大腸の仕組みと障害

大腸は、糞便を固くするために、腸管の壁にある血管に、水分と塩類を吸収させる働きがあります。
また、糞便を滑らかにする粘液も分泌しています。
腸内の細菌を排泄し、細菌に対する防御も機構しています。
そして大腸筋肉の蠕動運動で、内容物を直腸に向かって移動させます。
大腸の運動は自律神経によって調節されていて、糞便は2種類の運動をしています。

大腸の仕組みと障害

※右のイラストは緊張波、左のイラストは集団蠕動運動をそれぞれ示しています。

横行結腸部では、前に進む、元に戻る、シャトル運動を繰り返し、大腸粘膜と内容物が長時間接触するようにしており、その運動で、水分と塩類の吸収を促進させます。
これを緊張波と呼んでいます。
もう1つは、横行結腸を空にするように、ゆっくりとした強い波が、上行結腸の上端で始まり、糞便をS状結腸に進めて行きます。これを集団蠕動運動と呼んでいますが、S状結腸は、排便まで糞便を貯留しています。つまり、ヒトの大腸は、消化器官というよりも水分を回収する機能が高く、栄養吸収を完了した消化物を、便として整え、排出させる役目を担っています。

※排便のメカニズム
一定量の糞便が直腸に届くと、直腸粘膜の神経が感知し、大腸各部に信号を送り、排便体制を整えるのですが、同時に、大脳にも情報伝達を行い、便意を生じさせるのです。
排便命令が脳から伝達されると、以下の大結腸運動が起こります。
大腸の横行結腸の開始部分から大きな収縮が起こり、中に貯まっている糞便を一気に、下行結腸からS字結腸と直腸まで押し出すのです。
肛門を閉じている内・外括約筋は、糞便が漏れ出ないようにきっちり肛門を締めているのですが、トイレに入り、排便姿勢をとると肛門が緩み、開くのです。
内括約筋が、先に反射的に緩み、外括約筋が意思にしたがって緩み、排便が行われているのです。

※大腸の後遺障害等級

等級 内容
11 10: 結腸の全てを切除する等、大腸の殆どを切除したもの※

大腸の整体での長さは、15mです。

※人工肛門を造設したもの

等級 内容
5 3:小腸または大腸の内容が漏出することにより、人工肛門の排泄口、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、便を貯める袋、パウチの装着ができないもの
7 5:人工肛門を造設したもの

小腸や大腸の穿孔や破裂では、開腹術が実施され、人工肛門が造設されます。
内臓損傷が修復できたときは、人工肛門を閉鎖し、元通り、肛門からの排泄となります。
この場合、人工肛門は閉鎖されており、7級5号の認定はありません。
しかし、上行結腸、横行結腸、下行結腸の大半を失ったときは、人工肛門を閉鎖することはできなくなり、この場合は、7級5号が認定されることになります。
造設した人工排泄口をストーマといい、便を収容する袋をパウチといいます。

Q 高速道路でトラックを運転中、大型トレーラーに追突され、脳挫傷、横行結腸閉鎖性腸間膜損傷、胸部大動脈損傷、胆嚢破裂、肋骨多発骨折などの傷病名で、人工肛門を造設しました。
私には、腎機能障害の既往歴があり、先の全身麻酔による手術で、数値が上がっています。
今回の閉鎖術では、再び、全身麻酔下での手術となります。
人工透析を回避する必要から、閉鎖術を受けないことを考えているのですが、この場合の後遺障害等級はどうなるのでしょうか?

A 医師が、腎機能障害のさらなる悪化を想定し、全身麻酔による閉鎖術を断念したときは、人工肛門の造設で7級5号、胆嚢の摘出で13級11号、併合6級が認定されます。
ただし、既往歴の腎機能障害は、加重障害として、9、11、13級のいずれかが、減額されます。

医師が閉鎖術を予定し、貴方がそれを拒否したときは、人工肛門を残していても、後遺障害の対象にはならないと予想しています。

※小腸または大腸の皮膚瘻を残すもの

等級 内容
5 3:瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもので、パウチによる維持管理が困難なもの
7 5:瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもの
5:瘻孔から漏出する小腸または大腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上であってパウチ等による維持管理が困難なもの
9 11:瘻孔から漏出する小腸または大腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上のもの
11 10:瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸または大腸の内容が漏出する程度のもの

皮膚瘻とは、組織の深い部分に形成された膿瘍が原因で皮膚の表面に通じている穴、皮膚に開口した瘻孔のことで、手術後の消化管皮膚瘻は近年の栄養管理の進展などで、減少していますが、免疫力など全身状態が低下している被害者では、創傷部位に瘻孔が発生することもあり、臨床でとくに問題となる瘻孔として、排泄量の多い腸皮膚瘻=High output、消化液の漏出、皮膚障害、創傷内あるいは創傷・ストーマ周囲の瘻孔、痛みを伴う瘻孔などがあげられます。

※小腸または大腸に狭窄を残すもの

等級 内容
11 10: 小腸または大腸に狭窄を残すもの※

※どうやって、狭窄を立証するのか?
小腸は単純 XP で小腸ケルクリングひだ像が認められれば、認定されます。
大腸はXPで貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認められれば認定されます。

※便失禁、便秘を残すもの

等級 内容
7 5:完全な便失禁を残すもの
9 11:常時おむつの装着が必要なもの
11 10:常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの
便秘を残すもの
9 11:用手摘便、手を使って掻き出す必要のあるもの
11 10:それ以外のもの※

※小腸または大腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象で、便秘を残すものについては、排便に関する神経の損傷があることが条件となります。
その上で、排便回数が週2回以下の頻度で、恒常的に硬便であれば、認定がなされています。

※腹壁瘢痕ヘルニア

大腸の仕組みと障害

ヘルニアとは、脱出していることを意味します。
私が小学生の頃は、子どもの脱腸やでべそは、よく目にする日常的なものでした。
脱腸では、狸のキンタマと大はしゃぎして、からかったものです。
わけは知りませんが、クラスでも、脱腸バンドをした男子が確実にいたのです。
正しくは、脱腸=鼠径ヘルニア、でべそ=臍ヘルニアと呼びます。

今の仕事を始めてからは、なんと言っても、頚腰部の椎間板ヘルニアで、年齢変性で深刻なものではありませんが、この傷病名を聞かない日はありません。
頭部外傷の死亡例は、ほとんどが脳ヘルニアで、外傷で出血、腫脹した脳が、逃げ場を失って、延髄部に飛び出すことで死に至るのです。

さて、今回は、手術の跡からの盛り上がり、腹壁瘢痕ヘルニアを学習します。
腹壁瘢痕ヘルニアとは、手術によって腹壁を支える筋膜に欠損部ができ、ここから腹膜に包まれた内臓が突出するものです。

腹壁を雨戸、筋肉をサッシの窓、腹膜をカーテンに例えると、腸管が、緩んでいたサッシの窓と雨戸を突き破って、カーテンごと、外に飛び出した状態のことを腹壁ヘルニアと言うのです。

嵌頓(かんとん)ヘルニアは、脱出した臓器が、脱出口で締め付けられた状態のことです。
締め付けられた状態が続くと、血液の流れが妨げられ、脱出した部分が壊死や壊疽に至ることがあり、放置すると、絞扼性腸閉塞=イレウスで死に至ります。

他の腹壁ヘルニアでは、外傷などによる腹壁の凹みに、内臓、主として、腸が入り込む、滑り込む形で突出するもので、強い腹圧がかかると簡単に突出します。
嵌頓ヘルニアでは、緊急手術で嵌頓を解除します。
多くは、オペで改善が得られています。

※腹壁瘢痕ヘルニアなどを残すもの

等級 内容
9 11:常時ヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの
または立位でヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの
11 10:重激な業務に従事したときなど、腹圧が強く掛かるときにヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの