化吸収障害
消化吸収障害とは、胃の全部または一部を切除したことにより、食餌が十分に消化されなくなって発症します。BMIは、体重と身長から、人の肥満度を示す体格指数で、体重÷(身長)2で求めるのですが、BMI指数は、22が標準値であり、最も病気になり難い状態と言われています。
BMI指数が20以下であれば、消化吸収障害が認定されます。
参考までに、BMIが25以上では、肥満と判定され、生活習慣病を引き起こす可能性が懸念されます。
※ダンピング症候群
早期ダンピング症候群は、食事中や食後30分以内に、血管運動失調性の症状を伴う腹部症状として発症しており、具体的には、冷汗、動悸、めまい、失神、全身倦怠感、顔面紅潮、頭重感などの全身症状と腹鳴、腹痛、下痢、悪心、腹部膨満感などが列挙されます。
また、晩期ダンピング症候群は、食事摂取後2~3時間で発症するもので、冷汗、全身脱力感、倦怠感、気力喪失、めまい、時に失神、痙攣などの低血糖症状を呈しています。
2つのダンピング症候群に対する治療は、食事指導を主体とした保存的治療であり、食事内容を変更するとともに、1回の量を少なく、回数を増やすこと、食後しばらくは、横臥にて安静とすることなどが指導されています。
症状が残存していても、労働能力に与える支障の程度は、比較的軽度なものですが、ダンピング症候群が認められるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
①幽門部を含めて胃の切除がなされていること、
②2つのダンピング症候群の、いずれかの症状を呈することが医師の所見により認められること
※逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃液あるいは腸液が食道内に逆流するために生ずるもので、
胃の噴門部は損傷していないが、胃酸の分泌が多いことなどにより逆流を生じるものと、
噴門部を手術により失ったときに生じるもの=術後逆流性食道炎の2種類があります。
後遺障害の対象は、当然ながら、術後逆流性食道炎となります。
逆流性食道炎の症状としては、胸やけ、胸痛、嚥下困難、吐き気、または食欲不振等が生じます。
横臥すると逆流が起こりやすく、夜間に症状が出現して睡眠が妨げられることがあります。
保存的療法、殊に対症療法として薬剤の投与は継続的に必要とされますが、通常、手術等の積極的治療は、行われていません。
逆流性食道炎が認められるには、以下の2つの要件を満たさなければなりません。
①本人に、胸焼け、胸痛、嚥下困難などの術後逆流性食道炎に起因する自覚症状があること、
②内視鏡検査で、食道にただれ、びらん、潰瘍等逆流性食道炎に起因する所見が認められること、