口の障害

口の障害

口は、唇・顎・舌・歯の働きにより、食物の咀嚼機能や、発生器である咽頭とともに共鳴作用をして、
言語の機能を果たしているところです。

語音は「あいうえお」の母音と、それ以外の子音とに区別されています。
ちなみに人の発声器官は咽頭です。

(1)そしゃくの機能

等級 内容 自賠責 喪失率
1 2:そしゃくおよび言語の機能を廃したもの 3000 100
3 2:そしゃくまたは言語の機能を廃したもの※ 2219 100
4 2:そしゃくおよび言語の機能に著しい障害を残すもの 1889 92
6 2:そしゃくまたは言語の機能に著しい障害を残すもの※ 1296 67
9 6:そしゃくおよび言語の機能に障害を残すもの 616 35
10 3:そしゃくまたは言語の機能に障害を残すもの※ 461 27

そしゃくとは、噛み砕くことですが、この機能障害は不正な噛み合わせ、そしゃくを司る筋肉の異常、顎関節の障害、開口障害、歯牙の損傷などを原因として発症しています。

1)そしゃく機能を廃したものとは、味噌汁、スープなど、流動食以外は受けつけないものをいい、3級2号が認定されます。

2)そしゃくの機能に著しい障害を残すものとは、お粥、うどん、軟らかい魚肉、またはこれに準ずる程度の飲食物でなければ噛み砕けないものをいい、6級2号が認定されます。

3)そしゃくの機能に障害を残すものとは、固形食物の中に咀嚼ができないものがあること、または、そしゃくが十分にできないものがあり、具体的には、ご飯、煮魚、ハムなどは問題がないが、たくあん、ラッキョウ、ピーナッツなどは噛み砕けないもので、10級2号が認定されます。
いずれも、そしゃく障害の原因が医学的に確認できることを認定の条件としています。

開口は、正常であれば、男性で55mm、女性で45mmが日本人の平均値です。
これが2分の1以下に制限されると、開口障害によりそしゃくに相当の時間を要することになり、12級相当が認定されます。
男女とも、指2本を口に挿入できなくなったときは、後遺障害の対象となります。

(2)言語の機能

ちなみに、人の発声器官は咽頭です。
咽頭には、左右の声帯があり、この間の声門が、筋肉の働きで狭くなって、呼気が十分な圧力で吹き出されると、声帯が振動し、声となるのです。

この声は口腔の形の変化によって語音に形成され、一定の順序に連結されて、初めて言語となります。 語音を一定の順序に連結することを綴音というのです。
語音はあいうえおの母音と、それ以外の子音とに区別されます。
子音はさらに、口唇音・歯舌音・口蓋音・咽頭音の4種に区別されます。

4種の子音とは、
①※口唇音(ま、ぱ、ば、わ行音、ふ)
②歯舌音(な、た、だ、ら、さ、ざ行音、しゅ、じゅ、し)
③口蓋音(か、が、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
④咽頭音(は行音) をいいます。

1)言語の機能を廃したものとは先の4種の語音のうち、3種以上の発音が不能になったものをいい、3級 2号が認定されます。
2)言語の機能に著しい障害を残すとは、4種の語音のうち2種が発音不能になった状況または綴音機能に障害があり、言語のみでは意思を疎通させることができない状況で、6級2号が認定されます。
3)言語の機能に障害を残すものとは、4種の語音のうち1種の発音不能のものであり、10級3 号が認定されます。
咽頭外傷では、嚥下障害以外にも、呼吸障害や発声障害を残すことが予想されます。
ここでは、発声障害の検査による立証を説明します。
代表的なものは、喉頭ファイバースコープ検査です。

喉頭ファイバースコープ検査

声帯のあるのど、つまり喉頭を見る一般的な検査方法です。
椅子に座った状態で、直径3mmの軟性ファイバースコープを鼻から挿入して検査が行われます。
上咽頭、中咽頭、下咽頭、声帯、喉頭蓋、披裂部など、のどの重要部分について形態、色調、左右の対称性、運動障害の有無を画像で立証しなければなりません。

音響分析検査
音響分析検査

4種の構音の内、どれが発音不能かは、音響検査と発声・発語機能検査を受け、検査データーを回収して立証しています。

発声・発語検査装置
発声・発語検査装置

4)声帯麻痺による著しいかすれ声(嗄声)は、12級相当となります。
かすれ声、嗄声は、喉頭ストロボスコープで立証します。

喉頭ストロボスコープ
喉頭ストロボスコープ

これは、高速ストロボを利用して声帯振動をスローモーションで観察する装置です。
スローモーションで見ることで、声帯の一部が硬化している、左右の声帯に重さや張りの違いが生じておこる不規則振動を捉え、検査データにより、嗄声を立証しています。
嗄声を立証すれば、12級相当が認定されます。

なんでもないこと、簡単なことのようですが、実は、立証作業では、毎回、大汗をかいています。
耳鼻咽喉科における各種の検査で、嚥下や言語の障害を立証するのですが、ほとんどの医師に、交通事故後遺障害診断の経験則がありません。

※そしゃくの機能の著しい障害6級2号と言語機能の障害10級2号の組み合わせは、併合により、5級相当となります。
※そしゃくの機能の用を廃したもの3級2号と言語の機能の著しい障害6級2号の組み合わせは併合すると1級になりますが、これでは序列を乱しますので、2級相当の認定となります。