ヒトの身体活動のほとんどの部分は、脳によりコントロールされています。
しかし、脳そのものは、首の最上部までしか到達していません。
顔は、脳幹と直接につながっていますが、それ以下では脊髄が脳に代わって、脳からの指令を手や足などの末梢に伝達し、反対に末梢からの信号を脳へ伝達する重要な役割を果たしています。
脊髄は、脳の底部から背中の下方まで伸びている、直径1cm、小指程度の太さの非常に細長いロープ状の器官であり、脊髄そのものは、軟らかく、損傷されやすいもので、専門医よりは、おからを連想させる脆いもので、脊椎によって囲まれた脊柱管というトンネルで保護されています。
脊椎は26 個の小さな椎体骨で構成されており、これらの骨が上下に積み重なった構造です。
脊椎は身体の活動にあわせて激しく動き、曲がるため、椎骨と椎骨の間にはクッション、衝撃吸収装置の役割をする椎間板が存在しています。
椎骨同士は靭帯によって連結・保持され、首や背中を捻ったり曲げたりすることを可能にしています。
脊髄は、それぞれ左右へ末梢への枝を出しており、その枝の出ている位置から髄節という単位に分類され、頚髄は8、胸髄は12、腰髄は5、仙髄も5の髄節に分類されています。
脊髄が横断的に切断されると、その障害された部位より下方向には、脳からの指令が伝達されなくなり、下からの信号も脳に伝達できなくなります。
そのため、運動麻痺、感覚・自律神経、排尿・排便障害などの深刻な障害が生じます。
椎体骨が骨折して不安定なときは、緊急的に固定術が実施されていますが、脊髄自体を手術でつなぎ合わせることはできません。
脊髄は脳と同様に中枢神経細胞で構成されており、損傷すると生まれ変わることはありません。
今後の再生医療の成果が期待される分野です。
日本脊髄障害医学会の調査によれば、脊髄損傷の発生件数は毎年、5000人前後で、交通事故で2400件、労災事故で1500件と報告されています。
交通事故と労災事故で全体の73%を構成しています。
(1)脊髄損傷の分類
脊髄損傷は、大きくは、完全損傷と不完全損傷の2つに分類されるのですが、麻痺症状の部位により、上記の四肢麻痺、対麻痺、片麻痺、単麻痺の4つに分類されます。
1)四肢麻痺(ししまひ)
頚髄の横断型損傷により、両上・下肢および骨盤臓器に麻痺や機能障害を残すもので、四肢麻痺はバイク事故やプールの飛び込みなど、頚髄が損傷されたときに発症する麻痺です。
2)片麻痺(かたまひ)
脊髄損傷で、片側の上・下肢に麻痺や機能障害を残すもので、右半身麻痺などと呼ばれています。
片麻痺は、上位運動ニューロンが障害されると発症する麻痺で、右脳に脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起こると左半身に麻痺が見られます。
3)対麻痺(ついまひ)
胸髄、腰髄、仙髄、馬尾の損傷により、両下肢および骨盤臓器に麻痺や機能障害を残すもので、自転車やバイク事故などで胸髄よりも下の脊髄が損傷を受けることで両側性に障害されたときに起こる麻痺です。
4)単麻痺(たんまひ)
脊髄損傷により、1つの上・下肢に麻痺や機能障害を残すもの
単麻痺は、普通は、末梢神経障害で起こりやすい麻痺で、交通事故で右上腕神経叢の引き抜き損傷では、右上肢みの麻痺が起こります。
(2)脊髄損傷の後遺障害
脊髄損傷の程度により、四肢の運動障害、感覚障害、腸管機能障害、尿路機能障害または生殖器機能障害などの多彩な症状が出現するのですが、これらの諸症状を総合評価して、その労働能力におよぼす影響の程度により、以下の7段階に区分して等級が認定されています。
1)自賠責保険 別表Ⅰの1級1号
等級 | 内容 |
自賠 1級1号 |
①神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
②自用を弁ずることができないもの | |
③生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に介護を要するもの | |
労災 1級の3 |
脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作で、常に他人の介護を要するもの |
①高度の四肢麻痺※が認められるもの | |
②高度の対麻痺が認められるもの | |
③中程度の四肢麻痺※であって、食事・入浴・用便・更衣などで常時介護を要するもの | |
④中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣などで常時介護を要するもの | |
ⅰ.上位頚髄、C1/2/3/4の脱臼骨折による横断型脊髄損傷で、四肢体幹麻痺をきたしたもの、肋間筋および横隔膜の支配神経が破断し、呼吸麻痺で人工呼吸器に頼るものも含まれています。 | |
ⅱ.胸髄、T2/3/4の脱臼骨折、横断型脊髄損傷で、体幹と両下肢に高度な対麻痺をきたしたもの | |
ⅲ.腰髄、L2以上の脱臼もしくは粉砕骨折で、横断型脊髄損傷により、両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じた他、脊柱の変形などが認められるもの、 |
※高度な麻痺とは?
障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作、下肢においては歩行や立位、上肢においてはモノを持ち上げて移動させることができないもの
①完全強直またはこれに近い状態にあるもの、
②上肢の3大関節および5つの手指のいずれの関節も自分では動かすことができないもの、またはこれに近い状態にあるもの、
③下肢の3大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの、またはこれに近い状態にあるもの、
④障害を残した1上肢ではモノを持ち上げて移動させることができないもの、
⑤障害を残した1下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの、
※中等度の麻痺とは?
障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作にかなりの制限があるもの、
①障害を残した1上肢では仕事に必要な軽量のモノ、概ね500gを持ち上げることができないもの、または、文字を書くことができないもの、
②障害を残した1下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、または、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの、
2)自賠責保険 別表Ⅰの2級1号
等級 | 内容 |
自賠 2級1号 |
①神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
②多少、自用を弁ずることができる程度のもの | |
③生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの | |
労災 2級の2 |
脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの |
①中程度の四肢麻痺が認められるもの、 | |
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣などで随時介護を要するもの | |
③中程度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣などについて随時介護を要するもの、 | |
ⅰ.C5/6/7の脊髄損傷で中程度の四肢麻痺を残したもの | |
ⅱ.腰髄、L2以上の脊髄損傷で、両下肢に中程度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖または硬性装具を要するとともに、軽度の神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部以下の感覚障害が生じた他、脊柱の変形が認められるもの |
※軽度の麻痺とは?
障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の巧緻性および速度が相当程度失われているもの、
①障害を残した1上肢では、文字を書くことに困難を伴うもの、
②日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した1下肢を有するため、不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの、または障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの、
3)自賠責保険 別表Ⅱの3級3号
等級 | 内容 |
自賠 3級3号 |
①神経系統の機能・精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
②自用を弁ずることはできるが、終身にわたり労務に服することができないもの | |
③生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、終身にわたり、およそ労働に服することはできないもの、 | |
労災 3級の3 |
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの |
ⅰ.随時介護を要するものを除き、軽度の四肢麻痺が認められるもの、 | |
ⅱ.随時介護を要するものを除き、中程度の対麻痺が認められるもの、 |
4)自賠責保険 別表Ⅱの5級2号
等級 | 内容 |
自賠 5級2号 |
①神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
②自用を弁ずることができるが、労働能力に著しい障害が生じ、終身極めて軽易な労働にしか服することができないもの | |
③麻痺その他の著しい脊髄症状のため、独力では一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないもの | |
労災 5級の1 |
脊髄症状のため、極めて軽易な労務のほかに服することができないもの |
ⅰ.軽度の対麻痺が認められるもの | |
ⅱ.1下肢の高度の単麻痺が認められるもの |
5)自賠責保険 別表Ⅱの7級4号
等級 | 内容 |
自賠 7級4号 |
①神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
②一応労働はできるが、労働能力に支障が生じ、軽易な労務にしか服することができないもの | |
③明らかな脊髄症状で、独力では一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないもの | |
労災 7級の3 |
脊髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの |
1下肢の中程度の単麻痺が認められるものであって、L2以上の脊髄の半側のみの損傷で、1下肢の中程度の単麻痺が生じたために、杖または硬性装具なしには階段を昇ることができないとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの、 |
6)自賠責保険 別表Ⅱの9級10号
等級 | 内容 |
自賠 9級10号 |
①神経系統の機能または精神に障害を残し、服する労務が相当程度に制限されるもの |
②通常の労働行うことができるが、就労可能な職種が相当程度に制限されるもの | |
③一般的労働能力はあるが、明らかな脊髄症状が残存し、就労の可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの | |
労災 9級の7 |
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
1下肢の中程度の単麻痺が認められるものであって、L2以上で脊髄の半側のみ損傷を受け、1下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度も遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの |
7)自賠責保険 別表Ⅱの12級13号
等級 | 内容 |
自賠 12級13号 |
①局部に頑固な神経症状を残すもの |
②他覚的検査により神経系統の障害が証明されるもの | |
③労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能、精神に障害を残すもの | |
労災 12級の12 |
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、多少の障害を残すもの |
運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの、また、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるものであって、 ①軽微な筋緊張の亢進が認められるもの ②運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められるもの |
8)自賠責保険 別表Ⅱの14級9号
等級 | 内容 |
自賠 14級9号 |
①局部に神経症状を残すもの |
②神経系統の障害が、医学的に推定されるもの | |
③労働には通常差し支えないが、医学的に可能な神経系統または精神の障害に係わる所見があると認められるもの | |
④医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかでないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの |
脊髄損傷は、他覚的な所見を含むものであり、14級9号はあり得ません。
他覚的所見の立証に失敗したものの一部が、14級9号でお茶を濁されているのです。
NPOジコイチでは、高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、そして死亡事故については、別枠で、後遺障害の立証方法、裁判判例も含めて、詳細を解説しています。
(3)末梢神経障害
神経系は、中枢神経と末梢神経の2つに分かれ、中枢神経とは脳と脊髄のことであり、末梢神経はそこから手足の先まで枝分かれして分布しているすべての神経をいいます。
末梢神経障害とは、全身にくまなく分布する末梢神経が障害されることにより、手足のしびれや筋力の低下など、さまざまな症状が現れる疾患の総称です。
ここで解説するのは、全て外傷の傷病名になりますが、代表的なものは、頚腰部捻挫となります。
頚腰部捻挫以外では、痛みを残したものが、対象となります。
例えば、右鎖骨骨折で、目に見える鎖骨の変形がなく、右肩関節の可動域も左肩に比較して4分の3以上の制限がないとき、つまり、体幹骨の変形と右肩の機能障害に該当しないが、右肩に運動痛を残しているときは、骨折後の変形癒合を立証することで、14級9号が認められています。
別表Ⅱ 局部の神経系統の障害
等級 | 内容 |
12 | 13:局部に頑固な神経症状を残すもの。 |
14 | 9:局部に神経症状を残すもの。 |
頚腰部捻挫については、傷病名と後遺障害⇒神経系統の機能または精神の障害⇒頚部捻挫と腰部捻挫で、後遺障害の立証方法を含めた詳細を解説しています。
(4)その他の障害?
1)外傷性てんかん
多発している症例ではありませんが、経験則では、頭蓋骨陥没骨折後のほぼ1年以内に、突然、けいれんを起こす、ガクガクと震える、大きな発作では、身体を弓なりに反らせ、顔が青紫色となり、唾液の泡を吹き、失禁、意識を失うこともあります。
外傷で、脳の実質部に残した瘢痕は、手術による摘出以外、消去することはできません。
この瘢痕部から発せられる異常な電気的信号に、周辺の正常な脳神経細胞が付和雷同して大騒ぎをしている状態を、外傷性てんかん発作といいます。
発作には、大発作、焦点発作、精神運動発作がありますが、発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害をきたします。
高度になると痴呆・人格崩壊に至ります。
深刻な障害ですが、治療は、発作を抑える抗痙攣剤の内服、つまり、薬物療法が基本です。
内服で発作を抑えられないときは、発作焦点となっている脳の部分切除がなされますが、切除術が実施されたときでも、術後は、長期にわたる薬物療法が続けられます。
※外傷性てんかんの後遺障害
等級 | 内容 |
1 | 1:てんかん発作のため、常時介護を要するもの |
2 | 1:十分な治療にかかわらず、意識障害を伴う発作を多発、平均して週1回以上するもの |
3 | 3:十分な治療にかかわらず、発作に伴う精神の障害のため、終身労務に服することができないもの |
5 | 2:十分な治療にもかかわらず、発作の頻度または発作型の特徴などのため、一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないもの |
てんかんの特殊性からみて、就労可能な職種が極度に制限されるもの | |
7 | 4:十分な治療にもかかわらず、1カ月に1回以上の意識障害を伴う発作があるか、または発作型の特徴のため、一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないもの |
てんかんの特殊性からみて、就労可能な職種が著しく制限されるもの | |
9 | 10:抗痙攣剤を内服する限りにおいては、数カ月に1回程度、もしくは完全に発作を抑制しうるとき、または発作の発現はないが、脳波上明らかにてんかん性棘波を認めるもの |
通常の労働は可能であるが、その就労する職種が相当な程度に制限を受けるもの | |
12 | 13:発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性の棘波を認めるもの |
1、2級は、別表Ⅰに規定されている後遺障害等級です。
外傷性てんかんについては、傷病名と後遺障害⇒神経系統の機能または精神の障害⇒外傷性てんかんで、後遺障害の立証方法を含めた詳細を解説しています。
2)頭痛
外傷性頭痛の原因は、以下の5つが考えられます。
①頭部の挫傷や創傷の部位から発症する疼痛、
②動脈の発作性拡張で生じる血管性頭痛、片頭痛はこの代表的なものです。
③頚部、頭部の筋より疼痛が発生する筋攣縮性頭痛、
④後頚部交感神経の異常により発生する頚性頭痛、バレ・リュー症候群と呼んでいます。
⑤上位頚神経の痛みの大後頭神経痛と後頭部から額面や眼にかけての三叉神経痛、
※外傷性頭痛の後遺障害
上記の5つの類型に関係なく、以下の基準で後遺障害の等級が認定されています。
等級 | 内容 |
9 | 10:一般的な労働能力は残存しているが、激しい頭痛により、労働に従事することができなくなるときがあり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
12 | 13:労働には差し支えがないが、ときには労働に差し支える程度の強い頭痛が起こるもの |
14 | 9:労働には差し支えがないが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの |
3)失調、めまい、平衡機能障害
めまいは、通常、内耳、内耳神経、脳幹の前庭、小脳の障害で発症すると考えられています。
人間の身体の平衡機能は、三半規管や耳石の前庭系、視覚系、表在・深部知覚系の3系統から発信された情報を小脳および中枢神経系が統合して左右のバランスを取り、維持されています。
したがって、平衡機能障害を来す部位は上記の3つの系統以外にも脳幹・脊髄・小脳の中枢神経系が考えられるのです。
失調とは運動失調のことですが、平衡機能障害によって複雑な運動ができない状態のことと言われており、深部知覚、前庭、眼、小脳、大脳の障害によって発症すると考えられます。
※めまいの後遺障害
等級 | 内容 |
3 | 3:生命の維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の失調または平衡機能障害のために終身労務に就くことができないもの、 |
5 | 2:著しい失調または平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の4分の1程度しか残されていないもの、 |
7 | 4:中程度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の2分の1以下程度に明らかに低下しているもの、 |
9 | 10:一般的な労働能力は残存しているが、眩暈の自覚症状が強く、かつ、他覚的に眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められるもの、 |
12 | 13:労働には差し支えがないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの、 |
14 | 9:眩暈の自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの、 |
頭痛と失調、めまい、平衡機能障害については、傷病名と後遺障害⇒神経系統の機能または精神の障害⇒頭痛、そして失調、めまい、平衡機能障害で、後遺障害の立証方法を含めた詳細を解説しています。
4)複合性局所疼痛症候群 CRPS
交通事故で手足が切断となっても、被害者が出血多量で亡くなった? ほとんどありません。
事故外傷が発生すると、交感神経の緊張、反射が高まり、神経伝達物質、アドレナリンを放出、アドレナリンには血管を収縮させる作用があり、これにより出血を止めているのです。
さらに、四肢の血管は収縮し、腫脹を防止します。
医学の常識では、外傷が治癒に向かうと、交感神経の反射は消失、正常な働きに戻ります。
では、交感神経反射が消失せずに続いたときはどうなるのでしょうか?
アドレナリンが放出され続けることにより、血流障害を起こします。
血液は全身の細胞に酸素と栄養を送り、老廃物や不要なものを回収しているのですが、血流障害により、細胞に必要な栄養は届かず、老廃物はたまる一方となります。
交感神経が緊張しているときは、副交感神経の働きは抑えられます。
副交感神経は、臓器や器官の排泄や分泌を担当しています。
便や尿の老廃物の排泄、ブドウ糖を利用するときに必要なインスリン、つまりホルモンや消化酵素やタンパク質の供給が著しく低下し、身体は循環不全を起こすのです。
白血球は、顆粒球とリンパ球、単球で構成されているのですが、交感神経優位のときは顆粒球が活躍しています。顆粒球は血液の流れに乗り全身をパトロールしており、体内に侵入した細菌や細胞の死骸を食べて分解し身体を守っているのです。
食事や休憩をしているときは、副交感神経優位となりリンパ球が活躍しています。
交感神経の緊張状態が続くと、顆粒球が増え続けます。
顆粒球は活性酸素を放出し、その強力な酸化力で細胞を殺傷することになります。
交感神経の暴走により、
①血流障害
②排泄・分泌機能の低下
③活性酸素による組織破壊
これらの状況が長期間続いたことによって、灼熱痛を生じるものが、RSDと呼ばれていました。
ところが、交感神経ブロック療法を行っても、全く無効の症例が報告されており、交感神経の関与しない痛みが存在することが明らかになってきました。
そこで、 1994 年に世界疼痛学会、IASPでこれらの類似した症状を呈する疾患をCRPS、複合性局所疼痛症候群と呼ぶことになりました。
※CRPSの後遺障害
等級 | 内容 |
7 | 4:軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの |
9 | 10:通常労務に服することはできるが、疼痛により、ときには労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
12 | 13:通常労務に服することはできるが、ときには労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの |
CRPSについては、傷病名と後遺障害⇒神経系統の機能または精神の障害⇒CRPSで、後遺障害の立証方法を含めた詳細を解説しています。
神経系統の機能と精神の障害のうち、高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷と死亡事故は、判例も含めて、別枠のコンテンツで解説しています。
中枢神経系では、1皮下血腫、帽状腱膜下血腫、骨膜下血腫、2頭部裂創・切創、3脳震盪、4頭蓋骨骨折、頭蓋骨線状骨折、頭蓋骨陥没骨折、5外傷性てんかん、6頭蓋底骨折、7側頭骨骨折・迷路骨折8めまい・失調、平衡機能障害、9頭痛、
末梢神経系では、10ムチウチ、頚・腰部椎捻挫、11バレ・リュー症候群、12 CRPS RSD とカウザルギー、13腰椎分離・すべり症、14胸郭出口症候群、15頚肩腕症候群、16AKA仙腸関節機能不全、17梨状筋症候群、18過換気症候群、19脳脊髄液減少症、20MTBI軽度脳外傷、21過換気症候群
上記の21の傷病名と後遺障害のポイントは、傷病名と後遺障害⇒神経系統の機能または精神の障害で、後遺障害の立証方法を含めた詳細を解説しています。