4.労災給付

労働災害と認められると、以下の補償を受けることができます。
ただし、労災保険は、被災労働者に国が支給する補償保険ですから、慰謝料の費目はありません。

(1)療養(補償)給付

業務災害または通勤災害による傷病で、労災病院や労災指定医療機関において療養をするとき、
治療費を負担するということです。
治療費の中には、診察、薬剤や治療材料の支給、処置や手術、入院や看護料、自宅での看護料などが含まれています。

(2)休業(補償)給付

業務災害または通勤災害による傷病の療養で、労働することができず賃金を受けられないとき、
休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%に相当する額
(事故前3カ月間の総支給額÷3カ月間の暦日=給付基礎日額)

自動車保険では、(事故前3カ月間の総支給額÷90日=休業損害日額) で求めていましたが、労災保険では暦日で求めます。
10/10の事故で、給与の締め切り日が毎月20日のときは、事故前3カ月は、6/21~9/20となり、暦日は、92日となります。
なお、勤務実績が3カ月に満たないときは、この間の給与の総額÷勤務総日数で算出されています。

1)最低保障

平均賃金は、原則として、上記の算式で求めますが、賃金が日給、時間給などでは、平均賃金の算定期間中にその被災労働者が就労できなかった期間があるときは、算定の基礎となる賃金総額が少額となり、それに応じて平均賃金も低くなることがあります。
そこで、平均賃金には最低保障が設けられています。
賃金が日給、時間給または出来高給などの請負給では、(賃金総額÷労働日数)×60%が最低保障額となります。

Q 1週間の月~金は、保育園で保育士として働き、日曜日はイベント会場で司会のアルバイトをしている女性が、壇上から転落して、右足関節の内外果骨折をしました。
司会のアルバイト料は、7500円ですが、彼女の給付基礎日額は?

A 原則の計算式では、(7500円×12日)÷92日×0.6==587円となります。
しかし、このアルバイトは日曜日のみで、1カ月に4回ですから、特例による計算を採用します。
(7500円×12日)÷12日×0.6=4500円となります。

なお、労災給付基礎日額の最低保障額は3940円です。
(H30-8-1~H30-7-31までの期間に適用の自動変更対象額は3940円)

3)その他

日雇労働者の平均賃金では、災害の発生した日の前1カ月間に、その災害の発生した事業場に使用された期間があるときには、その期間中に支払われた賃金の総額を、その期間中にその事業場で労働した日数で除した金額の73%とするなど、特別な計算方法が定められています。

(3)休業特別支給金

休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%に相当する額
休業特別支給金は、社会復帰促進等事業として行われる労災保険独自の制度であり、休業補償給付と合算すれば80%が支給されます。

労災保険から80%の支給を受けていても、自動車保険の対人保険には40%を請求でき、対人保険から100%の支給があっても、労災保険に20%の休業特別支給金を請求することができます。

(4)障害(補償)給付

1)障害(補償)年金・障害特別支給金・障害特別年金

業務災害または通勤災害による傷病が症状固定した後に、障害等級第1級~第7級までに該当する後遺障害を残したときに支給されます。

障害等級別障害(補償)年金・障害特別年金・障害特別支給金
障害等級 障害(補償)年金 ボーナス特別年金 障害特別支給金
1 給付基礎日額×313日分 算定基礎日額×313日分 342万円
2 277 277 320
3 245 245 300
4 213 213 264
5 184 184 225
6 156 156 192
7 131 131 159

(事故日の前1年間に支給されたボーナスの総額÷365日=算定基礎日額)
ボーナスの総額が、給付基礎日額×365日の20%を上回るときには、給付基礎年額の20%に相当する額が算定基礎年額となるのですが、150万円の限度額が設定されています。

2)障害(補償)一時金・障害特別一時金・障害特別支給金

業務災害または通勤災害による傷病が症状固定した後に、障害等級第8級~第14級までに該当する後遺障害を残したときに支給されます。

障害等級別障害(補償)一時金・障害特別支給金・障害特別一時金
障害等級 障害(補償)一時金 ボーナス特別支給金 障害特別一時金
8 給付基礎日額×503日分 算定基礎日額×503日分 65万円
9 391 391 50
10 302 302 39
11 223 223 29
12 156 156 20
13 101 101 14
14 56 56 8

(5)遺族(補償)給付

業務災害または通勤災害により死亡したとき
①遺族補償年金
②遺族(補償)一時金
ア:遺族(補償)年金を受け得る遺族がないとき、
給付基礎日額×1000日分
イ:遺族(補償)年金を受けている人が失権し、かつ、他に遺族年金を受け得る人がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額×1000日分に満たないとき、
(給付基礎日額×1000日分)-(すでに支給した遺族補償年金の合計額)

遺族補償年金・遺族特別年金・遺族特別支給金
遺族の数 遺族補償年金 遺族特別年金 遺族特別支給金
1 給付基礎日額×153日分 算定基礎日額×153日分 一律
300万円
2 201 201
3 223 223
4人以上 245 245

(6)葬祭料給付

業務災害または通勤災害により死亡した人の葬祭を行うとき
(31万5000円+給付基礎日額の30日分)
上記の額が給付基礎日額の60日分に満たないときは、給付基礎日額の60日分となります。