Q10 突然の解雇通告

A ほとんどの労働者は、賃金で生活をしており、労働者の生活手段を絶つには、それなりの理由が必要となるのは、言ってみれば、当然のことです。
解雇には、懲戒解雇、整理解雇、普通解雇の3つがあります。

懲戒解雇は、犯罪行為や重大な背任などの反社会的な行動を起こしたときに適用されます。

整理解雇は、
①解雇しなければ企業の存在が危うくなる状況が客観的に証明できて、
②解雇を回避するための最大限の努力がされていて、
③解雇される人を決める理由に合理性があり、
④当人と会社が、事前にしっかりと話し合いを行い、協議を尽くしていることが条件となります。
これを整理解雇の4要件といいます。

普通解雇は、労働契約法第16条で、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、その権利を濫用したものとして、無効とすると定められています。
つまり、誰が聞いても、仕方がないと判断できる理由がなければ解雇はできないのです。

会社から、解雇すると言われたときは、

①辞表を書くこと、退職の同意書等に署名捺印しないこと、

会社側は、辞めさせたい社員に対して、辞表の提出や退職の同意書等への署名捺印を求めます。
辞めることに納得していないのであれば、これらに応じてはなりません。
会社側から強く要求されるなどがあって、納得できないで辞表を書いた?
退職の同意書などに署名捺印した?
こんなときは、辞表または退職の同意書は本意で作成したものではなく、それらを撤回する旨を、内容証明郵便で会社に通知することになります。

②解雇の理由を確認すること、

合理的な理由のない解雇は認められず、無効となります。
このため、解雇の有効・無効を判断するには、解雇の理由を明らかにさせることが必要になります。
解雇理由を明らかにさせるため、会社に解雇の理由を記載した証明書の交付を求めます。
労働基準法22条では、社員の求めがあったとき、会社は、解雇理由を記載した証明書を交付しなければならない義務があると規定しています。

会社側が解雇理由を口頭で説明しているときでも、弁護士による交渉や、解雇を争う裁判手続が始まると、会社側が、解雇理由の後付を行う?
それまで説明していた解雇理由とは異なる主張をする? こんな騙し討ちが横行しているのです。
したがって、早い段階で、具体的な事実を含む解雇理由を明らかにさせることが重要となります。
重要な証拠となるので、必ず書面で回収しておきます。

③離職票を受け取った際に、注意すべきことは、

会社から離職票を受け取ったときには、離職理由欄を確認するのです。
解雇による退職であっても、あなたの判断によるもの、つまり、社員の自己都合による退職と記載されていることが多いのです。
解雇で退職したとき、失業給付は、離職票の提出と求職の申込みを行った日から7日間の待期期間後に支給されますが、自己都合による退職では、7日間の待期期間満了後、さらに、3カ月を経過しないと失業給付を受けることができません。

解雇に対する対処法

①就労意思を明らかにする

解雇に納得がいかない場合には、まず、会社に対して、解雇の撤回を求め、自分には会社で就労する意思があることを内容証明郵便で通知しましょう。

②証拠の収集、

解雇を撤回させるために会社と交渉していくには、早い段階から以下の証拠を確保しておくことが、非常に重要です。
就業規則、労働時間管理記録、業務記録、その他社内資料、上司との会話を録音したテープ、
会社から交付された雇用契約や就業規則などに関するものは、保管しておきます。
労働事件では、書面化された証拠が少なく、また、証拠や証人が会社に独占されていることが多いので立証に手間取ることが多いのです。
会社から交付された雇用契約や就業規則などに関する書面は、いずれも貴重な証拠となります。
また、解雇を巡る上司との会話を録音して記録しておくと、これも貴重な証拠となります。
録音することが困難なときでも、会社での出来事や、上司から言われたこと、されたことなどを詳細なメモや日記等のかたちで残しておくと、証拠として活用することができます。

労働基準法第20条第1項により、会社が労働者を解雇するときは、少なくとも30日前に解雇予告するか、予告を行わないときには、30日分以上の解雇予告手当を労働者に支払わなければなりません。