7 下肢の変形障害

(1)下肢の偽関節

下肢の偽関節

偽関節とは、長管骨の骨折部の骨癒合がストップし、関節化して、異常可動性を示す状態です。
医師は、長管骨の一部でも、癒合していなければ、偽関節と診断していますが、調査事務所は、周囲のすべての骨癒合が停止し、異常可動性が認められるものを偽関節と規定しています。

調査事務所は、偽関節により、立位と歩行機能を喪失し、硬性補装具なしては、立位の保持や歩行が困難になったものについて、著しい運動障害を残すと考えています。

等級 下肢の偽関節 自賠責 喪失率
7 10:①大腿骨に異常可動性を有する偽関節を残し、硬性補装具を常に必要とするもの 1051 56
10:②脛骨に異常可動性を有する偽関節を残し、硬性補装具を常に必要とするもの
8 9:①脛骨と腓骨に偽関節を残し、立位や歩行に、ときどき、硬性補装具を必要とするもの 819 45
9:②脛骨に偽関節を残し、立位や歩行に、ときどき、硬性補装具を必要とするもの
12 8:腓骨に偽関節を残すもの 224 14

(2)変形障害

1)下肢 長管骨の変形

下肢 長管骨の変形

15°以上の屈曲変形がXPで確認できることが認定要件です。

①長管骨の屈曲変形

等級 長管骨の屈曲変形 自賠責 喪失率
12 8:15°以上に屈曲変形したもの 224 14

②長管骨の回旋変形癒合

等級 長管骨の回旋変形癒合 自賠責 喪失率
12 8:大腿骨が外旋で45°内旋で30°以上の回旋変形癒合したもの 224 14
①外旋変形癒合では、股関節の最大内旋位が0°内旋変形癒合では、股関節の最大外旋位が15°以下であること
②脛骨と腓骨では、内・外旋とも15°以上の回旋変形癒合したもの
③いずれも、変形癒合がレントゲン撮影で確認できること

※長管骨の回旋変形癒合

もう30年以上も前のことですが、京都市内の救急病院で右大腿骨骨幹部粉砕骨折の固定術を受けた高校生の大腿部に20°以上の外旋変形を残したことがあります。
3カ所以上の粉砕骨折で、難しい手術でしたが、父親が主治医に外旋変形を質問したところ、「男の子だから、迫力が出るように、少し外に向けてくっつけといた?」 なんて言い放ったのです。

納得できない父親は、この医師を医療過誤で訴え、勝訴しています。
この時代は、外旋変形は後遺障害の対象ではなかったのですが、現在は、長管骨の回旋変形癒合、大腿骨または脛・腓骨の遠位端部の欠損、大腿骨または脛骨の直径の減少などが、後遺障害として整備されています。

③大腿骨または脛・腓骨の遠位端部の欠損

等級 大腿骨または脛・腓骨の遠位端部の欠損 自賠責 喪失率
12 8:大腿骨・脛骨の骨端部がほとんど欠損したもの※ 224 14

※大腿骨、脛骨の骨端部の欠損により、関節の機能障害または下肢の短縮が生じたときは、偽関節を適用するのではなく、長管骨の変形、関節の機能障害および下肢短縮のうち、いずれか上位の等級が認定されます。

④大腿骨または脛骨の直径の減少

等級 大腿骨または脛骨の直径の減少 自賠責 喪失率
12 8:大腿骨または脛骨の直径が3分の1以上減少したもの
ただし、骨端部の直径は考慮されません。
224 14

ここまで、下肢の偽関節と変形障害を解説してきましたが、上肢の脱臼・骨折に同じく、近年、医療技術は目覚ましい進化を遂げており、偽関節や変形癒合は、数が少なく、あまり聞かなくなりました。

仮に、偽関節、変形や骨短縮が発生しても、以下に紹介する専門病院であれば、チッピングやイリザロフの技術を駆使して、元通りに治癒させています。

名称 総合南東北病院 外傷センター
外傷を専門として治療するセンターで、外傷の救急医療からリハビリテーション、そして骨折後遺症の機能再建まで、幅広く対応できる専門の治療先です。

所在地 福島県郡山市八山田七丁目161
電話予約センター 0120-14-5420 診察には、紹介状が必要です。
医師 松下 隆センター長と8名の専門医

さて、骨折で固定術が実施されたにもかかわらず十分な骨癒合が得られないケースでは、当然に腸骨の骨移植を伴う再手術が検討されますが、規模の小さい救急病院では、医療過誤を懸念してか、この決断が、ズルズルと遅れる傾向です。
医大系の専門医は、あっさりと決断、早期の再手術を行っています。

長期間の休業では、社内ではOther Sideとなってしまいます。

再手術は、できれば受けたくない?
これは、被害者全員の希望ですが、この決断で逡巡をすると社会復帰が遅れ、取り返しのつかない状況に陥ります。不運にも偽関節となったときは、医大系の専門外来を受診、早期の再手術を決断してください。近年の医療技術では、このレベルの後遺障害を残すことは通常考えられません。
仮に残したとしても、専門医で修正が可能です。
したがって、下肢の偽関節による7、8級は、今では、あり得ない後遺障害となっています。