Q22 自賠責から保険金が支払われたが、労災保険にも請求できるのでしょうか?

A これは誤解の多い領域です。
結論は、労災保険で調整されるので、重複する保険給付はありませんが、請求はできること、両方から確実に支給されることは覚えておくことです。

自賠責と労災への請求は競合するのか

業務上、通勤途上の交通事故では、被害者は、労災保険と加害者の両方に請求ができます。
そこで、労災保険は、被害者が二重取りしないように、調整を行っています。
労災保険は補償保険ですから、被害者に対する慰謝料の支給はありません。
労災保険は、後遺障害の支給では、自賠責保険との調整を行います。

外傷性頚部症候群で14級9号が認定されると、自賠責保険は75万円を被害者に振り込みます。
75万円の内訳は、後遺障害慰謝料32万円、逸失利益が43万円です。
労災保険でも14級が認定されると給付基礎日額の56日分が支払われることになります。
給付基礎日額とは、(事故前3カ月間の総支給額÷事故前3カ月間の総日数)で求めた額となります。
給付基礎日額が1万円のときは、1万円×56日分=56万円が支払の対象ですが、自賠から取得している逸失利益43万円は差し引かれます。
56万円-43万円=13万円が支払われることになり、これを支給調整といいます。
これ以外に、障害特別支給金として8万円、ボーナス特別支給金56日分が支払われています。
ボーナス特別支給金とは、(過去1年間に支払われたボーナスの支給額÷365日)で日額を求めます。
両方を総取りすることはできませんが、両方から支給される事実に変わりはありません。
あくまでも、自賠責保険との調整であり、任意保険の支払額で調整がなされることはありません。
このことも覚えておいてください。

さらに、労災保険では、後遺障害等級7級以上は障害年金で支給を開始します。
自賠責保険は一時金で支給します。
年金と一時金の支払が重複した場合は、年金の支払が事故発生日から7年間について停止されますが、8年目からは、普通に支給がなされます。

もう1つ、従来は、自賠責保険に対する被害者請求と労災保険の求償請求が競合したときは、その金額を按分比例して支払われることになっていたのですが、H30-9-27の最高裁判決では、被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害について直接請求権を行使するときは、他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され、被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても、被害者は、国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当であると判示されました。